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5.ウサコいなくなる
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ある朝、エミリオが目覚めると、布団の中でいつも寝ているウサコがいない。
「ウサコ、どこ?」
ベッドのウサコが寝ていた場所には、ウサコがつけていた僕のエンブレムのついた首輪だけが残されていた。
僕は悪い予感がして、寝室中、王宮中をナイセルと探した。
でも、ウサコはどこを探しても、見つからなかった。
昨日、夜ベットで寝る時に、
(エミリオ、私の身体が何だかおかしいの。
手足に力が入らない。
私どうしたのかしら?)
その言ってウサコは、グッタリしていた。
でも、もう夜中だからと、僕は寝ている侍医を起こして、ウサコを見てもらうことを躊躇った。
いくら優秀な侍医でも、ウサギは専門外だろうし、夜中に呼ばれたのが、ウサギのためだったと知ったら、不審がられる。
せめて翌朝にと思っていたのが、良くなかったのか。
僕は青ざめて、項垂れた。
後悔の思いが募る。
どうして、夜中だと気にして、翌朝にしてしまったのか。
翌朝にするなら、せめて寝ないで見ていてあげれば良かった。
だとしても、忽然と姿を消すのは、どうしてだろう?
力が入らないと言っていたウサコが、自ら部屋を抜け出すことは不可能だ。
そもそも、元気な時だって、ドアを自分では開けられなかったのだから。
誰かが忍び込んで、僕と寝ているベッドから、ウサコだけ連れ出す?
わざわざ、僕がつけた首輪を外して。
さすがに、そんなことをしていたら、僕だって目覚めただろう。
あの日から、僕はワインを飲むのをやめているから、酔いのせいで眠りが深過ぎることはないのだ。
「これだけ探してもいないとなると、もう出て来ないんじゃ?」
僕と共に一日中ウサコを探し、疲れきったナイセルが、諦めの表情をする。
ナイセルは、以前僕にワインを飲ませた従者を探して、王宮中を探しているから、僕が知らなかった王宮のありとあらゆるところを教えてくれた。
前回も一緒に探してくれた家臣達を引き連れて、こうやって探してくれたのだろう。
僕はその時のナイセルの苦労を身をもって体験した。
その時のナイセルの悔しい思いも。
「そうかもな…。」
僕は、立っていることもつらいほど疲れて、力が抜けた。
ウサコは小さいから、探すのは下方向が多い。
中腰や四つん這いで、細い隙間など、あらゆる場所を覗いたのだ。
これだけ探しても、モフモフの毛や想像したくないけれど、血の痕跡それすらなかった。
その夜、僕は失意のまま一人冷たいベッドで寝て、翌朝やっぱりいない空のベッドに涙した。
僕は無意識にベッドの半分までしか使わないようになっていた。
ウサコを潰してしまったら困るから、ウサコの場所を空けて寝ていて、いなくなったとして、すぐに癖は治らない。
ウサコ、今どうしているの?
