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第一章
胡蝶の見る夢 七
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朔也が倒れた。
晴天の霹靂のような知らせを受けて、陽向は取るものも取りあえず、午後の便で羽田から神戸空港まで飛んだ。先端医療産業特区に認定されているポートアイランドにある中央市民病院には、空港からのAGT路線が直結している。
他の医療施設も併設されており、ともすれば間違えそうになる病院のエントランスを入り、待合中央の受付ブースに尋ね、教えられた病室までカード認証を用いたエレベーターで上がった。
「ああ、久藤博士の奥さんですか! 駆け付けてくださって、ありがとうございました。大変だったんですよ……」
朔也に付き添ってくれていた若手の研究員は、陽向を見て心底ほっとしたという顔になった。
「彼は仕事中に急に具合が悪くなったと電話でお聞きしましたけれど、一体どうして、こんなことに……」
ここに来るまでの間、悶々と考えているうちに、もしかして自分と同じように寝食を忘れて仕事に打ち込んだあまりの体調不良かと思いかけていたのだが、意識のないままベッドに横たわって点滴を受けている朔也の姿を一目見て、直感的に違うと悟った。
最後に会った時より彼は更に痩せ細っていた。久しぶりに見るから余計にそう思うのかもしれないが、病的と言っても過言ではない。どうして、こんなになる前に誰も気が付かなかったのか。
「確かに、最近痩せましたね、大丈夫ですかと、研究室の皆も聞いたり心配したりしていましたが、最近受けた健康診断でも異常はなかったって、博士は笑ってらしたから――」
最近って、いつのことなのだろう。一緒に暮らしていない陽向には、それすらも分からなかった。
陽向が到着したという知らせを看護師が伝えたのだろう、程なくして、主治医から話があると呼び出された。
「背部痛の症状と血液検査の結果から、胆石による急性膵炎の疑いが濃厚かと思われたのですが、エコーで膵臓に気になる影が見つかりましてね。……点滴を受けて痛みは治まっているようですので、明日以降、CTを含めた精密検査をする必要があります」
「あの……それは悪いものがあるかもしれないということですか……?」
からからになった喉から振り絞るようにして陽向が尋ねると、中年の医師は困ったように笑った。
「影と言っても色々あるんですよ。多くは単なる嚢胞だったり炎症性の影であったりします。腫瘍であっても、良性のものだって勿論ある。ご主人の年齢は――ああ、31歳ですか、お若いですね……ご家族で癌を患った方があるという話を聞かれたことはありますか?」
「いいえ……私には分かりません……」
朔也の肉親のことは、そう言えば、陽向はほとんど聞かされていなかった。長い間たった一人で生きてきた、家族との縁の薄い人だったのだ。
(家族がバラバラになってひとりになった時、僕は気づいたんだ。本当に大切なものは、増えるんじゃなくて、減っていくものなんだって……)
朔也からのプロポーズを受けた時、その口から語られた話が頭の中に鮮明によみがえった。
(このままずっと僕は一人でいるものだとばかり思っていた。それが、これから陽向と家族になって、大切なものができる。大切なものがまた増えていく……心持が変わるだけで、人はこんなにも幸せになれるんだって、初めて分かった)
主治医の説明を聞いた後は、病室に戻り、朔也が目覚めるまでずっと傍についていた。
(ごめんなさい、朔也さん……ずっと孤独に生きてきたあなたをまた一人にさせてしまった。私、すごく酷いことをしていたんだ)
そんなことをぼんやりと考えていると、朔也はふいに目を覚ました。重たげな瞼を震わせながら持ち上げ、薬の影響か、ぼんやりと定まらない視線を陽向に向けて、にっこりと笑った。
「……これは夢なのかな」
陽向の胸は、たちまち彼に対する愛しさでいっぱいになった。
「夢じゃない、朔也さん、私はここにいるわ……あなたのもとに帰ってきたのよ」
