21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

文字の大きさ
120 / 120
第7章 ペンタグラム

第120話 ウォルフ兄弟

しおりを挟む
「ウォルフ兄弟?……」
 俺がそう呟くとエリンが口を開く。
「小さな男がコレル、大きい方がダレン、ペンタグラムの犯罪者を処刑する執行人、魔法が使えるペンタグラム人に特化した者達……」
「執行人……」

 感情を表に出さないエリンのその声に感情が込められているのを感じ只事ではないと感じる。

「この水路を通るものは誰であれ処刑していいと言われている」
 エリンからコレルと言われた小さな男が口を開く。

「私達はここを通る必要がある!」

 エリンはそう言うと口元が小さく動くのが見える、魔法? そう思った瞬間エリンの近くにスイカほどの大きさの火球が出現し、ウォルフ兄弟に向けて飛んでいく。

 コレルは動じもせず、その場を動くことはない、ダレンと呼ばれる頭を剃りあげた熊のような大男が火球を拳で殴りつけると火球はその場で爆発をする。

 ダレンが口を開く。

「僕がやってもいい?お兄ちゃん」
「ああ、いいとも。だけどあんまり汚すなよ」
 ダレンは俺の方を見てニヤリと笑って、左右の拳をぶつけ合う、拳からはカチンカチンと金属音が聞こえ、拳には虹色に輝く鉄製の拳当てがされている。

「それじゃいくよー」
 ダレンはそう言った瞬間に俺の懐に潜り込み、右の拳を振り上げ、拳が俺の頬をかすめ後ろの壁に当たる。

 壁は爆発したかのような音をたて大きな穴が空く。

 あいつワザと外しやがった……あのガタイであの身のこなし……魔法の力か……
 ペキペキと空気のが凍る音が聞こえ、エリンの方に目をやると、大きなツララが4本エリンの周囲に浮かんでいる。

 そしてそのツララが一気にそのダレンに襲いかかる。

 ボン、ボン、ボン、ボンという音ともにダレンは拳でそれらを迎撃する。そして俺にしてみせたようにエリンに一気に間合いを詰め、体を傾けその拳はエリンの腹部を確実に狙っている。

 咄嗟に剣を抜き、ダレン目掛けて突きを放つ。

 ダレンの拳と剣先がぶつかり合って、火花が飛びカーンという甲高い音が響く。

 ダレンはエリンに狙いを付けた拳を方向転換させ剣先真っ正面から殴り迎撃したのだ。

 力負けしクン!と剣先が上を向いた瞬間にダレンは俺の懐に潜り込む。

 怒りの表情を見せたダレンはこう呟く。
「久しぶりに女の子のお腹が殴れると思ったのに!」
 そして言い終わる直前に俺の顔面に狙いを付けた拳を放つ。

 そのままダレンの体幹を蹴り後方に跳ぶ、奴の拳が鼻先で止まった。

 その瞬間、ダレンの足元から火柱が上がる。
 ダレンの体は一瞬で炎に包まれたが、すぐにその火は消え、カンカンと両手の拳を合わせる音が響く。

「この程度じゃ僕の体は傷一つ付かないよ」

 ダレンは俺を興味津々といった感じで見ており、俺に話し掛ける。
「君、剣を使うんだぁ」
「その身体、魔法か……」
「僕、魔法で筋力を強化してるんだ。どうしても人を殴り殺す感覚が忘れられ無くてねぇ。剣を使う人間は殺すのは久しぶりだなぁ」

 エリンの攻撃で分かったのだが、ダレンには恐らく魔法障壁がない、その代わりに、 魔法で強化された筋肉は鎧の様な役割をも果たしているのだろう。

 エリンは私が戦うという感じで一歩前に出ようとする、俺はそれを手でそれを止め自分が戦うという意思表示を見せる。

 こいつらは魔法が使える奴ら前提の戦いには慣れているが俺のような剣士とは戦ったことはないはず……勝機ならそこにあるはず

「ダレン、手を貸そうか?」
 コレルがそう言うと「大丈夫だよ、兄ちゃん次は本気でやるから」と言いい、
「剣使いくんと戦うほうが、面白そうだから君から先に殺すね。僕はさ美味しいものは真っ先に食べるんだ!」
 一瞬で間合いを詰めると目の前に、拳の壁が現れる。そうこれは高速でのパンチのラッシュが拳の壁を作っているのだ、その壁に瞬時に飲み込まれる。

 拳が俺の目の前や胸、腹の皮膚のほんの少しの先を通過する。

 そして、ボボボボボボボボボボという空気を斬る音だけが虚しく響く。

 そうただの一発も俺の身体にその拳が触れることはない。

 数秒のラッシュが終わるとダレンは狼狽し叫ぶ。
「なんで!!なんで一発もあたらない!!」

「俺はお前より速い剣を知っている! 20代剣聖の剣はお前より遥かに速くそして強い!!」
「ほざけ!!!」

 怒りに任せた大ぶりの一撃をかわし俺は剣を振るいながら通り過ぎる。

 チン!

 ダレンの体を撫でる様に振るった剣を俺は鞘に納める。
「なんだそれなんにも効いてけど」
 ダレンはそう言って背後から襲い掛かる。

 ドサッと言う音ともにダレンはその場で全身の力が抜けたように倒れ込む。

「……どうして?身体が動かない……」
「筋肉と筋肉を繋ぐ腱を切った。お前は動くことはできない」
「くそ!くそ!くそ!兄ちゃん助けてー」
 そう言ったダレンの体は激しく燃え上がる。

「ど……して……にいちゃん」
 ダレンはそう言って真っ黒になり動かなくなる。

「すまんなダレン動けないものは必要ない」
 コレルは動かなくなったダレンだったものを冷ややかな視線で見つめながらそう言った。
しおりを挟む
感想 6

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

アイギス
2022.05.06 アイギス

面白かったので続話希望です

解除
アイギス
2022.05.06 アイギス

そろそろ次話が読みたいです

解除
さんしろう
2019.05.31 さんしろう

剣では勝てないものがいることをおもいしるイベントか
どうせ負けたところで
「そんな約束してない」とか「自分の子供を売る人でなしは雇えない」とか言われて詰んでるのに
分かっててもすがるしかなかったのか

2019.05.31 ぽいづん

感想ありがとうございます。

パックの親父さんはあの事件のあとイヴァンの親父が言い触らして完全に仕事が無い状態が2年続いて、色々と負い目に感じていることもあったんだと思います。
目の前に餌をぶら下げられて、正常な判断力も無くなっていたんでしょう。


解除

あなたにおすすめの小説

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。