選ばれし英雄達ー暁の訪れー

boou

文字の大きさ
1 / 22
序章 出会い

プロローグ

しおりを挟む
炎。
炎が、燃えている。

ごうごうと、音を立てて。
大きく息を吸い込んで、炎が燃えている。

【   】を包んで、【   】を呑み込んで。
まるで嘲笑うように、まるで怒り狂うように。
炎が、燃えている。


……広場の中央。
白色の鉱石により円形状に造られたその場所は、通常であれば途方もない程の人数を集めることのできる王都有数の憩いの場であった。
いつもであれば多くの人々が日常の中で訪れ、会話をし、ただ通り過ぎる。
それだけの場所だった。



……火刑台は原型を無くしつつある。
その中に焚べられた“もの”と共に、業火に焼かれ続けてきたからだろう。
踊り狂うような熱風、鼻をつく酸っぱい……焦げた肉の香り、視界を埋め尽くす爛々とした赤い色。
全て、全てが非日常であり、それを眺める全ての存在にとっての胸踊る出来事であった。

「死ね!」

誰かが叫ぶ。

「死ね!妖精殺し!死んでしまえ!」

誰かが叫ぶ。

罵声、怒声、喜声、歓声。
嬉しそうに、楽しそうに、怒るように、責めるように。
声が、声が、声が、声が。

「死ね!俺達を殺す化け物!化け物!」
「早く消えろ!跡形もなく消えろ!」

笑う、笑う、笑う。
皆、笑っている。
叫んで、笑っている。

……これは、報いなのか。
それとも罰なのか。
ならば何がいけなかったというのか。


「   。」


小さく、名前を呼んだ。



どこか、遠くで、声が聞こえた。
懐かしい、ずっと聞きたかった声に似ていた。





ーーーーーーーーーー

「!!」

ふと、一人の少女が飛び起きた。

見渡すは草原、空はどこまでも青く。
ポツンと背の高い広葉樹が静かに少女を日差しから守っていた。
……どうやら眠っていたようだ。

「…………夢、か。」

小さな声で呟く。
その声色はどこか震えているように聞こえた。

額から流れる大粒の汗を拭い、大きく見開かれた瞳をぎゅっと閉じる。
乾いた眼球がピリピリと痛む。

そのまま暫く過ごしただろうか、少女はゆっくりと目を開き、大きく呼吸をした。
……枯れゆく草花の匂い、遠くで鳴く鳥の声。
風が頬を優しく撫で、汗で張り付いた髪が空中にそよがれる。
とてもいい昼下がりだ、出かけるには丁度良い。

「……そろそろ出発しなきゃね。」

少女はそう言うと、その場から立ち上がる。
枕代わりにしていた鞄を取り、布に包まれた長い何かを背負うと、ゆっくりと歩き始めた。
気がつけば汗は止まり、震えもなくなっていた。
悪夢は、記憶の底にしまわれていったようだ。




――トゥ・レイ・フ。
四つの国、四つの地域、大小様々な街、村によって形作られた大陸の名である。
その始まりは二千年前、とある女神により創生されたと伝えられているが、その真実は誰も知らない。
ただお伽話のように語られる“神話”の数々と、女神が眠るとされる聖域が存在するだけ。

人々は変わらぬ日常を享受し、平和な日々を過ごしていた。
……五百年前までは。

“それ”は、魔物と呼ばれていた。
血のように濁った赤い瞳、満たされることのない食欲、尽きぬことのない殺意。
ただ本能として人間を襲い、千切り、喰らう化け物。
突如として出現した魔物は瞬く間に数を増やし、大陸の四分の一を呑み込んだ。
その勢いは止まることを知らず、人間達を無差別に襲い、生きたまま腹に収めていったのだ。

人間達は徒党を組み、魔物を倒していく。
しかし数が違う。
倒し、喰われ、倒し、喰われ――。
気がつけば世界の各地に魔物が蔓延り、人間達は自由と平和を失ったのである。

魔を従えしは【魔王】
ただの一度も目に触れず、声を聞けず、名前のみが存在する絶対的な悪。
人類の絶滅を望む者、人類の廃滅を願う者。
突如現れた、この地上に生きる我々人間の敵である。
それが存在するとされて、五百年。

物語は東地方、アスティナート王国にある静かな自然の中。
ルビアという一人の少女が目を覚ましたことで始まった。

姿は野を彩る小さな花、手足は葉を散らせた冬の枝、だが瞳に込められた光は赤き星のように。
どこにでもいる、だが決して見つからない、ささやかな魅力を持った少女がこの地上を歩むと決めたその時に始まったのだ……。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...