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聞けない事
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ビールのCMと並行して依頼のあったアイスのCMはスポンサー側はひろこでお願いはするのだが、ちょっとしたハードルがあった。
商品リニューアルも兼ねて安藤さんも新しいスタートが切れる何かがありますか?と代理店から言われた。
「新しいスタート?難しいね」
「たとえば映画主演デビューとか、歌手デビューとか。あと、新しくゴールデンで番組持つとか」
全くもってなかった。
そもそも演技なんてした事もなく、本人もそこまで乗り気ではなかったからだ。
歌手デビューもだ。多分春くんがいる手前、同じフィールドは嫌がるのは目にみえていた。
でもここは引き下がれなかった。
ビールもアイスもがっつりひろこで抑えておきたかった。
「お仕事は受けたいんです。受けたいんですけど、映画主演とか歌手デビューはちょっと今は・・」
代理店は難しそうな表情をしていたけど、あくまでスポンサー側はひろこ推しなのは間違いなかった。
ひとまず仕事は何があるのか分からない。
来春からのCMなので年末まで仕事の状況を見させてほしい。でもCMは絶対受けたいですと返事をした。
新しい何かきっかけになる仕事。
売れない時は売れない時で細々とオーディションを受け、売れたら売れたでギャラはでかいがまた立ちはだかる難題。
でもここまで来れたのはひろこの努力の結果である訳で俺は毎日仕事の事ばかり考えていた。
『遊井さん、お久しぶりです。江田です』
ワンナイ時代のディレクター江田さんから数年ぶりに連絡があった。
「江田さん!お久しぶりです!」
ガリガリに痩せたマッチ棒のような見た目頼りなさそうな男だったけど、仕事はよくできた優秀な人だった。
『大晦日の、紅白の後にやってるカウントダウン歌番組。僕がやるんですけど安藤ひろこちゃん、司会できますか?うちの男性局アナと考えてるんですけど。』
「ええー!いいんですか?あれ?江田さん今プロデューサー?」
『そうなんですよ。僕、ワンナイの頃からひろこちゃんのファンなんで。いつか番組できたらキャスティングしたかったんですよ』
ここにもひろこのファンがいた、と思った。
ただ、音楽番組司会は大阪で慣れてはいるが、SOULももちろん出演する訳でそれが気がかりだった。
ひろこが出るというかどうか、だった。
「大晦日の、紅白の後にやってるカウントダウン番組分かるだろ?音楽生番組で紅白終わった連中がゾロゾロ出演するんだけど、ひろこに司会の依頼きたぞ」
ひろこに話すと一瞬顔が強張ったような表情をしたけど、すぐ冷静になり黙って話を聞いていた。
「ワンナイやってた時の秀光さんの右腕のディレクターで江田さんって覚えてるか?今昇格してプロデューサーになったって。」
「江田さん?あ、覚えてる。枝のように痩せてる人だよね。」
「そうそう。枝のように痩せてる江田さん」
「なんで私なの?」
「ワンナイ時代から、ひろこのファンらしいぞ」
「私、江田さんとよく話してたよ。衣装行く時に連れてってくれたり。3回くらいお菓子の交換した事あるし。」
なるほど。
当時は知らなかったが、2人で仲良くコミュニケーションをとっていて江田さんもひろこが忘れられなかったんだな、と思った。
「アーティスト、たくさん来るけど」
俺はひろこの顔を見れなかった。どんな顔で返事をするのか見るのが怖かったのかもしれない。怖いというより、かわいそうになるような顔を見たくなかった。
「やるよ。私、やるよ。」
はっとしてひろこを見るとひろこは俺の目を見ないでいた。髪の毛が邪魔して見えないが涙目にでもなっているのだろうか。
全く分からなかった。
ただ、やると言った声は張っていた。
気丈に振る舞っている。それがやけに痛々しく思えてしょうがなかった。
春くんと別れたのか?
