アラシとナギの料理店

くさなぎ秋良

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すっかり満足したアライグマさんは、残りのクッキーを持ち帰ることにしました。
望遠鏡をのぞきながら食べることにしたのです。

「さあ、一番星が出る前に帰らなきゃ。なにせ私には時間がないのでね」

アライグマさんが店を出て行くと、ナギが耳をぴくぴくさせます。

「ゆっくり味わえばいいのに」

「いいんだよ。アライグマさんにとって、星を見ながら食べるのが一番なのさ」

「時間がないって、大変なのね」

「時間の流れはみんな同じなんだ。だけど、どんな時間を大事にするかは、みんな同じじゃないんだよ」

「ふぅん。お兄ちゃんはどんな時間が大事?」

アラシはにやりと笑います。

「そりゃあ、決まってる」

そう言って、熱々のコーヒーを二つ、それにスノーボールクッキーをテーブルに運んできました。

「さあ、食べよう。一緒にゆったりとね」

日差しに白く浮き上がるコーヒーの湯気をみつめながら、ナギはクッキーを食べます。
クッキーが全部なくなる頃、『なるほど、これは心地のいいものだ』と、口についた粉砂糖を舐めながら思ったのでした。
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