愛され女は、秘されたギフトを惜しまない

月山 歩

文字の大きさ
7 / 22

7.裁縫の得意な少女

しおりを挟む
 ある時アリスは少女サーシャを伴い、王都のドレス工房に来ていた。

「初めまして、お伺いの約束をしています、アリス・カーティアと申します。」

「では2階へどうぞ。
 私はここの店主のロココよ。
 お話を聞くわ。」

 出迎えてくれたのはこちらの工房の代表である中年の細身の女性だった。

 2階に上がって、応接室に入ると早速少女を紹介する。

「この度はお時間を作っていただきありがとうございます。

 この子はサーシャと申します。この子をこちらで雇っていただけないかという相談がしたくて参りました。」

「よろしくお願いします。」

 そう言って少女は頭を下げる。

「あなたは何が得意なのかしら?」

「私の一番の得意は刺繍です。
 縫い物も一通りできますが、刺繍が一番自信があります。
 こちらです。」

 あらかじめ見てもらおうと、アリスと相談して、持ち込んだ刺繍をテーブルに広げる。

「まぁ、これを自分で。」

「はい、幼い頃から好きでやっています。
 こちらの工房ではドレスにたっぷりと刺繍をあしらうとアリスさんに聞いて、ここだったら、大好きな刺繍をめいいっぱいやらせてもらえるのではないかと思って。」

「なるほどね。
 服の中でも刺繍をふんだんにあしらうのはドレスが一番ですものね。
 あなたがここを選んだのは正解だわ。

 最初は見習いになるけど、それでもよかったら、明日から来てもいいわよ。」

「ありがとうございます。
 ぜひお願いします。」

「ではお時間いただいてありがとうございました。」

 そう言って、二人は工房を後にする。

 帰りの道中では、サーシャが興奮気味にアリスに話していた。

「アリスさん、ありがとう。
 まさか刺繍を活かせる仕事につけるなんて夢のようです。
 お針子になれるだけでも幸運なのに。

 それに、作品を持って行ってアピールすることも、アリスさんが提案してくれて本当によかった。
 こんなすぐに採用を決めてもらえるなんて。」

 そう言って踊り出しそうになりながら、サーシャは歩く。

「夢が叶って良かったわね。
 でも、これはあなたの努力と才能が認められた結果よ。

 ドレス作りは技術だけでなく、センスも必要だから、誰もができる仕事ではないのよ。        
 才能のあるお針子は工房でも貴重な人財なの。
 応援しているわ。」

「いつか、アリスさんにドレスを作りたいです。
 頭の中に私がデザインした刺繍をほどこしたドレスを着たアリスさんが、もういます。」

「うふふ、それは楽しみだわ。
 じゃあ、手芸屋さんに寄ってから、帰りましょう。
 刺繍糸を補充しなくちゃね。」

「アリスさん、いつもありがとう。」




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています

鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。 けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。 指示を出さない。 判断を奪わない。 必要以上に関わらない。 「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。 それなのに―― いつの間にか屋敷は落ち着き、 使用人たちは迷わなくなり、 人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。 誰かに依存しない。 誰かを支配しない。 それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。 必要とされなくてもいい。 役に立たなくてもいい。 それでも、ここにいていい。 これは、 「何もしない」ことで壊れなかった関係と、 「奪わない」ことで続いていった日常を描く、 静かでやさしい結婚生活の物語。

完結 殿下、婚姻前から愛人ですか? 

ヴァンドール
恋愛
婚姻前から愛人のいる王子に嫁げと王命が降る、執務は全て私達皆んなに押し付け、王子は今日も愛人と観劇ですか? どうぞお好きに。

図書館の堕天司書 ―私達も図書館から禁帯出です―

ふわふわ
恋愛
有能司書レリアンは、蔵書管理ログ不整合の責任を押し付けられ、王太子の判断で解任されてしまう。 だがその不祥事の原因は、無能な同僚テラシーの入力ミスだった。 解任されたレリアンが向かったのは、誰も使っていない最下層。 そこに山積みになっていた禁帯出蔵書を、一冊ずつ、ただ静かに確認し始める。 ――それだけだった。 だが、図書館の安定率は上昇する。 揺れは消え、事故はなくなり、百年ぶりの大拡張すら収束する。 やがて図書館は彼女を“常駐司書”として自動登録。 王太子が気づいたときには、 図書館はすでに「彼女を基準に」最適化されていた。 これは、追放でも復讐でもない。 有能な現場が、静かに世界の基準になる物語。 《常駐司書:最適》 --- もしアルファポリス向けにもう少し分かりやすくするなら、やや説明を足したバージョンも作れます。 煽り強めにしますか? それとも今の静かな完成形で行きますか?

処理中です...