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エマとユエルさんはまだワクワクとこちらを見ています。
昨日のその後のことを知りたくてうずうずしているようです。
「それで?ツガイになる事を了承して?そのあとはどうなったの?ヤッたの?」
エマは女の子らしからぬ言動をするので、僕は真っ赤になってエマの口を塞ぎました。
「あら、エマは分からないのね。人間ってそう言うところが不便ね」
「むぐむぐむぐ?」
ユエルさんの言葉に、エマは塞がれている口をモゴモゴさせて尋ねているように首を傾げます。
コロコロと笑うユエルさんの方を見ると、僕はなんだか全てを見透かされているような気がして首をブンブン横に振って、その先を言わないで欲しいと懇願しました。
けれど現実は無情なのです。
「ゼタの匂いがプンプンするわよ?こんなに匂いがうつるほどだとさぞかし激し」
「わあああぁあぁあああ!!」
オークが性に奔放な理由がよく分かりました。そりゃ匂い嗅いだだけで「あいつとそいつはヤッたんだな」なんてことが分かってしまうのですから。隠したって無駄ってやつです。
一週間経った後、村のオークの皆さんがやけに僕に優しかった訳がようやく分かります。
「へぇ。じゃぁ身体も作り終わったし、出来ててもおかしくないの?」
「どうかしらね。子宮がきちんと正常に機能していれば大丈夫かしら。人間とオークなんて何百年ぶりかしらね」
「ううう…あの、人間と言っても僕は半分エルフなのです…」
そう言うと、ユエルさんはびっくりして目をこれ以上ないほどかっ開いています。飛び出てしまうのではないでしょうか。
「エルフ?!エルフがオークと?!ゼタは知ってるの?!」
「い、一応知らせましたけど…」
あんぐりと口を大きく開けて、ユエルさんは固まってしまいました。そして突然立ち上がったと思ったら、部屋を出て行ってしまいました。
僕とエマはそんなユエルさんを見て驚きつつも、不思議に思って二人して首を傾げました。
「どうしたのかな。ユエルさん」
「さぁ…?ゼタさんは別に反応なかったんでしょ?」
「うん。むしろ孕んだ後どうする?って感じの話しかしてないよ」
そうやって二人で首を捻って悩んでいると、ドタドタとユエルさんらしからぬ足音を立てて部屋に戻ってきました。
ユエルさんが引いている腕にはイーグさんがいて、イーグさんも不思議そうに首を捻っています。
「この子!ミシュメール!人間じゃないわよ!?」
「は…?」
ユエルさんが叫ぶように言うと、イーグさんは何言っているのかと不思議そうに僕とユエルさんを交互に見ています。
「エルフ!ハーフエルフですって!」
「……はあ?!嘘だろ?!」
「ミシュメールは嘘つけるような子じゃないわよ!」
先ほどのユエルさんのように、あんぐりと口を開いて僕を見ます。
しばらく固まった後、上から下までジロジロとユエルさんとイーグさんで見られます。なんだか恥ずかしくて俯いてしまいました。
「…耳がとんがってないぞ。人間の耳だ」
「あ…これは、母に似たので…」
「父親がエルフか。じゃあエルフである証拠は出せるか?」
そう言われて、僕はうーん、と少し悩みました。するとエマが、あ、と思いついたように手をポンと右手のグーを手のひらに当てます。
「ミシュメールの魔法のほとんどは精霊魔法よ。精霊はエルフにしか見えないでしょ?」
「で、でもちょっとしか使えないよ?」
「ちょっとでも出来るなら見せてくれ。疑って悪いが確証が欲しい」
イーグさんはなんとなく切羽詰まったように僕に頼みます。どうしようか悩んで、エマが飲み干したグラスを見て僕は水の精霊を呼ぶことにしました。
『ウンディーネ、グラスに水を注いで』
ウンディーネと呼んだ水色の服を纏う小さな精霊が、僕のそばに来て微笑み、小さく頷いてグラスの方へ飛んで行きました。そしてウンディーネはきれいな水を出して、グラスを八分目ほど満たしていきます。みんなの目からは空中から水が出たように見えます。普通の魔法ならば手を掲げ、光と共に水が出現しますが、僕は精霊が力を貸してくれるので距離が離れていてもある程度なら力を貸してもらえるのです。
やっぱり二人ともあんぐりと口を開けています。エマは見慣れているのでどうして驚くのか不思議そうにしています。
「なになに?ミシュメールってすごいの?」
「…魔法自体はありふれたもんだ、けどこれはただの魔法じゃない。精霊魔法だ。あと、オークとエルフがツガイになるなんざ、前代未聞だ!」
エマの問いに、イーグさんは驚いて叫びます。オークとエルフは仲が悪いのでしょうか?
