転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん

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第2章 王位継承

第19話 流転

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 隠し通路の出口は、街はずれに繋がっていた。
 まだ夜は明けていなかったが、宮廷とは違い街は平然と静まり返っている。

「う、ううーん」
 殿下が目を覚まされ、手を伸ばしている。
「あれここは?」
 殿下をおぶったままフリージアさんが答える
「宮殿の外です」
「ちゃんと約束守りましたよ」
 私がそういうと殿下はすこし微笑んで
「うん、約束だったね、もういいよフリージア自分で歩く」
「しかし、コフィン殿下に痛めつけられたところは大丈夫ですか?」
「大丈夫、ちょっと眠れたし、ありがとう」
 ソルフィン殿下はフリージアさんの背中からおりて、歩き出す。

 半時間ほど歩くと、ホフナー商会の門が見えてくる、商会の門は固く閉ざされ、明かり一つない。
「ここは私に任せてください」
 そういって門に近寄ってノックをする。

 横の扉が開き、兵士の恰好をした門番が現れる。
「リディムさんに至急でお会いしたのですが、レクシアといえばわかります」
「わかりました、少々お待ちください」
 中の建物に明かりが灯り、リディムさん本人が着の身着のままで、扉から現れる。
「いったいどうした」
 そういって、殿下とフリージアさんを見ると事を察したようで
「すぐに中に入ってください」
 慌てた様子で中に入れてくれた。 

 建物に入ると、リディムさんが開口一番、ソルフィン殿下に哀悼の意を述べる
「殿下、この度は御父上の崩御、誠に痛みいります」
「ありがとう」

 きらびやかな装飾品に囲まれた、応接室に招かれ、私が事の顛末を説明をする。
 リディムさんは悔しさを浮かべ
「なんと、フロイトが…グレン公まで…」
「ええ、まさかあんな手に出るとは…」
「フロイトが裏で動いていたことは把握していました、しかしそれは元老院の多数派工作程度のものと…まさか謀反を起こすつもりだったとは…」

「最初からそのつもりで動いていたのでしょう、王家の分断の混乱に乗じて、謀反を起こすという」
「たしかに奴ならば、手足になって動くものだけを身近に置いておいたのでしょう」
「なるほど、騎士団長であればそれも可能と」
「ええ、宮廷の警備すべてが彼に一任されていましたから」

「それならば、反フロイト派もいるのでは?」
「ええ、彼に閑職においやられられたものや、辺境にとばされたものなどもおります」
「そうか、ならば、その者たちを集めることは可能ですか?」
「ええ、しかし宮廷騎士団が相手となると目立ったことはできないので…」

 リディムさん急に、ハッとしたような表情で
「それならば、ここも危ない、すぐに出られるように支度します」

「分かりました、お願いします、しかしどこかに行く当てがあるのですか?」
「ソルフィン殿下の姉で、隣国ポルトの王子と結婚したケフィア王女を頼りましょう」
「なるほど、それならばかくまってくれるかもしれない」
「すぐに手配しますのでしばしばお待ちを」
 リディムさんは慌てたようで部屋からでていき、使用人たちに指示を出している。

 窓の外をみるが、まだ騎士や兵士の姿は見えない、まだ宮殿にいるのかそれとも…

 半時間ほど待っていると、リディムさんがまだ若い青年を一人連れてきて紹介をする。

「使用人のヤングだ、ポルト王国まで3人をお連れする」
「ヤングです、馬車で3日ほどかかりますのでよろしくお願いします」
 3人で挨拶をする。
「よろしくお願いします」

 建物の正面にまわると荷馬車が用意してあり、人間が入れそうな木箱が山のように積まれている。
 ヤングさんが申し訳なさそうに口を開く。
「すいません、狭いでしょうが見つかると大変なので、この木箱の中に入ってください」
「いえ、大丈夫です、ありがとうございます」
 3つの木箱にそれぞれ入る。
「では、行きます」
 荷馬車が揺れ始めた。

 門が開く音がする
 隙間から木箱の隙間から外を見ると、カチャカチャと甲冑を鳴らし、騎士たちが数名商会の門の前に集まっている。
 とくに馬車に気を付ける様子もなくそのまま通り過ぎた。

