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第1章
15.エピローグを求めて
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ルルを宥め、一度3人に部屋の外へ出てもらってから着替える。その後、部屋から出て昨日の食堂まで案内してもらう。
勇馬の部屋は2階にあり、食堂は1階だった。
建物が大きく広いため、建物内を把握してない勇馬は案内がないと迷子になってしまう。
食堂に入ると、既にクレイオール一家は揃って席に着いていた。
挨拶を済ませて椅子に座ると、それを待っていたように次々と朝食が運ばれてくる。
「ユウマ様、昨日はゆっくり休めましたかな?」
「はい、お陰様で。いい部屋をご用意していただき、ありがとうございます」
「いえ、とんでもありません。ご満足いただけたようで良かったです。さ、それではいただきましょう」
キールは勇馬の答えに満足そうに頷き、食事を促した。
勇馬は手を合わせて小さな声で「いただきます」と言い、食事に手を伸ばした。
朝食は昨夜の食事に比べると、だいぶ質素に見える。内容は、パンとスープとサラダ、それとフルーツだ。
朝食を抜くこともある勇馬にはこれくらいでちょうどよかった。
「ユウマ様」
「はい」
パンを口に運ぶ手を止めて、キールへ目を向ける。
「この後、執務室にて昨夜の話の続きをと思うのですが、いかがでしょうか?」
「あ、はい、もちろん大丈夫です」
「ありがとうございます」
勇馬の返事に、キールが笑顔で頷いて礼を言う。
「いえ……『家伝』って、私も見せていただくことは出来ますか?」
実は、昨日の話を聞いてからというもの、どういった内容が書いてあるか勇馬はずっと気になっていた。そこに、もしかしたら元の世界に帰れるヒントがあるかもしれないと。
協力するかどうかを考えつつも、戻れる方法はしっかり探したかったのだ。
「ふむ。本来であれば、一族の者であっても資格のある者しか見ることは許されませんが……ユウマ様なら問題ないでしょう。後ほどご覧になってください」
「ありがとうございます」
キールが快く了承してくれたことに勇馬は安堵し、朝食を再開した。
朝食を食べ終えると、キールの執務室へと移動した。
部屋には、キール、フィーレ、ルティーナとヴァトラ、そして親衛隊のティステもいた。
「ユウマ様、今後は護衛を付けさせていただきたいと思います。ユウマ様が使徒様ということは、信頼の置けるここにいる者だけが知ることとなります。これは、よからぬ考えを持つ者を排除するためです。とはいえ使徒様の身に何かあってはならないので、ティステを隊長とし、5人で護衛に当たらせていただきます。よろしいでしょうか?」
対面に座ったキールが、ティステとヴァトラ以外が席についたのを確認して口を開く。
「はい、ありがとうございます」
侍女といいどう考えても過剰な人数なようにも思えるが、安心なのは間違いないので、キールの提案を受け入れることにした。
「よろしくお願いします、ティステさん」
勇馬はティステに向かって頭を下げた。
それに対してティステは片膝をつき、
「使徒様、私に敬称は不要ですし頭も下げる必要はありません。今後は使徒様の盾となってお守りし、敵を貫く剣となることを誓います」
と、恭しく頭を垂れた。
昨日はどこか警戒しているように見えたが、今日の彼女はキラキラと輝くような目で勇馬を見ていた。
「よ、よろしくお願いします。そんな気負わないでくださいね。それと……1つお願いしていいですか?」
勇馬は跪くティステの姿にたじろぎつつ、あるお願いをする。
「その……皆さん、様付けはやめてもらえないですかね。不相応といいますか、どうにもむず痒くて……。とりあえず使徒というのは置いといて、出来れば自然にして欲しいんですけど……」
身分は高いが年下であるフィーレやティステならまだしも、領主で年上であるキールにまで様付けされて敬語を使われるのは、勇馬にとって決して居心地がいいものではなかった。
