転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん

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第2章 王位継承

第15話 円卓会議

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 グレンさんも慌てた様子で駆けつけてきて、国王陛下の亡きがらを前に、ただ立ち尽くしている。 
 そこに、ドカドカという足音が響き、大きなドアが開く、金色のひげに左頬におおきな傷の入った男が、不躾に入ってくるなり、開口一番
「騎士団長フロイト名において、元老院円卓会議の開催を進言いたす」
 と大声で言いい、その場にいた全員の視線が集まる。

 この国では、王を補佐する元老院というものがあり、一定の力がある公爵などの貴族から構成されている、円卓会議とは国の重要なことをきめるときに元老院の伯爵たちが円卓を囲んで決める会議であると、グレンさんから以前に説明を受け、グレンさんもその元老院の一人であるとも言っていた。

 グレンさんが、怒りもあらわに
「国王陛下の亡きがらを前に、喪にも服さず、失礼ではないか!大体、おぬしは元老院ではなかろうに」

 やせ型の神経質そうな男が口を挟む
「いや、フロイトの言うことはもっともだ、私バルバドスが、元老院円卓会議の開催を進言致す」
「バルバドス公まで…だいたい、国王陛下の御遺志は、ソルフィン第3王子が後を継ぐといったはずではないか」
 バルバドス公が話をつづける。
「グレン公よ、まだ10歳のとしはもいかぬ、子供にまつりごとははやすぎるのではないか?そうだろ皆の衆」
 その場にいた王族たちは、顔をみあわせ、うなづいたりしている。

 ソルフィン殿下は涙を拭き、すっと立ち上がり
「私が、亡き父の後を継ぎ、ザナビル王国13代国王に即位します」
 そこには私と遊んでいたような子供の姿はなく、一人の一国王としての威厳があった。

 するとその場にいたものから拍手が巻き起こった。
 苦虫をつぶしたような顔のバルバドス公とコフィン殿下、しかしフロイトだけは悠然と立ち、一緒に拍手をしている。
「ふふふ、なかなか立派になりましたな、ソルフィン殿下、今は亡き陛下もさぞお喜びのことでしょう」
 グレンさんの怒りは収まらないようで
「陛下の御遺志に、ケチをつけるなど、言語道断!いますぐこの場からされ!」

「バルバドス公、コフィン殿下、グレン公もこうおしゃってますので、いったん退場いたしましょう」
 フロイトがそういと、3人はその場を後にした。

 グレンさんが私の近くに寄ってきて話す
「ソルフィン殿下のおかげで、こちらが有利になった、しかしまだ予断はゆるさぬ、元老院を構成する公爵はバルバドス派が優位、まだ多数派工作がすんでおらぬ」
「わかっています、ソルフィン殿下のお命が今が一番危険ですね」
「ああ、しっかり頼む、今ソルフィン殿下になにかあれば、あやつらに付け入る隙を与えてしまうことになる」
「わかりました」

 グレン公がソルフィン殿下になにやら話をしている。
 その話が終わり、グレン公が話をする
「これより、国王の葬儀のための準備にはいる、皆の衆とりかかってくれ」
 部屋にいた王族たちは、それぞれ寝室を後にする。

 私とフリージアさん、ソルフィン殿下は、殿下の自室に戻る。
 バタンとベッドに横になるソルフィン殿下
「あっ」
 声を掛けようとするフリージアさんを私は制止し、首を横に振る。
 私の表情をみて、フリージアさんも察したようで、そのまま時が過ぎる。
 廊下を走る音が聞こえる。

 ガチャっとドアが開くとグレンさんが慌てた様子で、口を開く。
「やられた!きゃつらめ、今晩円卓会議を開くと通達がきおった」
「なんでですか?あの時はそのまま引き下がったでないですか?」
「うむ、あのあとバルバドス公が元老院の長、トリスタム卿を説得したようじゃ」
「しかし、今晩とは…喪が明けてからというのが通例では?」

