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22 両親への報告
しおりを挟む入学試験の合格発表は全て郵送で行われるが、遠方の領地から出てきている貴族子女の試験結果は宿泊施設に一括して送られてくる。
この宿には主に入学試験を受けた子爵、男爵令嬢が多く泊まっており、流石に入学試験の顛末を知っているのか一歩外に出るとカノンは注目の的だった。
かなり遠巻きにされているため煩わしくはないが、大変居心地が悪いため、カノンは部屋で受け取った合格通知と一緒に封入されていた「入学のしおり【魔法科】」と「入寮のしおり」という冊子を見たり、魔法を試したりして過ごしていた。
この世界にあるのかは分からないけれど、カノンには試したい呪文がいくつかあった。
「一、ステータスオープン!・・・・・・」
カノンのイメージでは、目の前に鑑定の時に現れるようなウインドウが出てくる予定だったが、いくら待っても何の変化も訪れなかった。
「・・・・・・(恥ずっ)」
カノンはこの呪文を密室で試した自分を褒めた。ちなみにステータスオープンが無いのならと、自分や他人を鑑定してみたが、結果『人』を視ることは出来なかった。
「じゃぁ、これはあるかな?一、クリーン」
お風呂や洗濯が出来ない環境でも、清潔を保てるという冒険者にはありがたい生活魔法。これも試したかった魔法の一つだ。
ステータスは見ることは出来なかったが、これは確実に「魔法」だし、あるに違いない。カノンはそう思ったのだが──『クリーン』もこの世界にはなかったらしい。
しかもイメージしたのがお風呂と洗濯だったのがいけなかったようで、
バシャーンッ!ブォォォォォー!!
室内にもかかわらず頭から水を被り、それが渇くまでひたすら風に吹かれるという責め苦を味わうことになったのだった。
──濡れた服と髪が渇いたころで、ちょうど宿屋の店員がカノンに来客を告げに来た。
「父さま!母さま!!」
大声は令嬢らしからぬ、ではあるが久しぶりの両親との再会だ。構わず駆け寄る。領地を出てから一ヶ月も経っていないのに、何ヶ月も前のような気分だ。
「やぁ、カノン久しぶり!エイシス君や学園から連絡を受けたときは驚いたが、元気そうで安心したよ。──魔法の発現、そして学園合格、おめでとう」
「カノン、元気そうで安心したわ」
どうやらコラーリ先生は最も早いとされる従魔便を使ったらしい。
元々エイシスからの連絡を受けて王都へ向かう準備をしていた両親は、コラーリからの手紙を受け取ってすぐに領地を出発したようだった。
丁度『暁の庇護者』も王都に戻ってきていたため、速やかにカノンと両親、ギルドマスターのアドルフ、『暁の庇護者』を代表してエイシス、王弟である学園長の六人での話し合いの場が設けられた。
カノンは未成年だ。
保護者であるクライスラー子爵夫妻には包み隠さず話すべきだと、エイシスからは王都までの道のりで盗賊に襲われ、その時に魔法が発現したこと(流石に流血やアジト壊滅の件は伏せられた)、そして学園長からは入学試験での出来事(こちらも侯爵令嬢との一件は伏せられた)が語られた。
集められた面子に王族がいたことに驚いて若干悪かったクライスラー子爵夫妻の顔色は、話が進むにつれどんどん青ざめていった。
確実かつ迅速を謳っているとはいえ従魔便も配達途中で不測の事態に陥ることが稀にある。エイシスはカノンに魔法科合格に足る魔法が発現したことのみしか書いていなかったし、コラーリ先生もカノンの魔法の件で話があるので王都に来て欲しいとしか書いていなかったのだという。
実は子爵家子女の魔法科への入学は過去数例だけであるがないわけではない。カノンの兄であるジュールも一属性でありながらその魔力量と卓越したコントロールで無事魔法科を卒業している。
そのため両親はエイシスからの手紙を見て、カノンもジュールと同じく魔力量が多かったのだと思っていたらしい。──にもかかわらず学園からの呼び出しまで来たため、何事かと思い慌てて王都にやって来たのだが、それがまさかの大事だった。
「三属性──?まさか!カノンは私たちの子です!!」
入学試験でカノンが三属性の魔法を使ったことに話が及ぶと、カノンの父親がそう叫んだ。やはり子爵令嬢が複数の属性を発現したという例は全くないため、一番に母親が疑われるという風潮はあるらしい。父の叫びは母を心から愛し、信じていると言っているのと同義だ。カノンはそれがとてもうれしかった。
「もちろん、我々もそれは疑っていません」
そこからが「本題」だ。カノンの本当の魔法と『冒険者ソラ』の話に入った。
「「え?『一日十回、どんな魔法でも使える』!?」」
「そうです。お嬢さんは入学試験で使った水と風、火の属性魔法以外の属性魔法はもちろん、これまでに回復魔法、鑑定や空間魔法も使っています。もうこれは不義で得ることの出来る魔法のレベルを超えている」
そう、これはもう王族の隠し子などと言うレベルの話ではない。
夫妻は思わずカノンに「「本当に?」」と聞いてしまった。カノンは苦笑して頷いた。
エイシスやアドルフはともかく?学園長は両親を呼びつけてまでそんな嘘は付かない。それは両親も良く分かっているだろうが確認せずにはいられなかったのだろう。
回数制限があるとはいえ『どんな魔法でも使える』などという魔法など、ファランドール王国だけではない。この世界の歴史上はじまって以来なのだから。
その後両親にはカノンの『冒険者ソラ』としての活動の話がなされた。有事には王命で活動することになることも含め、両親に許可が欲しいのだと。
クライスラー子爵は説明を最後まで聞くと一言「カノンはそれでいいのだな」と娘に尋ねた。
「はい、父さま」
クライスラー子爵夫妻は少し成長したような娘のその顔を見て、「了解いたしました。娘をよろしくお願いします」と皆に頭を下げた。
夫妻は子爵領で過ごしていた頃の娘とは少し・・・いやかなり雰囲気が変わったと思ったが、まさかカノンが転生者・ハイであるなどとは思うはずもなく、きっと魔法が発現したことで自信がついたのだろうと、その変化を好意的に受け入れた。
クライスラー子爵夫妻はカノンが学園に入学出来るとは思っていなかったので、入学関連の準備を何もしていなかった。その為入学までの残りの数日は、カノンと共に入学の準備と入寮の手続き等を済ませ、王都観光を楽しんだ。
ちなみにジュールから頼まれていた抹茶ココア味の『王都まんじゅう(十二個入り)』は、カノンの代わりに両親が購入し無事領地に持ち帰った。
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