朔也は少しの間黙り込んだ。徐々に現実に戻ってきたのだろう、自分がいる病室の様子を確かめた後、陽向に向かって控えめに問いかけた。
「仕事の方は、大丈夫なのかい?」
「そんなこと――」
陽向は朔也の痩せた手を握りしめ、頭を左右に振った。
「馬鹿なことを言わないで、私にとって、あなた以上に大切なものなどないのよ。……仕事のことなら、しばらく離れても大丈夫だから、心配しないで」
あんなことのあった後では、どのみち今までと同じ顔をして職場に戻る気持ちにもなれはしない。
朔也の傍にいようと陽向は決意した。少なくとも検査の結果が分かり、必要な治療を受けて、彼が元通り回復するまで、これ以上寂しく心細い思いなどさせたくなかった。しかし――
「……残念ですが――久藤さんの膵臓の影は、悪性の腫瘍によるものだと判明しました」
その三日後、様々な検査の結果を踏まえて、夫婦一緒に臨んだ主治医から告知の席で聞いた話を、陽向は後になっても細かく思い出すことができない。
膵臓がん。ステージ4。腹膜、肝臓、遠隔転移も見られ、手術不能。
医師から告げられた無情な事実の半分も、陽向の頭に入ってこなかった。一体、この人は何を言っているのだろう。余命半年? まさか、そんなこと信じられない。
頭の中が真っ白になってしまった陽向よりも、当人である朔也の方がむしろ冷静に見えた。医師から今後の治療方針を聞いた上で、抗がん剤治療を始める前に身辺の整理をしたいという希望を申し出、一時退院することになったのだ。
「……大丈夫かい、陽向?」
久しぶりに戻ったマンションの部屋で、一息ついたものの、現実をまだ受け止めきれずに放心している陽向に、朔也が声をかけた。
「ああ、朔也さん、ごめんなさい……先生に聞いた話、私、ちゃんと理解できていなくて……ええっと、ともかく再来週にまた入院して、抗がん剤治療を始めたらいいのね……?」
何か言いたげな朔也の瞳を直視できなくて、お茶を入れてくると、陽向はすぐにキッチンに向かおうとした。その手を、とっさに朔也が掴んだ。
「陽向」
身を固くする陽向をリビングのソファに座らせ、その隣に腰を下ろしたうえで、朔也は口を開いた。
「僕は膵臓がんなんだよ。それもステージ4……ステージ5がないことは知っているね? 転移があって、手術できないから、抗がん剤を試してみることになったけれど、それもどのくらい有効なのか分からない」
陽向はうつむいたまま、そんな話は聞きたくないというかの如く、頭を激しく振った。朔也はまだ31歳だ。余命半年なんて、どうして信じられるだろう。
「……僕だって……僕の方がむしろ信じられないよ、いや――」
これまで普段通りに振舞っていた朔也の声が、微かに低くなった。
「病院に搬送された時から、ひょっとしたらという嫌な予感はしていたんだ。本当に最悪の結果になってしまった今、自暴自棄になって取り乱すのが普通かもしれないけれど……僕には、その前に、僕が中心となって進めていたプロジェクトのこと、温めていた計画、そして何より君のこと――考えなければならないことが山ほどある」
とても自分の身に訪れた不運を語っているとは思えぬほどに冷静に、淡々とした口調で言って、朔也は衝撃から立ち直れない陽向の震える手をぎゅっと握りしめた。
「そして、この体が動くうちに、僕がいなくなっても皆が困らないよう、できるだけの準備をしなければならない」
朔也はふいに口をつぐんだ。どんなに落ち着いて見えても、恐ろしくないはずがないのだ。奥底から込み上げてくる恐怖や絶望と必死に戦っているかのような表情を見て、陽向は彼の体に思わず抱き着いた。
朔也の手が上がり、陽向の頭を優しく撫でてくれている。これでは、どちらが慰められているのか分からない。
「私……あなたのためにできることなら何でもする……」
朔也が胸の奥から深い息を吐きだした。
「陽向、治療は長びくかも知れないし、介護者の負担になるものかもしれない……僕のために、大切な研究を途中で投げ出すことないんだよ」
ためらいがちにかけられた言葉に、思わず、涙ぐみそうになる。陽向は毅然と頭を起こした。