 グレンさんは悔しそうな顔で続ける。
「うむ、普通はそうなのじゃが、王の不在期間が長く、諸外国にも王の威光をしめさねばならないということと、病にふせて、王は混乱状態であったので正しい判断ができていないという理由で円卓会議によって世継ぎをきめるとした」

「だからフロイトさんは、あんなに余裕があったんですね」
「そこでじゃ、円卓会議にソルフィン殿下も出席してもらい、王にふさわしい器かみてもらおうとおもうてな」

「ええ、さっきはほんとに見事な立ち回りでした、あれをみれば、満場一致で王に推挙されるでしょう」
「しかし、殿下の様子はどうじゃ?」

「少し寝ています、無理もありません」
「そうじゃな、まだ10歳の子供じゃからな」
「それでは、殿下を頼む、円卓会議が始まる前に呼びに来る」
「わかりました、それまでゆっくりと休んでもらいます」

 グレンさんは足早に去っていく、それを見送り殿下の部屋に戻る。
 フリージアさんが殿下に付きっきりで見守っている。
「変わりましょうか?」
 フリージアさんは首を横に振る。
「そうですか、それでは私は遅い朝食をとってきます」
 私は部屋をあとにし、食堂に向かう。

 食堂のドアをあけると、いい匂いが漂ってきている。
 そうかもうすぐお昼か、なら少し待つか…

 20分ほど待っていると、食事が出来上がりワゴンに乗せられていく
「すいません、ソルフィン殿下の部屋にもっていきたいのですが」
「わかりました」
 給仕係から3人分の食事が乗ったワゴンをもらい、殿下の部屋まで運ぶ。

 部屋のドアをあけると、殿下は起き上がっており、ベッドに座っている。
「殿下、何か食べませんと」
 フリージアさんが食事を勧めるが、首を横に振る。
 フリージアさんは困ったような表情をしている。

「こら、国王様が女の人にこんな顔をさせちゃだめだよ」
 するとフリージアさんはむっとしたような表情で
「そんな顔していません」
「いーやしてた」
 私はフリージアさんの顔真似をする。
 するとそのやり取りを静かにみていた、殿下は少しだけ笑った
「わかった、食べるよ…」

 そういうと私は殿下にパンとスープを渡した。
「このパンはほんとやわらかいですよね、うちのギルドの前のパンは石でしたよ」
「え?石を食べてたの?」
「ええ、ほんとに石でしたよ」

 フリージアさんが無表情でツッコミをいれる
「そんなわけないでしょ」
「だよねぇ」
 フリージアさんとのやり取りのなかで、殿下もいつもの子供らしい笑顔が大分戻ってきた
「外出できなくなちゃったね」
「大丈夫ですよ、私は騎士です必ず約束は果たします」
「わかった、約束だからね」
「はい」

 大分陽が傾き、空を赤く染めるような頃にグレンさんがやってきた。
「それでは殿下、円卓会議へ」
「ああ、レクシアとフリージア一緒に来てほしい」

「え?私が?」
「…」
 殿下の不意打ちに二人で顔を見合わせる。
「うん、僕のお付きであれば、いけるでしょグレン」

 グレンさんは少し驚いたような顔をして
「ええ、まあ、お二人にに発言権はありませんが」
「だって、それじゃ行こう」

 4人で円卓会議が行われる、大広間に向かった。

 宮殿の中央部に大きな円卓がおかれ、その後ろに獅子の装飾のある大きな椅子、玉座があり、あらたな主を待っているかのように見えた。

 円卓の周りに椅子が11脚おかれ、それぞれが席につく。
 玉座に近い椅子に、白く長いひげを蓄えた、痩せている老人が座る、みなその老人挨拶をし座っていく。
 老人の左隣がバルバドス公、右隣がグレン公と座る場所で力関係の序列がある。

