いつか、あなたを

夕時 蒼衣

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高校生

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 それから、私たちはあっという間に中学を卒業した。私は家のすぐ近くの高校に行ったが、彼は医学部のある大学付属高校に通うようになった。いままで一緒に毎日、登下校をしていたから、最初は寂しかったし慣れなかった。ただ、家は相変わらず近所だったから、たまに見かけることはあった。それでも話すことは極端に減った。声をかけても、塾があるからと言われ直ぐに家の中に入っていってしまった。そんな関係が淋しかった。彼からどんどん遠ざかっているように感じた。物理的な距離も、心の距離も。どこか遠くにいってしまった。
 会えなくなると途端に恋しくなった。私は彼の彼女でもないのに、毎日彼に会ってる彼の友達にどこか嫉妬心さえおぼえた。そんな自分が情けなく、可哀相に思えた。
 ある日、彼が友達を家に招いていた。私が彼の家に回覧板を届けに行ったときに偶然彼の家に行く彼の友達に会った。くるくるとした茶髪に縁の不厚めの眼鏡をしていた。目がまん丸で、女の子のように可愛らしい男の子だったと思う。その男の子に軽く会釈をされた。私もつられて会釈した。
「もしかして、郁ちゃん?僕、彼の友人の森崎って言います!サキちゃんって呼んでね、よろしく」
 私の名前を知っている彼を目の前に、私は驚きを隠せなかった。名前を知っているということも、勿論そうだが、何より彼がこういうタイプの人とつき合っているのが意外だった。
「あーその、あいつ郁ちゃんにのことよく話してるからさー…」
まだ話ている途中なのだろうが、ちょうどその時ドアが空いて彼が出てきた。
「サキちゃん、余計なこと話してないだろな。お口チャックなー。郁、ありがとう。それ届けてくれたんだろう。…こんなチャラいのにひっかかるなよ。」
彼はそう冗談混じりに言った。久々に彼の顔を見られた。久々に彼の声が聞けた。それだけで心が弾んだ。
「おーおっかないなぁ。ということで、じゃあ待たねー郁ちゃん!!バイバイ」
そう言って、彼と森崎君は家の中に入ってしまった。
「もう少し話したかったな。」
自然と声がもれた。ただ、そんな声は誰の耳に入ることはなく、空気をほんの一瞬振動させただけだった。



「ねえ、あのこでしょ。こっち来てずっと仲良くしてくれた女の子って。かわいいなー。そっかーお前さんはああいう子がタイプってわけかー」
「郁の前で、言ったら友達やめるからな。」

 こんな一面があったのか。いつもはこんなんじゃないんだけどな。もっと優しいっていうか、まじめっていうか。まあ秀才君も、女の子の話になると、むきになるんだな。一種の独占欲かな。

「言わないよー。あとが怖いからねー。郁ちゃんとは結構今も合ってるの?すぐ追い返しちゃったけど…」
わかりやすく動揺してたしね。
「関係ないだろ。それより勉強だろ。教えろっていったのサキだからな」
「わかってるよ。いつも頼りにしてます!」
おもしろいな。勉強よりこっちが気になるのだが、まあ今はしょうがないか。 



 それから数日後、俺、サキちゃんこと森崎圭は郁ちゃんに会いに行った。偶然を装ってだが。方法は簡単だ。彼女の高校から家まではほぼ、一直線なので、その道を学校側に進めばいいのだ。予想通り、郁ちゃんは現れた。制服姿の郁ちゃんはいつも以上に、かわいらしかった。これは断じて、俺がチャラいとかそういうことではない。
「郁ちゃん!僕、サキちゃんこと森崎です!覚えてるかな。ほら、この前天才くんの家の前で会った…そう、回覧板を届けに来てくれてたよね。あの時はあんまり話せなかったけど」
 やっぱり、最初はびっくりして少し不安そうだった。でも、俺が数日前の話を聞いて思い出せたようだった。天才くんから、彼女のことは少し聞かされている。もちろん、彼の目の話もだが。まあ、男には興味はないのだが。
「偶然だね、どうしたの?こんなところで?」
「天才くんの家に行こうと思ったんだけど、用事を思い出してね。あっそうだ!今度あいつにお礼を兼ねてなにか買っていこうと思ってんだけど、なにがいいかな?相談にのってくれない?」
俺は役者なのかもしれない。あっそうだ!というのも全て考えられたシナリオだ。
「え?あーえっと…彼、今月、誕生日だよ」
おっと、それは知らなかった。俺はわざとらしく、腕時計に目をおとす。
「もう、こんな時間か。ちょっと待ってね。…えっと…あったあった。これ渡しとくね。連絡してもらってもいい?」
そういって俺は用意された、メアドの書かれた小さなメモを渡した。その後俺は、じゃあまたねと別れを告げ、その場をあとにした。我ながら上出来である。完璧といってもいいかもしれない。あいつにバレたら恐ろしいことになるが、プレゼントを俺はあいつに渡すことになっているのだ。その心配も無いに等しい。素晴らしいアイデアだった。
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