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19 〇×△□~!!!!
しおりを挟む「ここがダンジョン・・・」
ダンジョンへの入り口は王都の外れにある、ただの小さな石造りの建造物だった。建物の中に入ると遊園地のアトラクションの受付の様なカウンターがあり、その横に大きな扉があった。この向こうに地下へ続く階段があるらしい。
受付で冒険者カードと依頼を受けたことを証明する用紙を提示すると、初回であるため受付のおねえさんが今回の依頼についてと今回の依頼で行くことになるダンジョンの階層での注意事項の説明をしてくれた。
中は各階層、気候や地形が違うらしい。依頼の薬草は一階層と二階層で採取できるので初心者でも問題なく採取できるだろう。ただ一階層ではごく稀に大型の魔獣が出ることがあるらしい。討伐は禁止されているため見かけたらすぐに逃げるようにと言われた。草食であるため逃げれば追ってはこないらしい。
宝箱も出ないけれど、魔獣もほとんど出ない状態でそんな場所を見学できるなどある意味ラッキーなのではないか。ソラはそう思うことにした。
受付のおねえさんがダンジョンへと続く扉を開け「それではお気をつけて行ってらっしゃいませ~」と送り出してくれた。いよいよ遊園地のアトラクション気分だなと思いながら、ダンジョンの中に足を踏み入れた。
記憶にあるダンジョンとは別物ではあるが、ここは異世界。一歩足を踏み入れれば雰囲気だけはソラの知るダンジョンのイメージと酷似していた。
「よぉ~し、楽しむ・・・じゃない、頑張るぞ!」
第一階層に到着したソラは、ドキドキとうるさい心臓を深呼吸で落ち着かせ、辺りを見渡した。中は地下なのに意外と広く、明るかった。
しかし事前説明では一層から五層までは『薬草畑』だと聞いていたが、ここは『畑』というより──
「砂漠?」
どういう造りなのかは不明だが一階層はどう見ても緑が多めの砂漠だった。気温が高くカラッとしていた。サボテンやヤシの木の様な植物が生えており、イメージ的に南国と砂漠の植物が混在しているといった感じだ。砂の上に緑色の薬草?が生えているので比較的採取はしやすそうな階層だ。
「一、鑑定」
ここには遊びに来たのではない。数が少ないとはいえ魔獣だっているのだ。
早く依頼を達成してここを立ち去るため、ソラが気を取り直して魔法を使う。するとそれに応えるように様々な形をした植物の上に薬草の名前が浮かび上がった。
「大きい・・・」
遠くから目立っていた薬草の近くに行くと、柱サボテンに似た二メートルほどのサボテンが立っていた。
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+ゲンキ草+
ダンジョン産の薬草
水分が豊富で食すと脱水予防になる
棘部分を三日三晩煎じて飲むと、疲労回復効果が得られる
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「これは針が採取部位なんだ・・・。あ、こっちのも見たことがあるやつに似てる・・・」
その隣にはウチワサボテンに似た小さな薬草が群生していた。
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+スポドリ草+
ダンジョン産の薬草
柔らかく栄養価が高いため、病後の栄養補給に適している
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「へぇ・・・」
採取した薬草は片っ端から収納していく。
どこからどう見ても『サボテン』であるため『ナントカ草』というネーミングに抵抗はあるが、見て見ぬふりをした。
「あ、ヤシの木だ」
少し離れたところに今度は背の低いヤシの木に似ている薬草?を見つけた。
木陰が涼しいその木を見ると、
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+オカユの木+
ダンジョン産の薬草
実の中に詰まっているゼラチン質に冷却効果がある
熱さましに利用される
とても苦く、食用には向かない
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「え?オカユなのに食べられないの?」
食べられないどころか飲めもしないなんて・・・ソラはとても残念に思ったが、文句を言っても仕方がない。大人しく実を回収することにした。木自体が低い為、背伸びをして触れたところで収納すると、容易に採取することが出来た。
そこで、ソラはここに来るにあたり、アドルフや受付の人からダンジョン内では魔獣が出ることがあると言われていたことを思い出した。魔獣が出るため冒険者ギルドに薬草採取の依頼が入るのだと。
ごく稀というくらいなので大丈夫だとは思うがここは「砂漠」。砂漠に出る大型の魔獣と言われ頭に浮かぶのは、土の中にいるアレである。
一度想像してしまうとついアレのことを考えてしまい、気持ち悪くて仕方がない。しかも巨大とかあり得ない!
ソラは急ぎ依頼の薬草の採取を終わらせると、身震いをして足早に階下へ続く道を目指した。
その時である。
ザァーと砂が流れるような音がした。ソラが振り向くと背を向けていた方向に大きな穴が開いており、周囲の砂が凄い勢いで穴の中央に向かって流れ落ちていた。
「り、流砂?いや、あれは蟻地獄──」
はじめて見る自然界の出来事に気を取られている間に、砂の流れはどんどんソラの立つ方へ広がってきた。
ザザァーーーーー・・・
「え?」
よく見ると穴の中央に更に大きな穴が空いているのが見えた。
周囲の砂諸共薬草が穴の中に吸い込まれていく。
やはりあれは回避しなければ大変なことになるやつなのだろうか。しかし、こういう時はどんな魔法を使えば回避できるのか。魔法が使えても経験の無いソラは焦りで頭が真っ白になってしまった。
「!!!」
そして、何も思い浮かばないままその場に立ち尽くしていたソラは、あっという間に砂に足を取られ中央の円に向かって滑り落ちていったのだ。
大きな円錐を逆さまに突き立てたような砂の流れと、その終着点にある大きな穴。
滑り落ちながらソラがその穴を凝視していると、わずかにそれが動いた。
そして今更気付く。
あれは、何かの生物の口──あれが受付の人が言っていた大型の魔獣!
「ひっ!」
ソラは急いで足を動かし上に登ろうとしたが、砂に足を取られて進まない。下に落ちるスピードが若干遅くなった程度だ。しかも確実に体力は奪われるため足の動きは当然遅くなっていく。
少しずつ何かの口が近付いてくる。いや、この場合ソラの方が近付いているのだが、そんなことはどうでもいい。
近くで見ると茶色いソレは人ひとり余裕で丸飲み出来るほど巨大で、粘液なのか周囲は湿り気を帯びている。そのウェットな箇所に砂がはり付き、まるで獲物に気付かれないように擬態しているようにも見えた。
「だっ!大丈夫!アレは草食だって受付のおねえさんが言っていたっ!!」
自分を落ち着かせるように、そう叫ぶ。
ソラの存在に気付いているのか、心なし魔獣の口周囲の粘液の分泌が増えたような気がする。
穴の中から細い触手のような何かが出てきて周囲の砂を舐めとった。
(し、舌?今、舌なめずりをした!?)
草食という話ではなかったか。
口が動き、より大きく開いた。その分ソラの落下スピードが増した!
「〇×△□~!!!!」
ソラは声にならない悲鳴をあげた。
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