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僕が本当に人間だったら、きっと今頃衰弱しています。
はい、皆さんこんにちは。魔法使いのミシュメールです。
あれから、一週間が経過致しました。ゼタさんのお家に一週間程引きこもり状態です。どうしてかって?
ゼタさんが言うには、こうです。
男がオークの子を孕むには、まずオークの精子を取り込んで身体を作りかえる必要があるそうです。
身体を急激に作り替えるので、作り替えられている側、つまり僕はホルモンの急激な変化で発情状態になるそうなのです。
あ、いや、なるそうなのです。とか他人事のように言ってる場合じゃないですが、他人事なのです。
僕は発情した時のことを全くと言っていいほど覚えてないのですから。朧気ながらに断片的な記憶はありますが、ほとんど覚えてません。
……本当です。覚えてません。まさか僕が「ゼタさんの、子種、こだね…っ、いっぱい、いっぱいちょうだい…!」なんて、瞳にハートマークを映してトロトロに蕩けながらゼタさんの上に乗って腰をカクカク動かしたりなんかしてないんです。
……こほん。
話を戻しまして。その発情ホルモンが落ち着くのはおよそ一週間。つまり今に至るわけです。
あ、もちろん一週間やりっ放しという訳ではありません。ちゃんとご飯を食べたり湯浴みしたりと、合間合間に人間らしいことをしたりしてました。けど、僕が本当に唯の人間だったらきっと衰弱しています。それくらい、ゼタさんとの交配は激しかったのです。
「ハーフエルフ?」
「はい、そうです。と言っても、ほとんど人間に近いので、髪も茶色なのですが」
一週間盛りに盛りまくって疲れた僕たちは、ベッドでゴロゴロしながら会話をしていました。
そう。僕はハーフエルフです。ですが認知されることはほとんどありません。なにせ人間の血が濃いからです。素で気づくのはエルフの中でも特殊なハイエルフくらいだと思います。
「…ハーフエルフがどうして人間と冒険者に?」
「えっと…エマ、あの気の強い剣士の子と僕は幼馴染でして…エマに誘われて冒険者になりました」
僕はエルフの血が薄くて、エルフの村に入れませんでした。あ、疎外されたとかそういう訳ではなく、エルフしか入れないように村にはバリアが張ってあるのですが、そのバリアに赤子の時から弾かれてしまったのです。
一緒に弾かれた人間の母は、エルフの父と離れて暮らすことに決めて、一番近くの人間の村に僕と暮らすことにしました。もちろん父は、通いで何度も何度も来てくれました。エルフは人前に姿を見せてはならないという掟があるので、とても大変のようですが、父は頑張ってくれていたそうです。
いや、そもそも母もバリアに弾かれてしまうので、どちらにせよ通い婚だったとは思うのですが。
「そうか…ミシュメール。今後はどうする?」
「どうする、とは……?」
「孕ませて、産ませて、はいさようならとはいかないだろう」
そりゃそうです。父だって、できる限り父としての責任を取るために母の下に何度も何度も通いました。母だって、僕を大切に大切に育ててくれました。
それを自分が産む子にしないというのは、なんだか地獄に行きそうな気がします。
「ですが…僕がここに居るのはマズイ気がします」
産んだ責務は果たしたい所存ですが、僕がゼタさんの子を孕む理由はそもそもこの村のオーク達を傷つけたことです。そんな僕が、この村に居続けるのはなんだか難しい気がします。
というか、僕の子供はいじめられたりしないでしょうか? ハーフエルフとオークの子供でさらに村を襲った奴の子供です。
はわわ、とってもマズイ気がしてきました……!