 玉座の前の席に座る老人が、元老院の長であるトリスタム卿であろう。

 ソルフィン殿下は円卓にはつかず、離れた場所で座っており、私たちもソルフィン殿下の後ろに座っている。


 玉座側に座っている、トリスタム卿が話し出した。
「我が王が今朝亡くなられた、本来ならば喪に服すべきところではあるが、世継には第3王子のソルフィン殿下を迎えよと陛下のご遺志であられた…がしかし陛下は臨終の混乱の中、正しい選択ができなかったともいえる。よって王が円卓会議で選定するのはどうかとバルバドス公より進言があった」

 バルバドス公が立ち上がり演説をする。
「我が兄、ガルシアは長い間床にふせ、正しい判断力を失っていた、その証拠に年端もいかぬ10歳の子供を王に推挙するなど、混乱の極み、王をなくし悲嘆にくれる臣民たちのためにも我々が正しい判断を下し、新しい王をきめようではないか」
 バルバドス公から左回りに順に口を開いた
「異議なし」
「異議なし」
 そうしてグレンさんの番になる。
「異議あり」

 トリスタム卿が口を開く
「ふむ、グレン公、その根拠は」
「はい、王は臨終間際においても、ソルフィン殿下を王にとおっしゃっており、その意志は常に変わらず、とても混乱しているようにはお見えしませんでした」
「しかし、10歳の子供を慣例にも従わず推挙するなど暴挙にもほどがあるぞ」
「それは、ソルフィン殿下に王の器があると、陛下が慧眼なさったのだ」
「ほう、王の器とな」
「はい、そのためにここにソルフィン殿下をお呼びしていたのです」
「ほう」
 するとバルバドス公が立ち上がり
「ならば私もコフィン殿下をお呼びしてますゆえ、二人のうちどちらが王の器があるのか競わせましょうぞ」
 トリスタム卿は目を細め
「ふむ、ならば二人の演説を聞きどちらが王にふさわしいか決めようではないか!」

 グレンさんはこちらをみて茫然としている。
 敵は初めからこの事態を狙っていたのかもしれない、いくらソルフィン殿下といえど、そこはまだ子供だ迫力ある演説などできるわけもない。子供の声というだけで不利なのだ。

 閉められていた扉があき、小太りの男が現れる、以前にみたコフィン殿下だ、そのままバルバドス公もとにいくと、円卓に座っていた全員が立ち上がり頭を下げる。
 私達もそれにならい立ち上がり一応礼をする。
 手を座るようにと合図をし、全員が着席する。
 トリスタム卿が口を開く
「それでは、コフィン殿下よろしくお願いたす」
「うむ、余がザナビル王国、第1王子にして、次期国王のコフィンである、みなのものよく聞け、」
 コフィン殿下は、低く貫禄を感じさせる声で演説をはじめた
「ーーよって、私が王になることがこの国にとって必要不可欠である!!」
 グレン公以外円卓を囲む公爵は、割れんばかりの拍手をしている。

 やられた…正直、コフィン殿下がここまでの演説をできる器があるとおもっていなかった。

 ソルフィン殿下は…姿が見えない…どこにいかれた?

 トリスタム卿が口を開く
「それではソルフィン殿下」
「わかりました!」

 声はするがその姿は円卓にはない。
 円卓の一同が騒然とする。

 玉座の方に目をやると、ソルフィン殿下は玉座に座っていた。
 そして座ったまま、ゆっくりと話し始める。
「今回の元老院の所作、私は本当に失望した、わが父の喪にも服さず、王を決めようとするその浅ましさ、本来ならばこのような狼藉は見逃せぬが、王も長い間床に臥せ、円卓会議にも出ることができなかったそれゆえ、今回のみは見逃そう」

 みなが絶句し、その王たる姿にひれ伏した。
 コフィン殿下、バルバドス公もその迫力に、気圧されたようで、何も言えずただ下を向くばかりであった。

 トリスタム卿が口を開いた
「王がきまりました、わが王はソルフィン殿下です。王よ度重なる非礼、本当に失礼いたしました」

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