婚約破棄された魔女令嬢

あきづきみなと

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先読みの魔女、招かれる

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「今回のことに関して、こちらをお招きしました」
セイラの言葉と同時に姿を見せたのは一人の女性だった。年の頃は侯爵夫人と同じくらいか、けれど病弱な彼女より更に痩せ細り血の気の薄い様子と、粗末な衣類や傷んだ髪・荒れた肌等から見ると貴族ではなく平民なのだろう。
「……は、はじめまして」
頭を下げる様子もおどおどと身の置き所もないように見える。
「セイラ嬢、こちらは?」
不審げに問う王太后にセイラは真顔で応じる。
「この方はニーナ様、隣国に生まれた先読みの『魔女』です」
「まあ!」
「ニーナ様、こちらの方はこの国の王太后でいらっしゃる『国母の魔女』であらせられます」
双方に紹介を済ませるとセイラは一礼して自分の席に座る。おろおろと視線をさまよわせていたニーナは、恐る恐るといった様子で頭を下げた。
「に、ニーナと申します」
「楽になさってくださいな、ニーナさん。……先読みの魔女でいらっしゃるとは、隣国で苦労なさったでしょうに」
「は、はあ……でもあの、先読みの力はもうあまり残っておりません」
促され、腰を下ろして彼女は申し訳無さそうに頭を振る。
『先読み』の魔女とは、簡単に言えば予知能力者だ。未来を見通す異能、ただしこの能力は他のものにも増して個人差が大きく同時に減衰も甚だしいという。
「……そしてニーナ様は。私の義妹でありますノリエッタ嬢の産みの親でもあります」
それに淡々とセイラが補足する。
要は彼女の先読みを知ったハーリット侯爵が、それを自分のために利用しようとした、それが全ての始まり。
「皆様ご承知の通り、隣国では『魔女』は差別されております。そのために処罰される訳ではございませんが、本来得られる保護や何かもありませんので……」
ニーナの先読みは強いものではなく、正確な天気予報程度の代物だった。しかし一度だけ、強烈な幻視ビジョンを見、それを洩らしてしまったのが始まりだったという。
「それがその、私の産んだ娘が美しく育ち、身分ある多くの殿方に愛され、乞われて幸福に豊かな暮らしを送るというものでした」
言ってみれば日々抑圧された状態でみる夢想に近い。
だが彼女は『先読みの魔女』、ただの夢幻では終わらない。というか、それをどこでどうして聞きつけたのか、ハーリット侯爵の耳に入ってから事態は急転した。
当時彼は一介の貴族令息。跡取りでもない部屋住みの身でニーナを口説きにかかった。『魔女』故の差別に苦しい生活を余儀なくされていた彼女だが、彼の兄が友人と共に事故に遭って亡くなり、その友人の家に婿入りすることになったと言ってきた時には既に彼の愛人という立場にされていた。
「多分、私はもう先読みの力は失ったものと思います。……だって私の産んだ娘は、産んですぐ侯爵に連れて行かれたきり会ってもいませんし、もう既に『皆に愛されて幸福に暮らす』ことはできないようですから」
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