「そこは心配しなくていい。オークは子供を大切にする種族だ。それに、母になるものにも寛容だ」
「そう、なのですか……?」
それならば心配いらないでしょうか?ゼタさんが嘘をついているようには見えません。
この一週間、実はとても快適でした。それこそ、僕が住んでた村よりもです。このオークの村は他のオークの村と違い、木造の家が立ち並んでいます。普通は石造りのボロボロで汚らしい家らしくない家なのです。ゼタさんが言うには、迷い込んだ人間に知恵を借りて色んなことを試しているそうです。
このオークたち、めちゃくちゃ頭良くないですか?オークってもっとこう…野蛮なイメージしかなかったんですが。
ゼタさんの方を見ると、やっぱり人間とは違い肌の色も緑で、八重歯とは言い難い牙もあって、身体も大きくて…あ、いや!ナニも大きかったな、なんて思ってません!思ってませんから!
というより、他のオークと比べてしまうのもひどい話ですが、ゼタさんは明らかにハンサムです。イーグさんもカッコよかったですが、ちょっと凶暴というか、野蛮な感じがしますが、ゼタさんはこう…落ち着いた感じの、穏やかなハンサムと言いますか。大人の余裕を感じます。一体何が違うのでしょうか。度量ですかね。
そんなことを考えていると、ゼタさんはフッと僕を見て笑いました。
「さっきからコロコロと表情が変わるな。考えてることが顔に出てる」
「へあっ」
僕の顔をサラリと撫でながら、ゼタさんは柔らかく微笑んでいます。何だかとっても恥ずかしくて目をぎゅっと瞑ってしまいました。散々恥ずかしいことしただろって言わないでください。発情期中はノーカンです。
正気に戻った今の方が、とっても恥ずかしいわけで。ゼタさんの顔を見ていると何でだかそらしたくなってしまうのです。交渉中はあんなに、どんな些細なことも見逃すかとジッと見つめていたのにです。
「…僕の考えが分かるんですか…?」
モゾモゾと、シーツを引き寄せて顔を隠しながら聞きます。恥ずかしくてもにょもにょと小声で、目だけが出た状態でゼタさんの方をチラリと見遣ると、ゼタさんは無理に僕をシーツから引き剥がそうとはせず、そのままシーツごとギュッと抱きしめてくれます。
あー、そういうことしないで欲しいです!僕はこう見えても、良く良くとチョロいと言われます。見た目通りとか言わないでください。
エマにだって、「アンタは私が見てあげなくちゃ本当にダメなんだから!」なんて言われたものです。
エマは僕の幼馴染兼、お姉さんと言いますか。あの交渉の場では、言語魔法が使える僕が先頭に立ちましたが、いつもならエマが慎重に判断したりします。本当です。捕まって、どうなるか分からない状況になってしまったのでエマは怯えてしまっていましたが、本来はお姉さん気質で僕たちのことを引っ張ってくれる頼れるリーダーなのです。
そんなエマに、「アンタって絶対そのうち騙されるわよね。チョロいっていうか、ゼリカもそう思うでしょ?」と言われ、ゼリカには「…男らしくないのが、ミシュメールさんの良い所だと思いますよ」と言われてしまいました。
ゼリカは敬虔なシスターで、とっても優しいのですが、何故か毒舌になります。丁寧に毒舌です。しかも本人に自覚は全くありません。ひどくないですか?男らしくないって。僕男なんですけど。
あ、いや、今から母にされそうなんですけどね。
そんなチョロくて男らしくない僕が、穏やかで優しい自分よりも大きな男の人に抱きしめられたらどうなるかなんて、分かりきってることです。
惚れてまうやろーってやつです。
そんな僕の考えがバレて欲しく無いので、シーツで顔全体を隠します。ゼタさんを見てたら絶対にバレてしまいます。
「今すぐ考えなくていい。身籠ってる間に考えてくれ」
「みごも…は、はい…」
モゾモゾと顔を出して、ゼタさんの方を見ると、やっぱり優しく微笑んでくれます。
…一週間も、こんなハンサムなオークに抱かれていたのかと思うと、また顔が熱くなってしまいそうです。僕は人生最大の危機を乗り越え、もしかしたら、人生最大の幸福が訪れているのかもしれません。
そんなことを思いながら、ゼタさんの心臓の鼓動をBGMにして僕はゆっくりと瞼を閉じていくのです。
はい、皆さんこんにちは。魔法使いのミシュメールです。
あれから、一週間が経過致しました。ゼタさんのお家に一週間程引きこもり状態です。どうしてかって?