「種族間争いでもあるんですか?」
「争うってわけではないけれど…私たちはゴブリンとか、獣人族とかなら交流があるけれど…エルフは人間とか妖精族とか、そっちと仲が良いというか…」
ユエルさんは少しだけ困ったように微笑みます。けれど僕はハーフですし。エルフとも人間ともつかない中途半端な存在なので、そんなに悩むことでもない気がします。
「すげぇのをゼタに勧めちまったな…レア中のレアだ。ミシュメールもオークに抱かれて不快感無いのか」
僕が抱かれて、の言葉に頬を染めて目を逸らすとイーグさんはそれだけで理解したように頷きます。
「とりあえず、ミシュメールは今日はどうするの?ここに泊まる?」
「あ……い、いえ、ゼタさんのお家に帰ります……」
「そう。ふふふ、良いわね。新婚だものね」
ユエルさんに言われ、僕は更に頬を染めます。新婚というワードに反応してしまいました。
オークにとったらツガイになることは結婚と同義のようで、それは昨日ゼタさんから聞きました。
そんな僕を見てエマはニヨニヨと笑っています。それになんだか居心地が悪いです。ユエルさんとイーグさんからは生暖かい視線が向けられているのです。
「ぼ、僕、帰ります! お邪魔しましたぁ!」
耐えきれなくなって僕は顔を真っ赤にして部屋を出ました。三人とも「程々に」的な発言を僕の背中に向けてしています。何がとは聞きたくありません。だってそれは僕じゃなくてゼタさんに言って欲しい言葉なんです!
イーグさんとユエルさんの家を出て、僕は真っ直ぐゼタさんのお家に向かいました。赤くした顔を村の皆さんに見られたくなくて下を向いてダッシュしました。
ちゃんと前を向いていなかったせいで、硬い壁に思いきりぶつかってしまいました。
「っわ!」
声を上げて尻もちをつきそうになりましたが、壁は僕の背中と腕を掴んで支えてくれたので尻もちをつくことはありませんでした。
「こら。危ないだろう、ミシュメール」
緑の壁は、ゼタさんでした。ゼタさんは口調は叱っているのに、表情は嬉しそうでした。
「ゼタさん!」
僕はぴょん、と飛び付くように腕を伸ばします。ゼタさんの首に抱きつこうと手を伸ばしましたが、ゼタさんの背が高すぎるのか、僕の背が低すぎるのか全然届かないのです。けれど飛んだ僕の脇に手を差し込みふわっと重力が消えます。羽が生えたように自分の体が浮かびました。ゼタさんは、定位置かのように僕を縦抱きにします。
「エマは元気だったか?」
「はい!とっても!」
「良かったな。今日はもう家に帰るのか?」
ゼタさんはこの村のリーダーをしているので色々仕事があるようです。僕は今のところ免除されていますが、その内何か仕事を割り振られる予定です。オークにも働かざるもの喰うべからずの精神があるようです。
僕が今免除されているのは、余所者だからというよりも、ゼタさんの初めての子供を宿しているかもしれないからです。そんな中、慣れない仕事をしていれば、逆に皆さんに気を遣わせてしまうかもしれないそうです。
魔法とかで助けになればなんて思っていましたが、今後考えていかなくてはならないです。
「帰ります…」
「何かあったのか?」
「何でもないです…」
まさか夜のことが筒抜けで恥ずかしくて逃げてきたとはとても言い難いです。けど僕が頬を赤く染めて俯いているとゼタさんには分かったようです。
「悪いな。ユエルもイーグも気は良い奴らだが、オーク自身はあんまり性に関しての恥じらいはないからな」
「あう…」
「人間もエルフもその辺りは繊細だからな」
エマは全く繊細じゃないのは、やはり冒険者だからでしょうか?いや、僕も冒険者のはずなのですが。
「とにかく、帰ろう。ミシュメール」
でも、ゼタさんが微笑んでくれるなら、少しくらいの恥じらいは我慢しようと思います。
昨日のその後のことを知りたくてうずうずしているようです。
「それで?ツガイになる事を了承して?そのあとはどうなったの?ヤッたの?」
エマは女の子らしからぬ言動をするので、僕は真っ赤になってエマの口を塞ぎました。
「あら、エマは分からないのね。人間ってそう言うところが不便ね」