せめて一人きりで、お腹が空いて、悲しんでいなければいいのだけれど。
気がついたら僕は、ウサコが喜ぶチーズはどれだろうとか、今度どこに連れて行こうかとか、ウサコと過ごすことが前提の毎日を送っていた。
だから、こうやっていざ一人になってしまうと、何をすればいいのかわからない。
ウサコがいないのに、楽しいことなんて、何もない。
僕は正真正銘の抜け殻だった。
「なぁ、ナイセル、もう一度あのワインを飲んだら、ウサコに会えるかなぁ。
あのワインどこにあるんだろう。
僕はもう一度意識を失うとしても、ウサコに会いたい。」
「エミリオ様、すみません。
あの者は全く見つかりません。」
「ごめん、ナイセルに八つ当たりした。
ナイセルのせいじゃない。
それにもう一度ワインを飲んだとしても、ウサギと話せたとして、ウサコで無ければ意味がないんだ。
ただ僕は…。」
ウサギに恋をした僕は、あっと言う間に失恋したみたいだ。
初めてのウサコとの恋は楽しかったし、初めての失恋は胸がこんなに苦しいんだね。
ウサコと出会えて、少なくとも僕は、恋を知らない男ではなくなった。
すべてウサコのおかげだね。
つらいけれど、ウサコに出会えたことは、幸せだったよ。
それから、数日後、頼みがあると王である父に呼ばれた。
「エミリオ、最近元気がないと聞き及んでいるが、セイルズ王国の王女が遊学の途中で立ち寄るそうだ。
本来ならば、そのような外交は第一王子の役割なんだが、今は妃と旅行に行っているから、代わりにもてなしてやってほしい。」
「ああ、はい。」
僕はその頃、ウサコをなくした喪失感で、すべてがどうでもいいと思っていた。
心を無にして、その王女をもてなせばいいんだろ。
王に言われたら、外交だろうとなんだってやるし、どうとでもなれと思っていた。
「エミリオ様、セイルズ王国は魔法が盛んだと聞いております。
もしかしたら、あの時のウサギが話せたのも、魔法が関係していたのかもしれません。
ワインもウサギも明らかに、痕跡を残さずにいなくなりすぎています。
その王女様に、それらのことが魔法と関連があるのか、尋ねてみたらいかがでしょうか?」
ナイセルは、ワインの事件で逃走した従者を、まだ調べ続けていて、今は、魔法の可能性を探っている。
「僕がウサギと話せたと、打ち明けるのかい?
まぁ、僕はその王女にどう思われても、どうでもいいか。
どうせすぐにその王女も立ち去るだろうしね。」
「僕はワインのことがあるので、是非ともその方に今回のことを伺ってみたい。」
ナイセルは、秘密を打ち明けたとしても、調べようとしている。
「ナイセルは、大変な思いをしたんだ。
気になるのならば、そうすればいい。」
「はい。
ぜひそうさせていただきます。」
魔法か。
ワインについては、案外そうなのかもしれない。
逆にそうでなければ、辻褄が合わない。
僕がウサコに恋したこともすべて。
もし、もう二度とウサコに会えないとしたら、魔法を使って、僕のこのウサコとの思い出すべてを消し去ってほしい。
そうしたら僕は、もう戻らないウサコを思って、苦しまないで済むのに。
僕は相変わらず無気力のまま、王女をもてなすその日を迎えた。
「ウサコ、どこ?」
ベッドのウサコが寝ていた場所には、ウサコがつけていた僕のエンブレムのついた首輪だけが残されていた。
僕は悪い予感がして、寝室中、王宮中をナイセルと探した。
でも、ウサコはどこを探しても、見つからなかった。
昨日、夜ベットで寝る時に、
(エミリオ、私の身体が何だかおかしいの。
手足に力が入らない。
私どうしたのかしら?)
その言ってウサコは、グッタリしていた。
でも、もう夜中だからと、僕は寝ている侍医を起こして、ウサコを見てもらうことを躊躇った。
いくら優秀な侍医でも、ウサギは専門外だろうし、夜中に呼ばれたのが、ウサギのためだったと知ったら、不審がられる。
せめて翌朝にと思っていたのが、良くなかったのか。
僕は青ざめて、項垂れた。
後悔の思いが募る。
どうして、夜中だと気にして、翌朝にしてしまったのか。
翌朝にするなら、せめて寝ないで見ていてあげれば良かった。
だとしても、忽然と姿を消すのは、どうしてだろう?
力が入らないと言っていたウサコが、自ら部屋を抜け出すことは不可能だ。
そもそも、元気な時だって、ドアを自分では開けられなかったのだから。
誰かが忍び込んで、僕と寝ているベッドから、ウサコだけ連れ出す?