ゼタさんが言うには、こうです。
男がオークの子を孕むには、まずオークの精子を取り込んで身体を作りかえる必要があるそうです。
身体を急激に作り替えるので、作り替えられている側、つまり僕はホルモンの急激な変化で発情状態になるそうなのです。
あ、いや、なるそうなのです。とか他人事のように言ってる場合じゃないですが、他人事なのです。
僕は発情した時のことを全くと言っていいほど覚えてないのですから。朧気ながらに断片的な記憶はありますが、ほとんど覚えてません。
……本当です。覚えてません。まさか僕が「ゼタさんの、子種、こだね…っ、いっぱい、いっぱいちょうだい…!」なんて、瞳にハートマークを映してトロトロに蕩けながらゼタさんの上に乗って腰をカクカク動かしたりなんかしてないんです。
……こほん。
話を戻しまして。その発情ホルモンが落ち着くのはおよそ一週間。つまり今に至るわけです。
あ、もちろん一週間やりっ放しという訳ではありません。ちゃんとご飯を食べたり湯浴みしたりと、合間合間に人間らしいことをしたりしてました。けど、僕が本当に唯の人間だったらきっと衰弱しています。それくらい、ゼタさんとの交配は激しかったのです。
「ハーフエルフ?」
「はい、そうです。と言っても、ほとんど人間に近いので、髪も茶色なのですが」
一週間盛りに盛りまくって疲れた僕たちは、ベッドでゴロゴロしながら会話をしていました。
そう。僕はハーフエルフです。ですが認知されることはほとんどありません。なにせ人間の血が濃いからです。素で気づくのはエルフの中でも特殊なハイエルフくらいだと思います。
「…ハーフエルフがどうして人間と冒険者に?」
「えっと…エマ、あの気の強い剣士の子と僕は幼馴染でして…エマに誘われて冒険者になりました」
僕はエルフの血が薄くて、エルフの村に入れませんでした。あ、疎外されたとかそういう訳ではなく、エルフしか入れないように村にはバリアが張ってあるのですが、そのバリアに赤子の時から弾かれてしまったのです。
一緒に弾かれた人間の母は、エルフの父と離れて暮らすことに決めて、一番近くの人間の村に僕と暮らすことにしました。もちろん父は、通いで何度も何度も来てくれました。エルフは人前に姿を見せてはならないという掟があるので、とても大変のようですが、父は頑張ってくれていたそうです。
いや、そもそも母もバリアに弾かれてしまうので、どちらにせよ通い婚だったとは思うのですが。
「そうか…ミシュメール。今後はどうする?」
「どうする、とは……?」
「孕ませて、産ませて、はいさようならとはいかないだろう」
そりゃそうです。父だって、できる限り父としての責任を取るために母の下に何度も何度も通いました。母だって、僕を大切に大切に育ててくれました。
それを自分が産む子にしないというのは、なんだか地獄に行きそうな気がします。
「ですが…僕がここに居るのはマズイ気がします」
産んだ責務は果たしたい所存ですが、僕がゼタさんの子を孕む理由はそもそもこの村のオーク達を傷つけたことです。そんな僕が、この村に居続けるのはなんだか難しい気がします。
というか、僕の子供はいじめられたりしないでしょうか? ハーフエルフとオークの子供でさらに村を襲った奴の子供です。
はわわ、とってもマズイ気がしてきました……!
