アラシとナギのパンケーキ

くさなぎ秋良

文字の大きさ
8 / 11

8

しおりを挟む
アラシはにやりと笑いますが、ナギにはどうして彼らが砂漠を思い出すのかわかりません。

「ナギも食べてごらん」

アラシに言われ、ナギもパンケーキをひとくち食べてみました。
すると、なにか固いものがジャリッという音とともに砕けたのです。

「なあに、これ」

驚くナギの口に、ほんのりと優しい甘さが広がっていきます。

「まぁ、これ、ザラメね」

アラシが最後に入れたものは、ザラメという砂糖の大きな粒だったのです。
ザラメは噛むたびにザリザリしていて、まるで砂が口にはいったよう。
姫君の金色の目が、どこか遠くを見つめました。

「ああ、あの砂漠は今日もこのパンケーキみたいな色をしているのかしら。相変わらず退屈なくらい真っ平らなのかしら」

「砂漠が恋しいとおっしゃっておいでです」

姫君はキッとラクダを睨みつけ「余計なことは言わないの」と叱り飛ばしました。けれど、すぐに黙り込み、やがてこう言ったのです。

「次は草原に行く予定だったわね? ゆっくり向かいましょう」

ラクダの説明を聞かなくても、アラシはにんまりしてしまいました。だって、草原の手前には砂漠があるのです。きっと、砂の魚の王様はすぐに姫君に会えることでしょう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神ちゃま

吉高雅己
絵本
☆神ちゃま☆は どんな願いも 叶えることができる 神の力を失っていた

だーるまさんがーこーろんだ

辻堂安古市
絵本
友だちがころんだ時に。 君はどうする?

おしごとおおごとゴロのこと の えほん

皐月 翠珠
絵本
ゴロは決めました 憧れのぬいぐるみのところで 一生懸命働こう と 田舎から上京したゴロは 慣れない都会に右往左往 でも ゴロは頑張ります 全力で“おしごと” をします ぶん:皐月翠珠 え:てぃる

未来スコープ・コンセプト絵本 ―みらいのたまごとカメのトト―

米田悠由
絵本
「ちゃんと ふつうに しなさい!」 ──どうして ぼくは みんなみたいに できないんだろう…… 森の奥で、のんびり屋のカメ・トトは「みらいのたまご」を見つけます。 そのたまごには、見えた未来 がほんとうになる不思議な力がありました。 トトは、たまごに映る立派な姿を なりたい自分 だと信じて、努力を始めます。 でも、仲間たちとの出会いを通して、少しずつ問いが生まれます。 ──それは、ほんとうにぼくが望む未来なのかな? やがて、たまごは失われ、未来も見えなくなります。 けれどその喪失の中で、トトは気づきます。 「未来は、見えるものじゃなくて、歩きながらつくっていくもの」 誰かに決められた 普通 ではなく、自分のペースで、自分らしく生きることを選んだトト。 違いを抱えた仲間たちとの出会いが、トトの心をほどき、再び歩き出す力をくれました。 挫折と再生、多様性と希望を描いた、すべての 選び直したい人 にそっと寄り添う絵本です。

どんどんうるさい

よこいみさと
絵本
森のお話。

もぐもぐもぐらのものがたり

cha
絵本
もぐらのこいのものがたり

スライムのおしごと

バナナ男さん
絵本
スライムのお仕事はとっても大変! そんなスライムさんの一日を書いてみました・:*。・:*三( ⊃'ω')⊃

ちびりゅうハウスの つくりかた

関谷俊博
絵本
ちびりゅうハウスの つくりかた せつめいしょです。

処理中です...