晴れ何処

響希

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青空の場所

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ホテルに着いて受付の人に予約を確認する。
「めんどくさい暇ー!」と君がうるさいのでロビーの椅子でスマホゲームをしているように言った。
受付を終えて君の元へ行くと「遅い!」と言われて苛立ったから軽く腕をつねった。
「痛い!」と騒ぐ君を無視してエレベーターに乗った。
開ボタンを押して君を待ってあげた。
結構待たされたけどまぁ腕をつねったから無効にしてあげようと思った。



部屋に着くと一目散にベッドに寝っ転がるから私はソファで備え付けのTVを付けた。
対して面白いものもやっていないから適当なバラエティ番組を付けておいた。
君が「ベッド気持ちー!!」と言うから私もベッドへダイビングした。
「たのしー!」と笑う君の隣で私も笑った。
バラエティ番組の音なんて聞こえないぐらいの声で笑った。
君がお風呂に入ってくると言ったので私はスマホを見て待った。
着信履歴は無かった。



私もお風呂に入って今日の疲れを落とした。
雨でびしょびしょの髪の毛を綺麗に洗った。
部屋に戻ると君が寝ていたので隣で横になった。
アラームをかけて絶対に君よりも先に起きようと思った。



夢を見た。
親が、家族が、友達が私を探している夢。
私を一生懸命に探しているのをガラス越しに私が見ているような感覚だった。
声が出なくて体は動かなかった。




肩を叩かれて目が覚めた。
でも体は浮いているようでここにいないような感じがした。
「大丈夫?水飲む?」
そう言われてようやく我に返ると寝汗で服は濡れていて肩で息をしていた。
頷くと君は「すぐ戻る」とだけ言って水道へ走った。
時計は3時を回っていてこの後はもう寝つけなさそうだ。
着信履歴はもちろん無くて私を探しているなんて夢に過ぎないんだなという思考が頭を支配した。
君が「水だー!!」と叫ぶからお礼と深夜だから静かにしようと軽く注意した。
水を飲みながらふと考え事をしていたら2人だけの静かな時間がゆっくりと流れた。
「大人になりたくないなぁ」そう呟くと「私も。」と君ははにかんだ。
大人になったら今よりもずっと我慢することが増えるんだろうなと考えた。
「でも大人と子供の境目ってどこ?」と突然ベッドから跳ね起きた君が考え始めた。
成人からだろう。と思ったけどそんな考えは「子供に戻りたいって思ったら大人かな!」と言う君に遮られた。
「大人になりたくない私達はまだ子供だねっ!」と下手なウィンクをしてくる君を横目に私はベッドへ倒れ込んだ。
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