「いいえ、私はもう東京には行かない。あなたの傍にいるって、決めたの」
そう答えると、朔也はこれまで見たことにないような幸福そうな顔で、ふわりと微笑んでくれた。
晴天の霹靂のような知らせを受けて、陽向は取るものも取りあえず、午後の便で羽田から神戸空港まで飛んだ。先端医療産業特区に認定されているポートアイランドにある中央市民病院には、空港からのAGT路線が直結している。
他の医療施設も併設されており、ともすれば間違えそうになる病院のエントランスを入り、待合中央の受付ブースに尋ね、教えられた病室までカード認証を用いたエレベーターで上がった。
「ああ、久藤博士の奥さんですか! 駆け付けてくださって、ありがとうございました。大変だったんですよ……」
朔也に付き添ってくれていた若手の研究員は、陽向を見て心底ほっとしたという顔になった。
「彼は仕事中に急に具合が悪くなったと電話でお聞きしましたけれど、一体どうして、こんなことに……」
ここに来るまでの間、悶々と考えているうちに、もしかして自分と同じように寝食を忘れて仕事に打ち込んだあまりの体調不良かと思いかけていたのだが、意識のないままベッドに横たわって点滴を受けている朔也の姿を一目見て、直感的に違うと悟った。
最後に会った時より彼は更に痩せ細っていた。久しぶりに見るから余計にそう思うのかもしれないが、病的と言っても過言ではない。どうして、こんなになる前に誰も気が付かなかったのか。
「確かに、最近痩せましたね、大丈夫ですかと、研究室の皆も聞いたり心配したりしていましたが、最近受けた健康診断でも異常はなかったって、博士は笑ってらしたから――」
最近って、いつのことなのだろう。一緒に暮らしていない陽向には、それすらも分からなかった。
陽向が到着したという知らせを看護師が伝えたのだろう、程なくして、主治医から話があると呼び出された。
「背部痛の症状と血液検査の結果から、胆石による急性膵炎の疑いが濃厚かと思われたのですが、エコーで膵臓に気になる影が見つかりましてね。……点滴を受けて痛みは治まっているようですので、明日以降、CTを含めた精密検査をする必要があります」
「あの……それは悪いものがあるかもしれないということですか……?」
からからになった喉から振り絞るようにして陽向が尋ねると、中年の医師は困ったように笑った。
「影と言っても色々あるんですよ。多くは単なる嚢胞だったり炎症性の影であったりします。腫瘍であっても、良性のものだって勿論ある。ご主人の年齢は――ああ、31歳ですか、お若いですね……ご家族で癌を患った方があるという話を聞かれたことはありますか?」
「いいえ……私には分かりません……」
朔也の肉親のことは、そう言えば、陽向はほとんど聞かされていなかった。長い間たった一人で生きてきた、家族との縁の薄い人だったのだ。
(家族がバラバラになってひとりになった時、僕は気づいたんだ。本当に大切なものは、増えるんじゃなくて、減っていくものなんだって……)
朔也からのプロポーズを受けた時、その口から語られた話が頭の中に鮮明によみがえった。
(このままずっと僕は一人でいるものだとばかり思っていた。それが、これから陽向と家族になって、大切なものができる。大切なものがまた増えていく……心持が変わるだけで、人はこんなにも幸せになれるんだって、初めて分かった)
主治医の説明を聞いた後は、病室に戻り、朔也が目覚めるまでずっと傍についていた。
(ごめんなさい、朔也さん……ずっと孤独に生きてきたあなたをまた一人にさせてしまった。私、すごく酷いことをしていたんだ)
そんなことをぼんやりと考えていると、朔也はふいに目を覚ました。重たげな瞼を震わせながら持ち上げ、薬の影響か、ぼんやりと定まらない視線を陽向に向けて、にっこりと笑った。
「……これは夢なのかな」
陽向の胸は、たちまち彼に対する愛しさでいっぱいになった。
「夢じゃない、朔也さん、私はここにいるわ……あなたのもとに帰ってきたのよ」
朔也は少しの間黙り込んだ。徐々に現実に戻ってきたのだろう、自分がいる病室の様子を確かめた後、陽向に向かって控えめに問いかけた。