わざわざ、僕がつけた首輪を外して。
さすがに、そんなことをしていたら、僕だって目覚めただろう。
あの日から、僕はワインを飲むのをやめているから、酔いのせいで眠りが深過ぎることはないのだ。
「これだけ探してもいないとなると、もう出て来ないんじゃ?」
僕と共に一日中ウサコを探し、疲れきったナイセルが、諦めの表情をする。
ナイセルは、以前僕にワインを飲ませた従者を探して、王宮中を探しているから、僕が知らなかった王宮のありとあらゆるところを教えてくれた。
前回も一緒に探してくれた家臣達を引き連れて、こうやって探してくれたのだろう。
僕はその時のナイセルの苦労を身をもって体験した。
その時のナイセルの悔しい思いも。
「そうかもな…。」
僕は、立っていることもつらいほど疲れて、力が抜けた。
ウサコは小さいから、探すのは下方向が多い。
中腰や四つん這いで、細い隙間など、あらゆる場所を覗いたのだ。
これだけ探しても、モフモフの毛や想像したくないけれど、血の痕跡それすらなかった。
その夜、僕は失意のまま一人冷たいベッドで寝て、翌朝やっぱりいない空のベッドに涙した。
僕は無意識にベッドの半分までしか使わないようになっていた。
ウサコを潰してしまったら困るから、ウサコの場所を空けて寝ていて、いなくなったとして、すぐに癖は治らない。
ウサコ、今どうしているの?
せめて一人きりで、お腹が空いて、悲しんでいなければいいのだけれど。
気がついたら僕は、ウサコが喜ぶチーズはどれだろうとか、今度どこに連れて行こうかとか、ウサコと過ごすことが前提の毎日を送っていた。
だから、こうやっていざ一人になってしまうと、何をすればいいのかわからない。
ウサコがいないのに、楽しいことなんて、何もない。
僕は正真正銘の抜け殻だった。
「なぁ、ナイセル、もう一度あのワインを飲んだら、ウサコに会えるかなぁ。
あのワインどこにあるんだろう。
僕はもう一度意識を失うとしても、ウサコに会いたい。」
「エミリオ様、すみません。
あの者は全く見つかりません。」
「ごめん、ナイセルに八つ当たりした。
ナイセルのせいじゃない。
それにもう一度ワインを飲んだとしても、ウサギと話せたとして、ウサコで無ければ意味がないんだ。
ただ僕は…。」
ウサギに恋をした僕は、あっと言う間に失恋したみたいだ。
初めてのウサコとの恋は楽しかったし、初めての失恋は胸がこんなに苦しいんだね。
ウサコと出会えて、少なくとも僕は、恋を知らない男ではなくなった。
すべてウサコのおかげだね。
つらいけれど、ウサコに出会えたことは、幸せだったよ。
それから、数日後、頼みがあると王である父に呼ばれた。
「エミリオ、最近元気がないと聞き及んでいるが、セイルズ王国の王女が遊学の途中で立ち寄るそうだ。
本来ならば、そのような外交は第一王子の役割なんだが、今は妃と旅行に行っているから、代わりにもてなしてやってほしい。」
「ああ、はい。」
僕はその頃、ウサコをなくした喪失感で、すべてがどうでもいいと思っていた。
心を無にして、その王女をもてなせばいいんだろ。
王に言われたら、外交だろうとなんだってやるし、どうとでもなれと思っていた。
「エミリオ様、セイルズ王国は魔法が盛んだと聞いております。
もしかしたら、あの時のウサギが話せたのも、魔法が関係していたのかもしれません。
ワインもウサギも明らかに、痕跡を残さずにいなくなりすぎています。
その王女様に、それらのことが魔法と関連があるのか、尋ねてみたらいかがでしょうか?」
ナイセルは、ワインの事件で逃走した従者を、まだ調べ続けていて、今は、魔法の可能性を探っている。
「僕がウサギと話せたと、打ち明けるのかい?
まぁ、僕はその王女にどう思われても、どうでもいいか。
どうせすぐにその王女も立ち去るだろうしね。」
「僕はワインのことがあるので、是非ともその方に今回のことを伺ってみたい。」
ナイセルは、秘密を打ち明けたとしても、調べようとしている。
「ナイセルは、大変な思いをしたんだ。
気になるのならば、そうすればいい。」
「はい。
ぜひそうさせていただきます。」
魔法か。
ワインについては、案外そうなのかもしれない。
逆にそうでなければ、辻褄が合わない。
僕がウサコに恋したこともすべて。
もし、もう二度とウサコに会えないとしたら、魔法を使って、僕のこのウサコとの思い出すべてを消し去ってほしい。
そうしたら僕は、もう戻らないウサコを思って、苦しまないで済むのに。
僕は相変わらず無気力のまま、王女をもてなすその日を迎えた。
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