霧の中に悪魔がいる

full moon

文字の大きさ
上 下
81 / 89
第六節

人とは。悪魔とは。(15)

しおりを挟む
それは、古代文字や難しい文字は無く、いくつもの写真が貼られていた。

ページを捲る。

次のページも、次のページも、様々な写真が貼られているだけだった。

すぐにそれが、写真アルバムだとわかった。

写真のどれもに、男の子の人物が写る。

一ページ目では幼少期。

ページを捲る毎に成長していく。

その人物の成長記録があった。

ページを捲る手が震える。

ぐらぐらと熱い何かが、喉元へ込み上がる。

ページを捲る手が止まった。

そのページには、文字が記されていた。

「アー、お誕生日おめでとう」

小学生の頃の人物と誕生日ケーキが写る写真に文字が添えられていた。

この人物が、アーと言う人のようだ。

それを知った瞬間、視界が、ぐわんぐわんと大きく回転し、めまいが起きた。

不意に現れた目眩と強い吐き気がもよおす。

写真アルバムが手から離れて、床に落ちた。

何度吐いても、唾液と胃酸が出るだけだった。

「あー!」

私は、叫んだ。

「あー!」

噴火して、マグマがどんどん噴き出すように、制御が出来なかった。

「あー!」

唾液と胃酸が混ざった、よだれを噴き出して、叫ぶ。

口から、だらだらと、よだれが垂れる。

何度叫んだだろう。

声も枯れている。

叫び声が止まると、次第に、笑いが込み上がる。
しおりを挟む

処理中です...