転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん

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終章 復讐の果て

第30話 終焉のプロローグ

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 古くなった漆喰の壁に囲まれた部屋の色褪せた木製の扉が開く、顎まで伸びたぼさぼさの黒髪で無精ひげ姿の男が、その部屋に慣れた様子で入ってくる。
 男の格好は、くたびれた革の上着に、麻のズボン、古めかした革のブーツを履いており、その辺のゴロツキと言っても差し障りがない。

 ガレオン帝国の帝都付近の空き家、彼がこの空き家に来て5回目の冬を迎えようとしていた。
 慣れた手つきで料理を作り、焼いたばかりの濃い味付けの腸詰を口に運び、安いワインを瓶のまま口に含む。


 家の外では、カチャカチャと甲冑を鳴らしながら、騎士たちが右に左にと忙しそうにしている。
 明日、ザナビルの王様が即位記念の外遊にくるとかなんとかで、街は警備のために騎士団が駆り出され、騒がしくなっている。

 その男は、そんなことは関係ないと言った感じで、食事を終え、仕事の準備に取り掛かる、彼の仕事は日雇いの用心棒、彼は剣の腕だけは確かだった。
 慣れた手つきで漆喰の壁に掛けられた剣を手にとり、鞘に巻きつけられた紐を腰に巻く。

家を出るころにはあたりはすっかり真っ暗くなっている、男は仕事場へ急ぐ、冬の訪れを感じさせるような北風が彼を包み、その身を震わせる。

半時間ほどあるくと、石造りの住宅の中古い木造の民家とういうには大きすぎる建物が現れる、その男がその建物の扉を開ける。
中は場末の酒場といった感じで、カウンターテーブルと、ホールには円卓が数個おかれている、
まだ開店してまもないというのに、数人の男達が、カウンターに座りタバコの煙をくぐもらせたり、木のジョッキを口にしたりしている。

カウンターにいる酒場のマスターが男をみて手を挙げる、男もそれに返事をする、そしてカウンターに行きマスターから銅貨1枚をもらう。
これがこの男の仕事、この酒場の用心棒である。
男がこの酒場の用心棒をするのには理由があった。

大分夜も更けてきたころ、真っ黒の詰襟の制服を着た男が2人の人間を連れて、この酒場に現れた、襟には星二つの襟章、左胸には鷹の紋章が輝きを放っている。もう一人の男もその男と同じ格好をしているが、階級が下なのであろうか、星一つの襟章である、そしてもう一人に人間は白く長いひげを蓄えた、腰の曲がった老人であった。
制服の男たちはこの酒場に週1回は必ず顔を出す。
しかしこの老人は用心棒の男が初めてみた男であった。

用心棒の男は制服の襟章星2つの男を特別な感情を抱きながら眺める、その男をここで斬り伏せることもたやすい。
しかし男はそれをしない、なぜならその制服の男が絶望の淵で後悔をむかえたときに、隠した牙で歯牙にかける日をまっているのだから…




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