だが、使徒というものは神の次に位置する者とされているため、キール達からすれば上位の存在であることは間違いないのだった。
だから勇馬としても気持ちはわからないでもないが、あまりにも畏まられても困ってしまう。
「使徒様であるユウマ様なら、むしろ相応といえるかとも思いますが……確かに領主である私が様付けをしてしまうと、ユウマ様の探りを入れてくるものがいるかもしれません」
キールは顎を擦りながら、勇馬の言葉に理解を示す。
「では、こうしましょう。ユウマ様は中央諸国から来られた大貴族の方で、クレイオール家とは古くからの友人であると」
昨晩、キール達が執務室で決めた肩書を勇馬に伝えた。
「今後、使徒様のことは『ユウマ殿』と呼ぶようにいたしましょう」
「ええ、それでお願いします」
キールの提案に、勇馬は頷いて安堵した。
あまり『使徒様、使徒様』と持ち上げられても、万が一何も力になれなかった時のことを考えると恐ろしくなってしまう。
そうならないためにも、神輿のように担がれるのは勘弁して欲しいという気持ちもあった。
「ユウマ殿、こちらがクレイオール家に代々伝わる『家伝』です」
キールが束になった書物を勇馬に手渡した。
皮紙に書かれた『家伝』は、数枚を束にして3冊に分けられていた。
その内の1冊を見てみるが、当然読むことができない。
言葉が不自由なく通じていたのでもしかしたらと思っていたが、どうやら言葉が通じるほうがおかしいようだ。
「よろしければ、私がお読みいたしましょうか?」
手に取った『家伝』を見て固まっている勇馬に、フィーレが助け舟を出してくれた。
勇馬は『家伝』をフィーレに手渡し、
「言葉は不思議と通じるみたいですけど、文字は読めないようで……。すみませんが、お願いします」
フィーレが笑顔で受け取り、『家伝』の内容を読み始めた。
その内容は、前日キールから聞いていたものを少し詳しくしたもので、話自体は一緒だった。
だが、最も気にしていたエピローグは、
「――と、このように使徒様のご活躍によって、戦に勝利したところで終わっていますね」
その内容は、勇馬の求めていたものではなかったのだった――。
勇馬の部屋は2階にあり、食堂は1階だった。
建物が大きく広いため、建物内を把握してない勇馬は案内がないと迷子になってしまう。
食堂に入ると、既にクレイオール一家は揃って席に着いていた。
挨拶を済ませて椅子に座ると、それを待っていたように次々と朝食が運ばれてくる。
「ユウマ様、昨日はゆっくり休めましたかな?」
「はい、お陰様で。いい部屋をご用意していただき、ありがとうございます」
「いえ、とんでもありません。ご満足いただけたようで良かったです。さ、それではいただきましょう」
キールは勇馬の答えに満足そうに頷き、食事を促した。
勇馬は手を合わせて小さな声で「いただきます」と言い、食事に手を伸ばした。
朝食は昨夜の食事に比べると、だいぶ質素に見える。内容は、パンとスープとサラダ、それとフルーツだ。
朝食を抜くこともある勇馬にはこれくらいでちょうどよかった。
「ユウマ様」
「はい」
パンを口に運ぶ手を止めて、キールへ目を向ける。
「この後、執務室にて昨夜の話の続きをと思うのですが、いかがでしょうか?」
「あ、はい、もちろん大丈夫です」
「ありがとうございます」
勇馬の返事に、キールが笑顔で頷いて礼を言う。
「いえ……『家伝』って、私も見せていただくことは出来ますか?」
実は、昨日の話を聞いてからというもの、どういった内容が書いてあるか勇馬はずっと気になっていた。そこに、もしかしたら元の世界に帰れるヒントがあるかもしれないと。
協力するかどうかを考えつつも、戻れる方法はしっかり探したかったのだ。
「ふむ。本来であれば、一族の者であっても資格のある者しか見ることは許されませんが……ユウマ様なら問題ないでしょう。後ほどご覧になってください」
「ありがとうございます」
キールが快く了承してくれたことに勇馬は安堵し、朝食を再開した。
朝食を食べ終えると、キールの執務室へと移動した。
