婚約破棄された魔女令嬢

あきづきみなと

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侯爵、途方に暮れる

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「ここが、貴方の新しい領地です」
示された先にハーリット侯爵は呆然とした。
彼の前に広がるのは茫漠たる荒れ地。乾いて岩場と砂礫、ぽつぽつと立ち枯れた木立が残る以外目につくものもない、何の実りも無さそうな土地だ。
「な、何を言っている!?私が得た土地は『魔女の森』だぞ、あの豊かな森だ!」
声を荒げても、同行した王宮の騎士も文官も眉さえ動かさない。
「そうは言っても、いただいた地図の場所はこちらですので。侯爵閣下も、道中の 道筋はご覧になっていたではないですか」
そう、ここは確かにかつて『魔女の森』と呼ばれる豊かな森が広がっていた土地だ。十年経ってようやく得られた、侯爵にとって待望の土地であるはず。
それを教えるため、わざわざ無蓋の馬車で道中を見せつけながらゆっくりやって来たのだ。
『魔女』に対する蔑視及び養女のセイラへの虐待、更には王子にその間違った価値観を吹き込んだことについて王家から厳しく叱責された侯爵だったが。その償いとして侯爵領の、その一部に謹慎するよう命じられて護送されて来たのだ。謹慎ということで王宮や国内の社交には出られないものの、その『一部』が豊かな『魔女の森』であればがっぽり貯め込むことは出来ようと、大人しくしていた侯爵には予想外の事態だ。
「ああ、そう言えば。『魔女の森』とは、移動するという伝説がありましたね」
「確かに。『魔女』を貶める者を拒絶するとも言います」
騎士や文官達は侯爵の勝手な思い込みを承知の上で、わざとらしく状況を説明してやる。少なくとも彼等、この国の人間にとっては当たり前の話なのだ。伝説というには現実的過ぎるその有り様。
『魔女の森』は移動する。それが国の政やその他の事情を考慮しない、気紛れな異能の表れでもある。その故、如何に豊かで利が多かろうとも政には組み込み難いし、一般の領地と同じように扱うことは出来ない。
『魔女』についてのある程度正しい知識(それも現在の段階で、と注釈がつくが)さえあればそのくらいのことはすぐに気づいたはずだし、そもそも『魔女』の所有であるが故に『魔女の森』と呼ばれる土地を我が物にしよう等と考えるはずがない。
『魔女』は人知の及ばぬ異能者であるが、人間に敵対するものではない、本来は。
だが自身に敵対する者には容赦しないし、約束ごとを遵守する分それを蔑ろにする者に対する反撃は苛烈なものだという。
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