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セオドアの言葉に、是とも非とも言えず横目でジェームスを睨みながら少し引き攣った顔をしてヴァイオレットは笑みを浮かべた。

「セオドア兄様、あの、ね。私、ね・・」

生徒会はーーとヴァイオレットが話そうとした時、どこからか大きな声がした。



「私を誰だと思っている!!平民風情が。その無礼を今すぐ詫びろ!」

男にしては少し高めの傲慢そうなその声は、テーブルから比較的近い軽食売り場辺りから発せられているようだった。売り場のテント前には人だかりが輪を作っているのが見える。余りの大声に、思わずテーブルに座っていたアリシアたちも振り向いた。

「・・も、申し訳ありません、・・相様のご子息とはつゆ知らずっ。無礼な口を聞きまして・・お、お許しください・・」

女性が泣きそうな声で謝っているのが聞こえた。

「そんな簡単な詫びでは気持ちが伝わらんな。誠意というものの示し方がなっていないではないか。」

高い声に混じり、低く野卑な声がする。どうやら男が2人で1人の女性を取り囲んでいるらしい。最悪だ。
周囲の人だかりはどうなってしまうのかと固唾を飲んで見守っている。

ガタンとセオドアが席を立ち、次いでジェームスがテント前へと走った。ヴァイオレットとアリシアも慌てて後に続く。

人だかりを掻き分けてテント前に出ると、そこにいたのは、何とボールとゴッグ。

2人して腕組みをして怯える若い女性を上から威圧的に見下ろしている。

「ど・・どうしたら、誠意をお示しすることができますでしょうか・・」

女性が涙を流しながら謝っているにも関わらず、ボールは右の足を女性の目の前に出し、嘲るように言った。

「そうだな・・ならば忠誠と誠意の証に私の靴に這いつくばってキスをしろ。」
「ハハハ、そうだな。それが一番わかりやすい。」

最低!!あの女の人も絶対に悪いことなんてしてない。助けたい。

女性がヨロヨロとボールの足の前に膝まづこうとした時、セオドアが女性を守るようにボールの前に立った。

「か弱き女性に対し、公衆の面前で男が2人掛りで何をしている。一体どんな理由があってこんなことをしているのか説明して貰おうか。」

セオドアは、先程までの穏やかで優しい態度とは打って変わった迫力のある鋭い目つきと声色でボールとゴッグに迫った。
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