聞いたら聞いたでいいと思う。
でも俺はどうしても聞けなかった。
『別れた』ってひろこが言ったらもう本当に終わりなんだと認めさせるようでどうしても聞けなかった。
「ひろこの部屋。今日のお客様は唯さんでーす」
小柄な体に長い髪はおさげにしてロングスカート。見た目はチョロチョロしていて可愛らしい。
人気女性シンガーの唯がゲストだった。
「唯は、かなりヤバいっすよ」
SOULとも交流があるらしく、秋元さんが以前に言っていたのを覚えていたが相当ぶっとんだ女だった。
「ひろこ!イェーイ!」
初っ端からハイテンション。
ひろこはドン引きするかと思いきや、心待ちにしていた唯のゲストに喜んではいたがもうスタジオは騒然だった。
「セックスしてる?してるでしょ?しまくってるよね?エロいもん」
「避妊してませんって顔してるよね?」
「顔面には絶対出させないでしょ?」
下ネタのオンパレードに笑う者とドン引きする者でスタジオは変な笑いを誘った。
「やっぱり。唯さん、いいですね。」
隣で白部くんは腕組みをして笑っていた。
「白部くん、大丈夫これ?」
「これでいいんですよ。まじうけるー腹いてー」
白部くんはまたご満悦だったのでよしとしたが、相当カットするのではないかという会話だった。
後半は2人でシャンパンを飲みながら唯が卓球部出身という事で卓球大会になった。
ラリーをしながら視聴者のおハガキ質問回答のハズが酒が回って個人の質問になってしまった。
「ひろこ、やりまくってんのかよ!」
「最近はやってませんっ!」
「ひろこのマネージャーチンピラにしかみえねーよ!」
「チンピラです!」
きっと俺の画像も使われるだろう予感する会話に俺も恥ずかしくなる。
「うちのメンバーがひろこでオナニーしてるってよ!」
「お好きにどうぞ!」
大笑いの中2人はかなり酔っ払ってもうヘロヘロになって笑いあっていた。
「支倉と春どっちが好きなんだよ!」
「春です!」
すると笑いでなくおーっと言った歓声が沸いた。
春くんが、まだ好きなんだ。
好き、だよな。
「白部くん、これ編集、」
俺は気になって白部くんを見た。
「遊井さん、ピー音でうまくやりますから。」
「・・・」
商品リニューアルも兼ねて安藤さんも新しいスタートが切れる何かがありますか?と代理店から言われた。
「新しいスタート?難しいね」
「たとえば映画主演デビューとか、歌手デビューとか。あと、新しくゴールデンで番組持つとか」
全くもってなかった。
そもそも演技なんてした事もなく、本人もそこまで乗り気ではなかったからだ。
歌手デビューもだ。多分春くんがいる手前、同じフィールドは嫌がるのは目にみえていた。
でもここは引き下がれなかった。
ビールもアイスもがっつりひろこで抑えておきたかった。
「お仕事は受けたいんです。受けたいんですけど、映画主演とか歌手デビューはちょっと今は・・」
代理店は難しそうな表情をしていたけど、あくまでスポンサー側はひろこ推しなのは間違いなかった。
ひとまず仕事は何があるのか分からない。
来春からのCMなので年末まで仕事の状況を見させてほしい。でもCMは絶対受けたいですと返事をした。
新しい何かきっかけになる仕事。
売れない時は売れない時で細々とオーディションを受け、売れたら売れたでギャラはでかいがまた立ちはだかる難題。
でもここまで来れたのはひろこの努力の結果である訳で俺は毎日仕事の事ばかり考えていた。
『遊井さん、お久しぶりです。江田です』
ワンナイ時代のディレクター江田さんから数年ぶりに連絡があった。
「江田さん!お久しぶりです!」
ガリガリに痩せたマッチ棒のような見た目頼りなさそうな男だったけど、仕事はよくできた優秀な人だった。
『大晦日の、紅白の後にやってるカウントダウン歌番組。僕がやるんですけど安藤ひろこちゃん、司会できますか?うちの男性局アナと考えてるんですけど。』
「ええー!いいんですか?あれ?江田さん今プロデューサー?」
『そうなんですよ。僕、ワンナイの頃からひろこちゃんのファンなんで。いつか番組できたらキャスティングしたかったんですよ』