「むぐむぐむぐ?」
ユエルさんの言葉に、エマは塞がれている口をモゴモゴさせて尋ねているように首を傾げます。
コロコロと笑うユエルさんの方を見ると、僕はなんだか全てを見透かされているような気がして首をブンブン横に振って、その先を言わないで欲しいと懇願しました。
けれど現実は無情なのです。
「ゼタの匂いがプンプンするわよ?こんなに匂いがうつるほどだとさぞかし激し」
「わあああぁあぁあああ!!」
オークが性に奔放な理由がよく分かりました。そりゃ匂い嗅いだだけで「あいつとそいつはヤッたんだな」なんてことが分かってしまうのですから。隠したって無駄ってやつです。
一週間経った後、村のオークの皆さんがやけに僕に優しかった訳がようやく分かります。
「へぇ。じゃぁ身体も作り終わったし、出来ててもおかしくないの?」
「どうかしらね。子宮がきちんと正常に機能していれば大丈夫かしら。人間とオークなんて何百年ぶりかしらね」
「ううう…あの、人間と言っても僕は半分エルフなのです…」
そう言うと、ユエルさんはびっくりして目をこれ以上ないほどかっ開いています。飛び出てしまうのではないでしょうか。
「エルフ?!エルフがオークと?!ゼタは知ってるの?!」
「い、一応知らせましたけど…」
あんぐりと口を大きく開けて、ユエルさんは固まってしまいました。そして突然立ち上がったと思ったら、部屋を出て行ってしまいました。
僕とエマはそんなユエルさんを見て驚きつつも、不思議に思って二人して首を傾げました。
「どうしたのかな。ユエルさん」
「さぁ…?ゼタさんは別に反応なかったんでしょ?」
「うん。むしろ孕んだ後どうする?って感じの話しかしてないよ」
そうやって二人で首を捻って悩んでいると、ドタドタとユエルさんらしからぬ足音を立てて部屋に戻ってきました。
ユエルさんが引いている腕にはイーグさんがいて、イーグさんも不思議そうに首を捻っています。
「この子!ミシュメール!人間じゃないわよ!?」
「は…?」
ユエルさんが叫ぶように言うと、イーグさんは何言っているのかと不思議そうに僕とユエルさんを交互に見ています。
「エルフ!ハーフエルフですって!」
「……はあ?!嘘だろ?!」
「ミシュメールは嘘つけるような子じゃないわよ!」
先ほどのユエルさんのように、あんぐりと口を開いて僕を見ます。
しばらく固まった後、上から下までジロジロとユエルさんとイーグさんで見られます。なんだか恥ずかしくて俯いてしまいました。
「…耳がとんがってないぞ。人間の耳だ」
「あ…これは、母に似たので…」
「父親がエルフか。じゃあエルフである証拠は出せるか?」
そう言われて、僕はうーん、と少し悩みました。するとエマが、あ、と思いついたように手をポンと右手のグーを手のひらに当てます。
「ミシュメールの魔法のほとんどは精霊魔法よ。精霊はエルフにしか見えないでしょ?」
「で、でもちょっとしか使えないよ?」
「ちょっとでも出来るなら見せてくれ。疑って悪いが確証が欲しい」
イーグさんはなんとなく切羽詰まったように僕に頼みます。どうしようか悩んで、エマが飲み干したグラスを見て僕は水の精霊を呼ぶことにしました。
『ウンディーネ、グラスに水を注いで』
ウンディーネと呼んだ水色の服を纏う小さな精霊が、僕のそばに来て微笑み、小さく頷いてグラスの方へ飛んで行きました。そしてウンディーネはきれいな水を出して、グラスを八分目ほど満たしていきます。みんなの目からは空中から水が出たように見えます。普通の魔法ならば手を掲げ、光と共に水が出現しますが、僕は精霊が力を貸してくれるので距離が離れていてもある程度なら力を貸してもらえるのです。
やっぱり二人ともあんぐりと口を開けています。エマは見慣れているのでどうして驚くのか不思議そうにしています。
「なになに?ミシュメールってすごいの?」
「…魔法自体はありふれたもんだ、けどこれはただの魔法じゃない。精霊魔法だ。あと、オークとエルフがツガイになるなんざ、前代未聞だ!」
エマの問いに、イーグさんは驚いて叫びます。オークとエルフは仲が悪いのでしょうか?
