鬼のセンチネル

弓葉

文字の大きさ
18 / 57
政府公認のセンチネル

刹那の契約 壱

しおりを挟む
 初めて出会った時と同じくスーツを着た青年。宍色の髪が特徴的だ。能力を使う時の赤色の瞳が印象的だが、今は黒目。普通だ。

 藤は初対面ではないことを言わないでくれ、と願っていた。玖賀に知られたら面倒なことは百も承知だ。

「久しぶりだな、藤くん」

 その一言で、玖賀の殺気を感じる。藤は背後から重くのしかかる殺気に耐えていた。玖賀が小さく低い声で「誰だ」と聞いてくる。

「政府公認センチネルだって」

 青年の名前は知らない。一方的に玖賀には気を付けろ、と忠告されただけだ。前の陰陽師が逃げたとか、身体を重ねていくうちに五感が解放され手に負えなくなるとか。玖賀本人に直接聞かない限り事実とは言えない。

「政府公認か……」

 センチネルにも派閥がある。玖賀のように陰陽寮に属するセンチネルがいれば、正一のような野良センチネルもいる。政府公認はエリートコースのセンチネルだ。

 藤は後ろから強く抱き締められた。玖賀は宍髪の男を警戒している。

「俺様の名前は獅堂つばさだ」

 獅堂は玖賀に物怖じせずに、藤のところまで近づいてくる。コツコツ、と革靴を鳴らして優雅に藤の前に立った。

「鬼よ、藤くんを借りるぞ」

 獅堂は玖賀を見下す目線で藤の前に立つ。

「断る」

 玖賀は鋭く尖った歯を見せて威嚇した。

「任務なんだろ、玖賀。断ってどうする」

 藤は玖賀に離れるように言うが、未だに離れようとしない。

「土地センチネルは活動範囲に限界があるだろう。現に、雑魚のセンチネルを逃がしてるではないか。俺様は鬼の尻拭いに来たのだぞ」

 藤は獅堂の上から目線にハラハラした。玖賀は怒り狂うのではないのかと。

「少年を逃がしてしまったのは事実だ」

 玖賀の言葉を聞いて、藤はかわいそうに感じた。正一が去り際に藤の脳内へテレパシーを送った言葉を思い出す。

「正一くんは獅堂に会ったって言ってたよ。鬼と一緒にいる陰陽師を襲えって」

 藤は帯刀している軍刀に手をかけた。使ったことはないが、なにもしないよりかはマシだ。玖賀もそれを聞いて抱き付くのをやめて藤の前に立つ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

薔薇摘む人

Kokonuca.
BL
おじさんに引き取られた男の子のお話。全部で短編三部作になります

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...