「仕事の方は、大丈夫なのかい?」
「そんなこと――」
陽向は朔也の痩せた手を握りしめ、頭を左右に振った。
「馬鹿なことを言わないで、私にとって、あなた以上に大切なものなどないのよ。……仕事のことなら、しばらく離れても大丈夫だから、心配しないで」
あんなことのあった後では、どのみち今までと同じ顔をして職場に戻る気持ちにもなれはしない。
朔也の傍にいようと陽向は決意した。少なくとも検査の結果が分かり、必要な治療を受けて、彼が元通り回復するまで、これ以上寂しく心細い思いなどさせたくなかった。しかし――
「……残念ですが――久藤さんの膵臓の影は、悪性の腫瘍によるものだと判明しました」
その三日後、様々な検査の結果を踏まえて、夫婦一緒に臨んだ主治医から告知の席で聞いた話を、陽向は後になっても細かく思い出すことができない。
膵臓がん。ステージ4。腹膜、肝臓、遠隔転移も見られ、手術不能。
医師から告げられた無情な事実の半分も、陽向の頭に入ってこなかった。一体、この人は何を言っているのだろう。余命半年? まさか、そんなこと信じられない。
頭の中が真っ白になってしまった陽向よりも、当人である朔也の方がむしろ冷静に見えた。医師から今後の治療方針を聞いた上で、抗がん剤治療を始める前に身辺の整理をしたいという希望を申し出、一時退院することになったのだ。
「……大丈夫かい、陽向?」
久しぶりに戻ったマンションの部屋で、一息ついたものの、現実をまだ受け止めきれずに放心している陽向に、朔也が声をかけた。
「ああ、朔也さん、ごめんなさい……先生に聞いた話、私、ちゃんと理解できていなくて……ええっと、ともかく再来週にまた入院して、抗がん剤治療を始めたらいいのね……?」
何か言いたげな朔也の瞳を直視できなくて、お茶を入れてくると、陽向はすぐにキッチンに向かおうとした。その手を、とっさに朔也が掴んだ。
「陽向」
身を固くする陽向をリビングのソファに座らせ、その隣に腰を下ろしたうえで、朔也は口を開いた。
「僕は膵臓がんなんだよ。それもステージ4……ステージ5がないことは知っているね? 転移があって、手術できないから、抗がん剤を試してみることになったけれど、それもどのくらい有効なのか分からない」
陽向はうつむいたまま、そんな話は聞きたくないというかの如く、頭を激しく振った。朔也はまだ31歳だ。余命半年なんて、どうして信じられるだろう。
「……僕だって……僕の方がむしろ信じられないよ、いや――」
これまで普段通りに振舞っていた朔也の声が、微かに低くなった。
「病院に搬送された時から、ひょっとしたらという嫌な予感はしていたんだ。本当に最悪の結果になってしまった今、自暴自棄になって取り乱すのが普通かもしれないけれど……僕には、その前に、僕が中心となって進めていたプロジェクトのこと、温めていた計画、そして何より君のこと――考えなければならないことが山ほどある」
とても自分の身に訪れた不運を語っているとは思えぬほどに冷静に、淡々とした口調で言って、朔也は衝撃から立ち直れない陽向の震える手をぎゅっと握りしめた。
「そして、この体が動くうちに、僕がいなくなっても皆が困らないよう、できるだけの準備をしなければならない」
朔也はふいに口をつぐんだ。どんなに落ち着いて見えても、恐ろしくないはずがないのだ。奥底から込み上げてくる恐怖や絶望と必死に戦っているかのような表情を見て、陽向は彼の体に思わず抱き着いた。
朔也の手が上がり、陽向の頭を優しく撫でてくれている。これでは、どちらが慰められているのか分からない。
「私……あなたのためにできることなら何でもする……」
朔也が胸の奥から深い息を吐きだした。
「陽向、治療は長びくかも知れないし、介護者の負担になるものかもしれない……僕のために、大切な研究を途中で投げ出すことないんだよ」
ためらいがちにかけられた言葉に、思わず、涙ぐみそうになる。陽向は毅然と頭を起こした。
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