「種族間争いでもあるんですか?」
「争うってわけではないけれど…私たちはゴブリンとか、獣人族とかなら交流があるけれど…エルフは人間とか妖精族とか、そっちと仲が良いというか…」
ユエルさんは少しだけ困ったように微笑みます。けれど僕はハーフですし。エルフとも人間ともつかない中途半端な存在なので、そんなに悩むことでもない気がします。
「すげぇのをゼタに勧めちまったな…レア中のレアだ。ミシュメールもオークに抱かれて不快感無いのか」
僕が抱かれて、の言葉に頬を染めて目を逸らすとイーグさんはそれだけで理解したように頷きます。
「とりあえず、ミシュメールは今日はどうするの?ここに泊まる?」
「あ……い、いえ、ゼタさんのお家に帰ります……」
「そう。ふふふ、良いわね。新婚だものね」
ユエルさんに言われ、僕は更に頬を染めます。新婚というワードに反応してしまいました。
オークにとったらツガイになることは結婚と同義のようで、それは昨日ゼタさんから聞きました。
そんな僕を見てエマはニヨニヨと笑っています。それになんだか居心地が悪いです。ユエルさんとイーグさんからは生暖かい視線が向けられているのです。
「ぼ、僕、帰ります! お邪魔しましたぁ!」
耐えきれなくなって僕は顔を真っ赤にして部屋を出ました。三人とも「程々に」的な発言を僕の背中に向けてしています。何がとは聞きたくありません。だってそれは僕じゃなくてゼタさんに言って欲しい言葉なんです!
イーグさんとユエルさんの家を出て、僕は真っ直ぐゼタさんのお家に向かいました。赤くした顔を村の皆さんに見られたくなくて下を向いてダッシュしました。
ちゃんと前を向いていなかったせいで、硬い壁に思いきりぶつかってしまいました。
「っわ!」
声を上げて尻もちをつきそうになりましたが、壁は僕の背中と腕を掴んで支えてくれたので尻もちをつくことはありませんでした。
「こら。危ないだろう、ミシュメール」
緑の壁は、ゼタさんでした。ゼタさんは口調は叱っているのに、表情は嬉しそうでした。
「ゼタさん!」
僕はぴょん、と飛び付くように腕を伸ばします。ゼタさんの首に抱きつこうと手を伸ばしましたが、ゼタさんの背が高すぎるのか、僕の背が低すぎるのか全然届かないのです。けれど飛んだ僕の脇に手を差し込みふわっと重力が消えます。羽が生えたように自分の体が浮かびました。ゼタさんは、定位置かのように僕を縦抱きにします。
「エマは元気だったか?」
「はい!とっても!」
「良かったな。今日はもう家に帰るのか?」
ゼタさんはこの村のリーダーをしているので色々仕事があるようです。僕は今のところ免除されていますが、その内何か仕事を割り振られる予定です。オークにも働かざるもの喰うべからずの精神があるようです。
僕が今免除されているのは、余所者だからというよりも、ゼタさんの初めての子供を宿しているかもしれないからです。そんな中、慣れない仕事をしていれば、逆に皆さんに気を遣わせてしまうかもしれないそうです。
魔法とかで助けになればなんて思っていましたが、今後考えていかなくてはならないです。
「帰ります…」
「何かあったのか?」
「何でもないです…」
まさか夜のことが筒抜けで恥ずかしくて逃げてきたとはとても言い難いです。けど僕が頬を赤く染めて俯いているとゼタさんには分かったようです。
「悪いな。ユエルもイーグも気は良い奴らだが、オーク自身はあんまり性に関しての恥じらいはないからな」
「あう…」
「人間もエルフもその辺りは繊細だからな」
エマは全く繊細じゃないのは、やはり冒険者だからでしょうか?いや、僕も冒険者のはずなのですが。
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