愛され女は、秘されたギフトを惜しまない

月山 歩

文字の大きさ
21 / 22
結婚後

21.宝石店

しおりを挟む
 アリス達は、光輝く店内の宝石を眺めながら、奥の特別室に案内された。

 ここは王都で一番と呼ばれるほどの宝石店で、レイモンドがアリスへプレゼントする時はここのオーナーであるラウノが公爵家に宝石を持って訪問している。

 よって、この宝石店に直接、レイモンドが来るのは、初めてだった。

「急にお邪魔して悪かったね。」

「いえいえ、丁寧に先ぶれまでいただいて、感謝しております。
 まずは、ご結婚おめでとうございます。

 アリス様ですね。
 初めまして。
 会えて、光栄です。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。
 私はいつもレイにプレゼントされるばかりで、こちらで、お買い物したことはなかったわね。」

「はい、ぜひこれからはご贔屓にしていただけると、大変喜ばしく存じます。

 ところで、伺っていた相談とはどのようなお話でしょうか?」

「ああ、それがね。
 この者はカーラと言って、うちで働いていてくれた人なんだ。
 それで、内緒で、うちの宝石を磨いてくれていて、誤解されて、連行されてしまったんだ。

 ほら、僕が今までアリスに送った宝石は古いものだと、十年以上経った物もあるだろう。
 そのまま、保管しているのは、宝石が可哀想だってね。

 聞いてみると宝石をとても大切にする人だとわかったんだ。
 それで、どこか、宝石に関係する仕事を紹介してほしいと思ってね。」

「なるほど、でも、私どもが一番大切にするのは信頼と宝石を目利きする力なんです。

 それがないと、レイモンド様の御推薦でも、受け入れかねます。」

「信頼と言うなら、私のレイモンドからもらった宝石を彼女が何か悪いことをしたのなら、こちらへお渡しします。」

「アリス様の宝石は国宝クラスなので、もし、カーラさんが目利きの力があるなら、むしろ働いてもらって、いざと言う時、アリス様の宝石をいただくのも、正直悪くないです。」

 ラウノは商売人らしい、抜け目のない顔をみせた。

「私は絶対に悪いことはしません。
 アリス様に誓います。」

「そうですか、でしたら早速、目利きの力を試させていただきます。」

「はい、よろしくお願いします。」

 カーラはさらに真剣な顔つきになる。

 ラウノは奥から、宝石を10個ほど乗せたベルベットの箱を持って来て、三人の前に並べ、白い手袋をカーラに渡す。

「こちらをどうぞ。
 この宝石を偽物は左、本物は右に分けてください。」

 カーラは手袋を履いて、一個ずつ手に取って、宝石を見て、選別していく。

 その視線は、喜びに溢れている。

 それを見たアリスは、カーラは宝石を手に取って、見ることを楽しんでいる。

 だったら、大丈夫。
 そう思った。

「こうだと思います。」

 カーラの仕分けは左の偽物はたった一つで、残りはすべて本当であった。

 それを見たラウノはクックと笑い出した。

「すべて当たりです。
 ここは王都一の宝石店です。
 偽物なんて、ほぼないんですよ。
 カーラさんはどこで学んだのですか?」

「私は学んでいません。
 でも、本物は輝いて見えるんです。
 惹きつける力を感じます。」

「なるほど、最後にあなたがこの中で一番ほしいのは、どれですか?」

「私がほしいのは、この宝石です。
 でも、価値が一番高いのはこちらです。」

「カーラさん、あなた最高です。
 ほしいと言ったのは、昔、王妃が王にもらった中で、一番大切にしていたピンクダイヤモンドです。

 価値が高いのは、タンザナイトと言うもので、希少性が高いものです。
 でも、女性はダイヤモンドに一番愛を感じる方が多い。

 宝石商は、ただ美しいものを集めるのではなく、主に女性が欲しがるものを集めるのが、仕事です。
 あなたはそれがすでにできている。

 紹介すると言う話でしたが、こちらで、一緒に働きませんか?」

「ラウノさん、ありがとうございます。
 ぜひ、働かせてください。」

 カーラさんは、その後、宝石商として、多くの女性を虜にしていくこととなった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

完結 殿下、婚姻前から愛人ですか? 

ヴァンドール
恋愛
婚姻前から愛人のいる王子に嫁げと王命が降る、執務は全て私達皆んなに押し付け、王子は今日も愛人と観劇ですか? どうぞお好きに。

騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

楠ノ木雫
恋愛
 朝目が覚めたら、自分の隣に知らない男が寝ていた。  テレシアは、男爵令嬢でありつつも騎士団員の道を選び日々精進していた。 「お前との婚約は破棄だ」  ある日王城で開かれたガーデンパーティーの警備中婚約者に婚約破棄を言い出された。テレシアは承諾したが、それを目撃していた先輩方が見かねて城下町に連れていきお酒を奢った。そのせいでテレシアはべろんべろんに酔っ払い、次の日ベッドに一糸まとわぬ姿の自分と知らない男性が横たわっていた。朝の鍛錬の時間が迫っていたため眠っていた男性を放置して鍛錬場に向かったのだが、ちらりと見えた男性の服の一枚。それ、もしかして超エリート騎士団である近衛騎士団の制服では……!? ※3連休中は一日5話投稿。その後は毎日20時に一話投稿となります。 ※他の投稿サイトにも掲載しています。 ※この作品は短編を新たに作り直しました。設定などが変わっている部分があります。(旧題:無慈悲な悪魔の騎士団長に迫られて困ってます!〜下っ端騎士団員(男爵令嬢)クビの危機!〜)

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...