 あまり速度をあげすぎるのも怪しまれるとのことから、比較的のんびりした速度で馬車は進んでいる。
 空が白んできており、夜が明けてきてる。

 街のはずれについたとき、馬車が止まり、ヤングさんと誰かが話している声が聞こえてきた。
「そこの馬車、荷物をしらべさせてもらう」
「なにかあったんですか?」
「ああ、宮殿でコフィン殿下や公爵たちを殺害し、ソルフィン殿下を誘拐したものが逃げた」
「ええ!そりゃ大変だ」
「だからここで通るものを、調べておるのだ」
「でも、宮廷騎士団はなにやってたんですかね?護衛するのが仕事でしょ?」
「なんでも侍従として雇われたものたちの中に、他国の間者がまぎれておったらしい、この荷物はなんだ?」
「ポルトに運ぶワインですよ、ケフィア様がどうしても飲みたいとおっしゃってるようで、急いで運んでいるんです」
 ヤングさんと検問をしている兵士が話をしているあいだに別の兵士が、荷台にあがり、木の箱の一つを開ける。
 開けて中身を、ほかの兵士へ報告する。
「確かにワインです」
「そうか、それならいってよし、ケフィア様をまたせるなよ」
「ええ、ありがとうございます」
 また馬車はゆっくりと動き出す。

 半日ほど木箱の中で過ごすと、馬車が停止しヤングが荷台に上ってくる。
「ここまでくればもう安心です」
 そういうと木箱のふたを取ってくれる。
 そうしてヤングさんは再び運転席にもどり馬車が動き出す。

 3人で体を伸ばす。
 殿下をきづかって話しかける
「しかし、つかれますね」
「うん、でも楽しいよ、宮殿にいたらこんな体験できないから」
「たしかにそうですね」

 フリージアさんがボソッと呟く。
「殿下にはこんな体験させたくありませんでした」
「まあまあ、フリージアさんポルトまでの辛抱ですよ」
「ケフィア様か…」
「そういえば、どんなお方なんです?」

 ソルフィン殿下が穏やかな表情で口を開く。
「たしか、僕が5歳の時に、ポルトに行ったんだよね」
 フリージアさんが答える。
「ええ、そうです。殿下が5歳の時でした彼女は15歳でした。殿下とは腹違いの姉にあたりますが、フラム様のことを大変お慕いもうしておられたそうです、フラム様がなくられたあとは、ソルフィン殿下のことも大変可愛がれておりました」
「うん、覚えてるよ、優しいお姉さんだった」

「…政略結婚ですか」
 ーー政略結婚で思い出す、私とクレアとの婚約、いまはエイルと婚約をしたと聞いた、それ自体は仕方ないことだ…私がいなくなったのだ、ノーベル家にしても皇帝陛下にしてもノーベル家の人間と婚姻関係を結ぶことさえできればよかったのだから…ただ私は…エイルとの婚約を聞いたときに起こった感情の渦に飲み込まれそうになる…
 私の表情をみて殿下が気を使って声をかけてくれた。
「レクシアどうしたの?大丈夫?」
「いえ、ちょっと昔のことを思い出したもので、フリージアさん続けてください…」

「ええ、ザナビルとポルトは隣国同士で以前はいがみあってたけれど、国王陛下の時代になられてから、同盟関係なって、同盟をより強固なものにするため、ケフィア様が嫁がれたの」
「なるほど、そういうことがあったのですね」

「レクシアはポルトにいったことあるの?」
「ありますよ、3年ぐらい前に3カ月ほど住んでました」
「そうなんだ、なにしてたの?」
「剣聖ヨルドに師事してました」
「すごいあの伝説の?」
「ええ、そうです」

 ーー本来は1年いるはずだったのだが、3か月でもう教えることはないと追い出されてしまった、そのあたりからポルトとガレオンの関係も険悪になってきていたため、帰国命令もあり、それ以来ポルトに行くことはなかった。
 ヨルド様に会えば、フロイトと再び剣を交えることになった時の突破口を開けるかもしれない…


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