11 / 19
11.レオニーのしたくないこと
しおりを挟む
「アレシア様、あの女性はもう怒っていないんですね。
ありがとうございました。
さっきは、どうなることかと焦りました。」
後片付けをしていたレオニーが、安心したようすで、振り向く。
「少しお話を聞かせてもらったの。
そもそもドレスの色だけで女性を判断するような男性は、最初から内面を見ようという姿勢すらなかったのでしょうね。
そんな理不尽な態度を受ければ、誰だって傷つくわ。
その悔しさが、いつの間にかドレスそのものに向いてしまって、破局するドレスなんて呼ばれるようになったのかもしれない。
だから、心の痛みを癒してあげられれば、きっと過去に囚われずに、新しい恋に目を向けられると思うの。
そういう女性に丁寧にお話をしていけば、モナンジュに対する誤解も自然と消えていくはずよ。」
「アレシア様はいつも明るくて、前向きですね。
私はどうしてもお客様の嫌な話を聞くのは苦手です。
ただの愚痴なのは聞くまでもなく、わかっていますから。」
「そうね。
レオニーは資金繰りのこともそうだけど、こういう対応をするのが嫌で、モナンジュを閉じようと思っていたんだったわね。」
「はい。
そのドレスを選んだのはお客様で、私は押し付けたわけじゃないって、いつも言ってやりたくなるんです。」
「ふふ、そうね。」
「こっちは、悪趣味なドレスを作らされてるのに、わかってる?
って揺さぶってやりたくなります。」
「確かに。
お客様の望みのドレスがセンスを疑われるものでも、注文なら作らざるを得ないわね。」
「そうなんですよ。
それをこちらのせいにして、文句を言って来る人のなんと多いことか。
だから、最初から私達の作った完璧なドレスを黙って着なさいよって、言ってやりたくて、いつも爆発寸前で堪えているんです。」
「そうね。
言ったらせいせいするでしょうね。」
「はい、一瞬で後悔すると思いますけど…。」
レオニーは、しょんぼりと近くにある椅子に座る。
「大丈夫よ、今は私がいるわ。
私がその人達の相手をするから。
そのために私はここにいるのよ。
レオニーはドレス作りに専念して。」
「アレシア様に嫌な役回りを押し付けて、気がひけます。」
「そんなことはないの。
私にはドレスを作る技術もセンスもない。
だから、私はできることをしているだけなの。
お金を出すだけなら、私じゃなくてもできるわ。
私は私じゃないとできない仕事をして、みんなに必要とされたいの。
私は親切なだけじゃない。
多分、相当歪んでいるわ。」
「そんな。
アレシア様が歪んでいるだなんて。」
「ふふ、本当のことよ。」
「ここへ来た時、オフリー公爵様とうまくいっていないと言ってましたね。
それで、彼に求められたいと思って過ごされていたんですね。」
「そうね。
トラヴィス様だけにじゃないわ。
きっと小さな頃から、お父様にもどこかでそう思っていたんだと思うわ。
それは、もう無理だとわかっているけど。
その代わり、私には優しいお兄様がいて、トラヴィス様に背を向けられても、何とかやって来れたんだと思うの。
そして今は、トラヴィス様も私を少しは思ってくれていると感じるし、モナンジュもある。
とても幸せだわ。」
「良かったです。
でしたら私は、心置きなくアレシア様に甘えて、ドレス作りに専念しますね。」
「ええ、それぞれ得意なことをしましょう。」
「はい、愚痴を聞かなくていいなんて、気が楽です。」
「ふふ、私に任せて。」
私が明るくそう言うと、レオニーは元気を取り戻し、ドレス作りの生地を選び始める。
「でも、アレシア様、それでも腹が立ってどうしようもない時は私に押し付けてもいいです。
アレシア様にも限度ってものがありますよね?
そんな時は最終的にカーライルを呼びますか?
