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元侯爵夫人は悩む。そして諦める
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「あの子にも困ったものだこと」
元侯爵夫人エレーヌは深々と溜め息を吐いた。
「昔から私達の教育をまともに受けていなかったのは、あの人の法螺話を真に受けていたからなのかしら」
ノリエッタは興奮が酷く、『気持ちの落ち着くお茶』を飲ませて用意した部屋に放り込まれた。実質、『薬投与の上軟禁』状態であるが、本人以外は反対する者もおるまい。フィリシウスでさえ彼女に用意された『お茶』の目的には気づいたようだが何も言わなかった。何せ彼女がいては、進めなくてはならない話も進まない。
「今はそれを悔やんでも仕方ありますまい、エレーヌ様」
応接間に残っているのはエレーヌ夫人と、フィリシウス達についてきた者達。実質彼等が侯爵領の運営を行うことになるのだろう。
一人は彼の侍従だった青年で、エドモンドという。他の侍従は皆実家に引き取られたが、彼は自分で望んで残り、主を諌められなかった分今後の助けになりたいと志願してついてきた。
元々ノリエッタには興味を見せておらず、こちらへの道中でも泣きつこうとする彼女を綺麗に無視してフィリシウスだけを気遣い、もう一人の同行者と打合せ等準備に励んでいた。
そのもう一人は王宮で文官に就いていた男性だ。有能だが実家の位が低く、これ以上の出世は望めない。そのため、侯爵家の補佐役として転職してきた。この男性がエドモンドと出来ればフィリシウスを指導しつつ領地運営を進めることになるのだろう。
声を掛けてきたその男性に苦笑し、エレーヌ夫人は帳簿を執務机に積み上げた。
「さて。私も結婚するまで、運営については学ぶ機会がなく、色々苦労して参りました。貴方方も大変だと思いますが、頑張ってくださいませ」
侯爵家は、言ってみれば極々『一般的』な貴族家だ。爵位の割に領地は生産力が弱く、食糧等の備蓄もない訳ではないが心許ない。その上前侯爵とノリエッタ父子は浪費家で、方々に借金を重ねていたことも明らかになっている。前侯爵の隠し持っていた私財で穴埋めした残りは、王太后の口添えで返済も猶予を得た。
ここから立て直しは大変だろうが、この男性の手腕は王宮の折り紙つき、エドモンドも後がない以上真面目に取り組んでくれるだろう。フィリシウスの教育も必要だが、そちらの優先順位は低い。
彼の方は、単に血統をつないでくれるだけでいい。それなりに続いた侯爵家を、自分の代で途絶えさせるのは遺憾ではあるが、王家の血筋に返すのであればまだ諦めもつく。
元侯爵夫人エレーヌは深々と溜め息を吐いた。
「昔から私達の教育をまともに受けていなかったのは、あの人の法螺話を真に受けていたからなのかしら」
ノリエッタは興奮が酷く、『気持ちの落ち着くお茶』を飲ませて用意した部屋に放り込まれた。実質、『薬投与の上軟禁』状態であるが、本人以外は反対する者もおるまい。フィリシウスでさえ彼女に用意された『お茶』の目的には気づいたようだが何も言わなかった。何せ彼女がいては、進めなくてはならない話も進まない。
「今はそれを悔やんでも仕方ありますまい、エレーヌ様」
応接間に残っているのはエレーヌ夫人と、フィリシウス達についてきた者達。実質彼等が侯爵領の運営を行うことになるのだろう。
一人は彼の侍従だった青年で、エドモンドという。他の侍従は皆実家に引き取られたが、彼は自分で望んで残り、主を諌められなかった分今後の助けになりたいと志願してついてきた。
元々ノリエッタには興味を見せておらず、こちらへの道中でも泣きつこうとする彼女を綺麗に無視してフィリシウスだけを気遣い、もう一人の同行者と打合せ等準備に励んでいた。
そのもう一人は王宮で文官に就いていた男性だ。有能だが実家の位が低く、これ以上の出世は望めない。そのため、侯爵家の補佐役として転職してきた。この男性がエドモンドと出来ればフィリシウスを指導しつつ領地運営を進めることになるのだろう。
声を掛けてきたその男性に苦笑し、エレーヌ夫人は帳簿を執務机に積み上げた。
「さて。私も結婚するまで、運営については学ぶ機会がなく、色々苦労して参りました。貴方方も大変だと思いますが、頑張ってくださいませ」
侯爵家は、言ってみれば極々『一般的』な貴族家だ。爵位の割に領地は生産力が弱く、食糧等の備蓄もない訳ではないが心許ない。その上前侯爵とノリエッタ父子は浪費家で、方々に借金を重ねていたことも明らかになっている。前侯爵の隠し持っていた私財で穴埋めした残りは、王太后の口添えで返済も猶予を得た。
ここから立て直しは大変だろうが、この男性の手腕は王宮の折り紙つき、エドモンドも後がない以上真面目に取り組んでくれるだろう。フィリシウスの教育も必要だが、そちらの優先順位は低い。
彼の方は、単に血統をつないでくれるだけでいい。それなりに続いた侯爵家を、自分の代で途絶えさせるのは遺憾ではあるが、王家の血筋に返すのであればまだ諦めもつく。
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