部屋には、キール、フィーレ、ルティーナとヴァトラ、そして親衛隊のティステもいた。
「ユウマ様、今後は護衛を付けさせていただきたいと思います。ユウマ様が使徒様ということは、信頼の置けるここにいる者だけが知ることとなります。これは、よからぬ考えを持つ者を排除するためです。とはいえ使徒様の身に何かあってはならないので、ティステを隊長とし、5人で護衛に当たらせていただきます。よろしいでしょうか?」
対面に座ったキールが、ティステとヴァトラ以外が席についたのを確認して口を開く。
「はい、ありがとうございます」
侍女といいどう考えても過剰な人数なようにも思えるが、安心なのは間違いないので、キールの提案を受け入れることにした。
「よろしくお願いします、ティステさん」
勇馬はティステに向かって頭を下げた。
それに対してティステは片膝をつき、
「使徒様、私に敬称は不要ですし頭も下げる必要はありません。今後は使徒様の盾となってお守りし、敵を貫く剣となることを誓います」
と、恭しく頭を垂れた。
昨日はどこか警戒しているように見えたが、今日の彼女はキラキラと輝くような目で勇馬を見ていた。
「よ、よろしくお願いします。そんな気負わないでくださいね。それと……1つお願いしていいですか?」
勇馬は跪くティステの姿にたじろぎつつ、あるお願いをする。
「その……皆さん、様付けはやめてもらえないですかね。不相応といいますか、どうにもむず痒くて……。とりあえず使徒というのは置いといて、出来れば自然にして欲しいんですけど……」
身分は高いが年下であるフィーレやティステならまだしも、領主で年上であるキールにまで様付けされて敬語を使われるのは、勇馬にとって決して居心地がいいものではなかった。
だが、使徒というものは神の次に位置する者とされているため、キール達からすれば上位の存在であることは間違いないのだった。
だから勇馬としても気持ちはわからないでもないが、あまりにも畏まられても困ってしまう。
「使徒様であるユウマ様なら、むしろ相応といえるかとも思いますが……確かに領主である私が様付けをしてしまうと、ユウマ様の探りを入れてくるものがいるかもしれません」
キールは顎を擦りながら、勇馬の言葉に理解を示す。
「では、こうしましょう。ユウマ様は中央諸国から来られた大貴族の方で、クレイオール家とは古くからの友人であると」
昨晩、キール達が執務室で決めた肩書を勇馬に伝えた。
「今後、使徒様のことは『ユウマ殿』と呼ぶようにいたしましょう」
「ええ、それでお願いします」
キールの提案に、勇馬は頷いて安堵した。
あまり『使徒様、使徒様』と持ち上げられても、万が一何も力になれなかった時のことを考えると恐ろしくなってしまう。
そうならないためにも、神輿のように担がれるのは勘弁して欲しいという気持ちもあった。
「ユウマ殿、こちらがクレイオール家に代々伝わる『家伝』です」
キールが束になった書物を勇馬に手渡した。
皮紙に書かれた『家伝』は、数枚を束にして3冊に分けられていた。
その内の1冊を見てみるが、当然読むことができない。
言葉が不自由なく通じていたのでもしかしたらと思っていたが、どうやら言葉が通じるほうがおかしいようだ。
「よろしければ、私がお読みいたしましょうか?」
手に取った『家伝』を見て固まっている勇馬に、フィーレが助け舟を出してくれた。
勇馬は『家伝』をフィーレに手渡し、
「言葉は不思議と通じるみたいですけど、文字は読めないようで……。すみませんが、お願いします」
フィーレが笑顔で受け取り、『家伝』の内容を読み始めた。
その内容は、前日キールから聞いていたものを少し詳しくしたもので、話自体は一緒だった。
だが、最も気にしていたエピローグは、
「――と、このように使徒様のご活躍によって、戦に勝利したところで終わっていますね」
その内容は、勇馬の求めていたものではなかったのだった――。
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