きっと、女性をメロメロにして、黙らせるはずです。」
「そうね、いつかお願いするかもしれないわ。
でも、私はね、この人は数ある知り合いの中から私を選んで話しに来てくれたって思うようにしてるの。
それは、きっと義姉の影響かもしれないわね。
彼女とは貴族の仮面を被ることなく、本音で話し合って来たから。
結局、わかりあうには、思っていることを伝わり易い言葉にして、伝えていくしかないと思っているの。
散々言葉を尽くしても分かり合えないこともある。
それでも、お互いどう思っているかだけは、知ることができるわ。
それに、私が前向きでいられるのは、トラヴィス様に振り向いてもらうために、できることは全部やってみた時期があったから。
何度もお出かけに誘ったり、二人きりで過ごす時間を作ったりあれこれ工夫したの。
好きだから、どうしても諦められなくてね。
でも、ある時ふともう私無理かもしれないって思って、離縁の覚悟を決めた。
このまま一人で立ち止まっていても、もう前には進めない、そう思えたの。
でも不思議なことに、自分が変わったら彼も変わって。
別れないって言われた時は、本当に驚いたけど、後からじわじわと嬉しさが込み上げてきたのよ。
ああ、私は彼にとって必要な存在だったのかもしれないって。」
「アレシア様良かったですね。
でも、アレシア様は少しも立ち止まっていないですよ。
常によくしようと動いている。
モナンジュに来てくれてありがとうございます。
今、ドレスを安心して作れるのは、アリシア様のおかげです。」
「ありがとう、レオニー。
私もこうしてやりがいを感じられる毎日を過ごせることに感謝しているの。
これからもよろしくね。」
「はい、これからも、女性を応援するドレスを一緒に作っていきましょう。」
ありがとうございました。
さっきは、どうなることかと焦りました。」
後片付けをしていたレオニーが、安心したようすで、振り向く。
「少しお話を聞かせてもらったの。
そもそもドレスの色だけで女性を判断するような男性は、最初から内面を見ようという姿勢すらなかったのでしょうね。
そんな理不尽な態度を受ければ、誰だって傷つくわ。
その悔しさが、いつの間にかドレスそのものに向いてしまって、破局するドレスなんて呼ばれるようになったのかもしれない。
だから、心の痛みを癒してあげられれば、きっと過去に囚われずに、新しい恋に目を向けられると思うの。
そういう女性に丁寧にお話をしていけば、モナンジュに対する誤解も自然と消えていくはずよ。」
「アレシア様はいつも明るくて、前向きですね。
私はどうしてもお客様の嫌な話を聞くのは苦手です。
ただの愚痴なのは聞くまでもなく、わかっていますから。」
「そうね。
レオニーは資金繰りのこともそうだけど、こういう対応をするのが嫌で、モナンジュを閉じようと思っていたんだったわね。」
「はい。
そのドレスを選んだのはお客様で、私は押し付けたわけじゃないって、いつも言ってやりたくなるんです。」
「ふふ、そうね。」
「こっちは、悪趣味なドレスを作らされてるのに、わかってる?
って揺さぶってやりたくなります。」
「確かに。
お客様の望みのドレスがセンスを疑われるものでも、注文なら作らざるを得ないわね。」
「そうなんですよ。
それをこちらのせいにして、文句を言って来る人のなんと多いことか。
だから、最初から私達の作った完璧なドレスを黙って着なさいよって、言ってやりたくて、いつも爆発寸前で堪えているんです。」
「そうね。
言ったらせいせいするでしょうね。」
「はい、一瞬で後悔すると思いますけど…。」
レオニーは、しょんぼりと近くにある椅子に座る。
「大丈夫よ、今は私がいるわ。
私がその人達の相手をするから。
そのために私はここにいるのよ。
レオニーはドレス作りに専念して。」
「アレシア様に嫌な役回りを押し付けて、気がひけます。」
「そんなことはないの。
私にはドレスを作る技術もセンスもない。
だから、私はできることをしているだけなの。
お金を出すだけなら、私じゃなくてもできるわ。
私は私じゃないとできない仕事をして、みんなに必要とされたいの。
私は親切なだけじゃない。
多分、相当歪んでいるわ。」
「そんな。
アレシア様が歪んでいるだなんて。」
「ふふ、本当のことよ。」
「ここへ来た時、オフリー公爵様とうまくいっていないと言ってましたね。
それで、彼に求められたいと思って過ごされていたんですね。」
「そうね。
トラヴィス様だけにじゃないわ。
きっと小さな頃から、お父様にもどこかでそう思っていたんだと思うわ。
それは、もう無理だとわかっているけど。
その代わり、私には優しいお兄様がいて、トラヴィス様に背を向けられても、何とかやって来れたんだと思うの。
そして今は、トラヴィス様も私を少しは思ってくれていると感じるし、モナンジュもある。
とても幸せだわ。」
「良かったです。
でしたら私は、心置きなくアレシア様に甘えて、ドレス作りに専念しますね。」
「ええ、それぞれ得意なことをしましょう。」
「はい、愚痴を聞かなくていいなんて、気が楽です。」
「ふふ、私に任せて。」
私が明るくそう言うと、レオニーは元気を取り戻し、ドレス作りの生地を選び始める。
「でも、アレシア様、それでも腹が立ってどうしようもない時は私に押し付けてもいいです。
アレシア様にも限度ってものがありますよね?
そんな時は最終的にカーライルを呼びますか?
きっと、女性をメロメロにして、黙らせるはずです。」
「そうね、いつかお願いするかもしれないわ。
でも、私はね、この人は数ある知り合いの中から私を選んで話しに来てくれたって思うようにしてるの。
それは、きっと義姉の影響かもしれないわね。
彼女とは貴族の仮面を被ることなく、本音で話し合って来たから。
結局、わかりあうには、思っていることを伝わり易い言葉にして、伝えていくしかないと思っているの。
散々言葉を尽くしても分かり合えないこともある。
それでも、お互いどう思っているかだけは、知ることができるわ。
それに、私が前向きでいられるのは、トラヴィス様に振り向いてもらうために、できることは全部やってみた時期があったから。
何度もお出かけに誘ったり、二人きりで過ごす時間を作ったりあれこれ工夫したの。
好きだから、どうしても諦められなくてね。
でも、ある時ふともう私無理かもしれないって思って、離縁の覚悟を決めた。
このまま一人で立ち止まっていても、もう前には進めない、そう思えたの。
でも不思議なことに、自分が変わったら彼も変わって。
別れないって言われた時は、本当に驚いたけど、後からじわじわと嬉しさが込み上げてきたのよ。
ああ、私は彼にとって必要な存在だったのかもしれないって。」
「アレシア様良かったですね。
でも、アレシア様は少しも立ち止まっていないですよ。
常によくしようと動いている。
モナンジュに来てくれてありがとうございます。
今、ドレスを安心して作れるのは、アリシア様のおかげです。」
「ありがとう、レオニー。
私もこうしてやりがいを感じられる毎日を過ごせることに感謝しているの。
これからもよろしくね。」
「はい、これからも、女性を応援するドレスを一緒に作っていきましょう。」
669
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
もう演じなくて結構です
梨丸
恋愛
侯爵令嬢セリーヌは最愛の婚約者が自分のことを愛していないことに気づく。
愛しの婚約者様、もう婚約者を演じなくて結構です。
11/5HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
感想などいただけると、嬉しいです。
11/14 完結いたしました。
11/16 完結小説ランキング総合8位、恋愛部門4位ありがとうございます。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
婚約破棄を、あなたのために
月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?
こちらは恋愛ファンタジーです。
貴族の設定など気になる方は、お避けください。
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?
白雲八鈴
恋愛
我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。
離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?
あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。
私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる