20 / 57
政府公認のセンチネル
刹那の契約 参
しおりを挟む
獅堂と初めて会った時と同じく、ガタンゴトンと列車が動く音がした。
藤は目を開ける。獅堂は放心状態で前の座席に座っていた。列車の車窓は以前見たようなのどかな太陽とふるさとに似た野原はない。月あかりもない暗闇だ。
「おい、もう玖賀はいないぞ」
藤は強気に出る。玖賀がいるから悪いようにはされない。獅堂は目だけを動かし、藤を見たが放心状態だった。
「なぁ、玖賀に何をされたんだ」
藤は気になっていたことを聞いた。自信家に見える獅堂がどうしてここまで落ち込む理由がわからない。
「地獄を見た」
獅堂は頭を抱える。わなわなと手が震えていた。
「地獄……?」
藤は獅堂の手に触れる。その瞬間、一気に寂しい匂いがして胸が苦しくなった。獅堂はかつての玖賀のように、かなり不安定な状態だった。
「あれはセンチネルの敵だ」
手が触れたことで、藤から多少の癒やし効果を得たのか獅堂が話し始める。獅堂と手が触れているため、玖賀に怯えていることが直に脳内へ伝わってきた。
「敵ってどういう意味?」
玖賀は鬼だ。鬼のセンチネル。人のセンチネルとは違う能力を持っているかもしれない。藤は食い気味に聞いた。
「自分の嫌な部分を見た」
答えにならない返事がきた。獅堂はぐしゃぐしゃと宍色の髪をかきむしる。異様な気配に藤はゾクリ、とした。
「身体を覆い尽くすような邪心」
獅堂は言葉を紡ぐ。操り人形のような語り声。
「頭が割れそうなほど、激痛がして何かが突き出てきそうだった」
獅堂は藤の手を離し、自らの額を触る。何かを確認するかのように頭を撫で回したあと、藤につかみかかる。藤はビクリ、と大きく肩を震わせた。
「なあ、俺様に角は生えていないか?」
獅堂の目は泳ぎ、額から異常なほどの汗が垂れ落ちていた。列車は獅堂の心の不安定を表すように、甲高いブレーキ音を鳴らし始める。だが、列車は止まらない。嫌な音をかき鳴らしながら進んでいく。
藤は獅堂の顔を見た。列車の明かりは薄暗い。目だけでは判断できず、藤は獅堂の額に触れた。じわり、と獅堂の汗が手のひらにしみる。
「……なにもないよ」
藤は隊服の袖で獅堂の汗を拭った。
「そうか……」
獅堂は安心したように、フーッと深く息を吐く。
「隣に座ってもいいか? 心の中がかき乱されて上手くコントロールができない」
獅堂は藤が返事をする前に隣へ座ってきた。
「獅堂には陰陽師がいないのか?」
「必要ないと思っていた。俺様は最強だから」
車窓の景色が変わった。藤のふるさとに似た光景だ。クスノキの大木に、広がる田園地帯。藤は立ち上がり、車窓に乗り出した。提灯を片手に歩く人が見える。現実世界だ。
現実世界にある線路を列車は走っている。
「獅堂、ここは#_吾嬬_あづま__#村か?」
藤はなんのために列車に乗ったか思い出した。野良のセンチネルである、正一を追いかけてここまできた。
「ああ、そうだが。こんな風景でよくわかるな」
獅堂は驚いている。どうやら、獅堂には列車が走っている場所がわかるらしい。
藤の顔から血の気がひいた。
「僕の家族がいる村だ」
藤は目を開ける。獅堂は放心状態で前の座席に座っていた。列車の車窓は以前見たようなのどかな太陽とふるさとに似た野原はない。月あかりもない暗闇だ。
「おい、もう玖賀はいないぞ」
藤は強気に出る。玖賀がいるから悪いようにはされない。獅堂は目だけを動かし、藤を見たが放心状態だった。
「なぁ、玖賀に何をされたんだ」
藤は気になっていたことを聞いた。自信家に見える獅堂がどうしてここまで落ち込む理由がわからない。
「地獄を見た」
獅堂は頭を抱える。わなわなと手が震えていた。
「地獄……?」
藤は獅堂の手に触れる。その瞬間、一気に寂しい匂いがして胸が苦しくなった。獅堂はかつての玖賀のように、かなり不安定な状態だった。
「あれはセンチネルの敵だ」
手が触れたことで、藤から多少の癒やし効果を得たのか獅堂が話し始める。獅堂と手が触れているため、玖賀に怯えていることが直に脳内へ伝わってきた。
「敵ってどういう意味?」
玖賀は鬼だ。鬼のセンチネル。人のセンチネルとは違う能力を持っているかもしれない。藤は食い気味に聞いた。
「自分の嫌な部分を見た」
答えにならない返事がきた。獅堂はぐしゃぐしゃと宍色の髪をかきむしる。異様な気配に藤はゾクリ、とした。
「身体を覆い尽くすような邪心」
獅堂は言葉を紡ぐ。操り人形のような語り声。
「頭が割れそうなほど、激痛がして何かが突き出てきそうだった」
獅堂は藤の手を離し、自らの額を触る。何かを確認するかのように頭を撫で回したあと、藤につかみかかる。藤はビクリ、と大きく肩を震わせた。
「なあ、俺様に角は生えていないか?」
獅堂の目は泳ぎ、額から異常なほどの汗が垂れ落ちていた。列車は獅堂の心の不安定を表すように、甲高いブレーキ音を鳴らし始める。だが、列車は止まらない。嫌な音をかき鳴らしながら進んでいく。
藤は獅堂の顔を見た。列車の明かりは薄暗い。目だけでは判断できず、藤は獅堂の額に触れた。じわり、と獅堂の汗が手のひらにしみる。
「……なにもないよ」
藤は隊服の袖で獅堂の汗を拭った。
「そうか……」
獅堂は安心したように、フーッと深く息を吐く。
「隣に座ってもいいか? 心の中がかき乱されて上手くコントロールができない」
獅堂は藤が返事をする前に隣へ座ってきた。
「獅堂には陰陽師がいないのか?」
「必要ないと思っていた。俺様は最強だから」
車窓の景色が変わった。藤のふるさとに似た光景だ。クスノキの大木に、広がる田園地帯。藤は立ち上がり、車窓に乗り出した。提灯を片手に歩く人が見える。現実世界だ。
現実世界にある線路を列車は走っている。
「獅堂、ここは#_吾嬬_あづま__#村か?」
藤はなんのために列車に乗ったか思い出した。野良のセンチネルである、正一を追いかけてここまできた。
「ああ、そうだが。こんな風景でよくわかるな」
獅堂は驚いている。どうやら、獅堂には列車が走っている場所がわかるらしい。
藤の顔から血の気がひいた。
「僕の家族がいる村だ」
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
あなたの隣で初めての恋を知る
彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる