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stage2 城下
015 出会い
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翌朝、私に朝の訪れを知らせたのは、愛らしい小鳥のさえずり……などではなかった。
「まあまあ、あんた、生きてんのけえ?」
はっと目を覚まし、口元を湿らせていたヨダレを手の甲で拭いながら飛び起きると、目の前に、腰の曲がったおばあさんが立っていた。
「まあ、生きてたあ」
そう言う割に特に驚いたふうでもなく、おばあさんは淡々と私を見下ろしていた。
「あんた、なして人んちの軒先なんかで寝とるの?見たとこ、いいとこの娘っぽいだに」
訛はあるけれど、ハキハキと喋るおばあさんだった。
「あっ、ここ、おばあちゃんの家だったんですね。すみません!実は……」
そこまで口を開きかけて、私は眉間に皺を刻んだ。
一体何をどこから話せばいいのか、考えてみたら判断が難しかった。
城から逃げてきたことを話すわけにはいかないし、それ以前に、自分が何者であるか説明するとなると、これが非常に面倒だった。
マリー・ルナ、というのが私がこの世界で女神に与えられた名前だけれど、考えてみればこのマリー・ルナ、どこの誰という設定なのか。
きちんと出自や帰る屋敷があるのか。
それとも、女神が気まぐれで作った架空の存在に過ぎないのか。
どちらにせよそれは女神に聞いてみないとわからないし、じゃあ馬鹿正直に自分は異世界からやって来た右も左もわからない女子高生で、この体はカリソメなんです、と言えるかというと、こっちの方がよっぽどとんでもない。
十中八九、頭の中にお花畑が百花繚乱していると思われるのがオチだ。
「ええと、ええとお……」
答えあぐねている私を、おばあさんは無表情に眺めていた。
これがいかにも冷たそうに見えて怖かったのだけれど、現実は意外な方向へと進んだ。
「まあまあ、いいわあ。地べたで話してもナンだし、お上がんなさいな」
どうやら「まあまあ」が口癖らしいおばあさんは、そう言うとくの字に曲がった背中を向けて、家の中に入っていってしまった。
一瞬耳を疑ったけれど、扉は大きく開け放たれたまま、私を待っている。
「あ、ありがとうございます……!」
私は慌てておばあさんのあとを追った。
扉を入る時ふと見上げると、玄関の上に掛けられた看板には、「エルマ(婆さん)の継ぎもの店」と書かれていた。
継ぎものってなんだろう?
「まあまあ、あんた、生きてんのけえ?」
はっと目を覚まし、口元を湿らせていたヨダレを手の甲で拭いながら飛び起きると、目の前に、腰の曲がったおばあさんが立っていた。
「まあ、生きてたあ」
そう言う割に特に驚いたふうでもなく、おばあさんは淡々と私を見下ろしていた。
「あんた、なして人んちの軒先なんかで寝とるの?見たとこ、いいとこの娘っぽいだに」
訛はあるけれど、ハキハキと喋るおばあさんだった。
「あっ、ここ、おばあちゃんの家だったんですね。すみません!実は……」
そこまで口を開きかけて、私は眉間に皺を刻んだ。
一体何をどこから話せばいいのか、考えてみたら判断が難しかった。
城から逃げてきたことを話すわけにはいかないし、それ以前に、自分が何者であるか説明するとなると、これが非常に面倒だった。
マリー・ルナ、というのが私がこの世界で女神に与えられた名前だけれど、考えてみればこのマリー・ルナ、どこの誰という設定なのか。
きちんと出自や帰る屋敷があるのか。
それとも、女神が気まぐれで作った架空の存在に過ぎないのか。
どちらにせよそれは女神に聞いてみないとわからないし、じゃあ馬鹿正直に自分は異世界からやって来た右も左もわからない女子高生で、この体はカリソメなんです、と言えるかというと、こっちの方がよっぽどとんでもない。
十中八九、頭の中にお花畑が百花繚乱していると思われるのがオチだ。
「ええと、ええとお……」
答えあぐねている私を、おばあさんは無表情に眺めていた。
これがいかにも冷たそうに見えて怖かったのだけれど、現実は意外な方向へと進んだ。
「まあまあ、いいわあ。地べたで話してもナンだし、お上がんなさいな」
どうやら「まあまあ」が口癖らしいおばあさんは、そう言うとくの字に曲がった背中を向けて、家の中に入っていってしまった。
一瞬耳を疑ったけれど、扉は大きく開け放たれたまま、私を待っている。
「あ、ありがとうございます……!」
私は慌てておばあさんのあとを追った。
扉を入る時ふと見上げると、玄関の上に掛けられた看板には、「エルマ(婆さん)の継ぎもの店」と書かれていた。
継ぎものってなんだろう?
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