ここにもひろこのファンがいた、と思った。
ただ、音楽番組司会は大阪で慣れてはいるが、SOULももちろん出演する訳でそれが気がかりだった。
ひろこが出るというかどうか、だった。
「大晦日の、紅白の後にやってるカウントダウン番組分かるだろ?音楽生番組で紅白終わった連中がゾロゾロ出演するんだけど、ひろこに司会の依頼きたぞ」
ひろこに話すと一瞬顔が強張ったような表情をしたけど、すぐ冷静になり黙って話を聞いていた。
「ワンナイやってた時の秀光さんの右腕のディレクターで江田さんって覚えてるか?今昇格してプロデューサーになったって。」
「江田さん?あ、覚えてる。枝のように痩せてる人だよね。」
「そうそう。枝のように痩せてる江田さん」
「なんで私なの?」
「ワンナイ時代から、ひろこのファンらしいぞ」
「私、江田さんとよく話してたよ。衣装行く時に連れてってくれたり。3回くらいお菓子の交換した事あるし。」
なるほど。
当時は知らなかったが、2人で仲良くコミュニケーションをとっていて江田さんもひろこが忘れられなかったんだな、と思った。
「アーティスト、たくさん来るけど」
俺はひろこの顔を見れなかった。どんな顔で返事をするのか見るのが怖かったのかもしれない。怖いというより、かわいそうになるような顔を見たくなかった。
「やるよ。私、やるよ。」
はっとしてひろこを見るとひろこは俺の目を見ないでいた。髪の毛が邪魔して見えないが涙目にでもなっているのだろうか。
全く分からなかった。
ただ、やると言った声は張っていた。
気丈に振る舞っている。それがやけに痛々しく思えてしょうがなかった。
春くんと別れたのか?
聞いたら聞いたでいいと思う。
でも俺はどうしても聞けなかった。
『別れた』ってひろこが言ったらもう本当に終わりなんだと認めさせるようでどうしても聞けなかった。
「ひろこの部屋。今日のお客様は唯さんでーす」
小柄な体に長い髪はおさげにしてロングスカート。見た目はチョロチョロしていて可愛らしい。
人気女性シンガーの唯がゲストだった。
「唯は、かなりヤバいっすよ」
SOULとも交流があるらしく、秋元さんが以前に言っていたのを覚えていたが相当ぶっとんだ女だった。
「ひろこ!イェーイ!」
初っ端からハイテンション。
ひろこはドン引きするかと思いきや、心待ちにしていた唯のゲストに喜んではいたがもうスタジオは騒然だった。
「セックスしてる?してるでしょ?しまくってるよね?エロいもん」
「避妊してませんって顔してるよね?」
「顔面には絶対出させないでしょ?」
下ネタのオンパレードに笑う者とドン引きする者でスタジオは変な笑いを誘った。
「やっぱり。唯さん、いいですね。」
隣で白部くんは腕組みをして笑っていた。
「白部くん、大丈夫これ?」
「これでいいんですよ。まじうけるー腹いてー」
白部くんはまたご満悦だったのでよしとしたが、相当カットするのではないかという会話だった。
後半は2人でシャンパンを飲みながら唯が卓球部出身という事で卓球大会になった。
ラリーをしながら視聴者のおハガキ質問回答のハズが酒が回って個人の質問になってしまった。
「ひろこ、やりまくってんのかよ!」
「最近はやってませんっ!」
「ひろこのマネージャーチンピラにしかみえねーよ!」
「チンピラです!」
きっと俺の画像も使われるだろう予感する会話に俺も恥ずかしくなる。
「うちのメンバーがひろこでオナニーしてるってよ!」
「お好きにどうぞ!」
大笑いの中2人はかなり酔っ払ってもうヘロヘロになって笑いあっていた。
「支倉と春どっちが好きなんだよ!」
「春です!」
すると笑いでなくおーっと言った歓声が沸いた。
春くんが、まだ好きなんだ。
好き、だよな。
「白部くん、これ編集、」
俺は気になって白部くんを見た。
「遊井さん、ピー音でうまくやりますから。」
「・・・」
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