「そこは心配しなくていい。オークは子供を大切にする種族だ。それに、母になるものにも寛容だ」
「そう、なのですか……?」
それならば心配いらないでしょうか?ゼタさんが嘘をついているようには見えません。
この一週間、実はとても快適でした。それこそ、僕が住んでた村よりもです。このオークの村は他のオークの村と違い、木造の家が立ち並んでいます。普通は石造りのボロボロで汚らしい家らしくない家なのです。ゼタさんが言うには、迷い込んだ人間に知恵を借りて色んなことを試しているそうです。
このオークたち、めちゃくちゃ頭良くないですか?オークってもっとこう…野蛮なイメージしかなかったんですが。
ゼタさんの方を見ると、やっぱり人間とは違い肌の色も緑で、八重歯とは言い難い牙もあって、身体も大きくて…あ、いや!ナニも大きかったな、なんて思ってません!思ってませんから!
というより、他のオークと比べてしまうのもひどい話ですが、ゼタさんは明らかにハンサムです。イーグさんもカッコよかったですが、ちょっと凶暴というか、野蛮な感じがしますが、ゼタさんはこう…落ち着いた感じの、穏やかなハンサムと言いますか。大人の余裕を感じます。一体何が違うのでしょうか。度量ですかね。
そんなことを考えていると、ゼタさんはフッと僕を見て笑いました。
「さっきからコロコロと表情が変わるな。考えてることが顔に出てる」
「へあっ」
僕の顔をサラリと撫でながら、ゼタさんは柔らかく微笑んでいます。何だかとっても恥ずかしくて目をぎゅっと瞑ってしまいました。散々恥ずかしいことしただろって言わないでください。発情期中はノーカンです。
正気に戻った今の方が、とっても恥ずかしいわけで。ゼタさんの顔を見ていると何でだかそらしたくなってしまうのです。交渉中はあんなに、どんな些細なことも見逃すかとジッと見つめていたのにです。
「…僕の考えが分かるんですか…?」
モゾモゾと、シーツを引き寄せて顔を隠しながら聞きます。恥ずかしくてもにょもにょと小声で、目だけが出た状態でゼタさんの方をチラリと見遣ると、ゼタさんは無理に僕をシーツから引き剥がそうとはせず、そのままシーツごとギュッと抱きしめてくれます。
あー、そういうことしないで欲しいです!僕はこう見えても、良く良くとチョロいと言われます。見た目通りとか言わないでください。
エマにだって、「アンタは私が見てあげなくちゃ本当にダメなんだから!」なんて言われたものです。
エマは僕の幼馴染兼、お姉さんと言いますか。あの交渉の場では、言語魔法が使える僕が先頭に立ちましたが、いつもならエマが慎重に判断したりします。本当です。捕まって、どうなるか分からない状況になってしまったのでエマは怯えてしまっていましたが、本来はお姉さん気質で僕たちのことを引っ張ってくれる頼れるリーダーなのです。
そんなエマに、「アンタって絶対そのうち騙されるわよね。チョロいっていうか、ゼリカもそう思うでしょ?」と言われ、ゼリカには「…男らしくないのが、ミシュメールさんの良い所だと思いますよ」と言われてしまいました。
ゼリカは敬虔なシスターで、とっても優しいのですが、何故か毒舌になります。丁寧に毒舌です。しかも本人に自覚は全くありません。ひどくないですか?男らしくないって。僕男なんですけど。
あ、いや、今から母にされそうなんですけどね。
そんなチョロくて男らしくない僕が、穏やかで優しい自分よりも大きな男の人に抱きしめられたらどうなるかなんて、分かりきってることです。
惚れてまうやろーってやつです。
そんな僕の考えがバレて欲しく無いので、シーツで顔全体を隠します。ゼタさんを見てたら絶対にバレてしまいます。
「今すぐ考えなくていい。身籠ってる間に考えてくれ」
「みごも…は、はい…」
モゾモゾと顔を出して、ゼタさんの方を見ると、やっぱり優しく微笑んでくれます。
…一週間も、こんなハンサムなオークに抱かれていたのかと思うと、また顔が熱くなってしまいそうです。僕は人生最大の危機を乗り越え、もしかしたら、人生最大の幸福が訪れているのかもしれません。
そんなことを思いながら、ゼタさんの心臓の鼓動をBGMにして僕はゆっくりと瞼を閉じていくのです。
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