あなたが幸せになるために

月山 歩

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12.新しい仕事

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 モリスの希望で住みだしたこの街は、昼間は寝ている人が多く、夜にやっている店の方が多かった。

 なのでオーレリアは、再び料理を作る裏方の仕事を探すことにする。

 そして、すぐに働き出したお店は、前に勤めていた食堂と違い、店の表部分は、美しく着飾った女性達が、お客の男性とお酒を飲んだり、食事をするところだった。

 けれども、オーレリアは後ろの厨房で、料理を作っているので、前のお仕事と内容はそれほど変わっておらず、すぐに馴染むことができた。

 店の店主の女性は、働き出してからずっと「厨房に引っ込むなんてもったいない。」
「あなたならいくらでも稼げる。」と、私を説得しようとする。

「リア、綺麗なドレスを着て、今日は店に出てみない?
 あなたなら、この店の一番人気になれるのに。
 もったいない。」

「モリスがいますので、浮気はしたくないんです。」

「あんな、遊んでばっかりの男のどこがいいのよ。
 信じられないわ。

 さっさと別れて、もっと、リアを大切にしてくれる男と結婚しなさいよ。」

「いえ、私はモリスが大好きなので。」

「もう、惚れた女には、何を言っても無駄ね。」

「すみません。」

 今日もモリスのおかげで、断る口実ができた。

 夫がいるというと、夜の街でも男性への接客を断ることができるし、男性はすぐに諦めの表情を浮かべるし、誘いもなくなるからとても助かる。

「あなた達は本当に夫婦仲がいいのね。
 もう、しつこく接客を勧めないから、安心して。

 だって、リアの作る料理は、顔を出さなくてもすでにお客様の心を掴んでいるの。

 料理を食べるとほっこりするみたいで、店に来る男達のリピート率が上がっているのよ。

 ウチの子達の接客とリアの料理の相乗効果って言うのか、離れられないって言われているのよ。
 ウチの店から。

 だから、あなたはずっとここで働いてね。」

「ありがとうございます。」

 モリスは夜、理想の王子様を探して飲み歩くため、周りには新婚の妻を置いて歩く悪い夫と思われている。

 でも、実際は私にとって、最高のパートナーだった。

 苦手な男性を相手にする仕事も、興味がないのに、しつこく話しかけてくる男性も、跳ね除ける役割になっていて、むしろ、私ばかりいい思いをして、モリスは嫌な思いをしているのではないかと、不安になる。

 家でモリスとくつろいでいる時に、そっときり出した。

「モリスは私がいたら、浮気夫って言われて、理想の王子様探しのマイナスにならない?」

「何を言ってるの。
 私を理解してくれる人を探しているんだから、私の説明を聞いても、そんなこと言う人は私の王子様じゃないわ。」

 モリスは、不安げな私に対し、はっきりと言いきる。

「モリスはぶれないね。
 ありがとう、安心したわ。
 だって、私はいつもあなたの悪口を言われて、反対に私は可哀想って思われて、心の中で申し訳ないって思っているの。」

「いいのよ。
 そのために夫婦を装っているんだもの。
 最初からわかっていることだわ。

 でも本当に、リアは見た目だけじゃなく、性格もかわいいのね。
 私が男だったら、離さないのに。
 いつも、私の立場を気にしてくれるのね。

 私はそんなことは、どうでも良いって思っているの。

 それより、私にとって大切なのは、恋人を作ることなの。

 私だって、なかなか王子様に会えなくて、凹む時もあるわ。

 でも、心に蓋をして生きるのが、嫌だからここに来た。
 そう考えれば、今の自分に悔いはないの。」

「ありがとう。
 モリスに素敵な彼ができてほしいと心から思っているの。

 私も一緒になって、モリスの良いところをみんなに説明して歩きたいくらい。」

「ふふ、そんなことをしたら、この夫婦はどうなっているんだって、みんな混乱するわ。」

「そうだね。
 それは無理か。」

「大丈夫。
 私は私で頑張るから。
 リアこそ変わらずなのね。」

「うん。
 私は変わらないわ。
 でも、好きな人のことを、ずっと好きでいることは、悔いはないの。

 ただ、新しい好きな人ができないだけ。」

「そっか、じゃあ、これからも仲良く暮らしましょ。」

「うん。」

 二人はいつの間にか、恋の話ができる親友になっていた。
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