28 / 92
28 とっておきの魔法
しおりを挟むどうやら手印魔法を使える学園長には、カノンの手印が無詠唱魔法のフェイクであることはバレバレらしい。
自分のモノより若干学園長の手印の方が魔法(というより忍者?)っぽくて格好良いと思ったが、やはり覚えられる気がしなかったし両手がふさがるのは不便だなと思った。
「いくら変身しても、カノンとソラが同じ詠唱をしていたら不味いと思ったのですけど・・・」
しかし『なんちゃって手印魔法』は派手に披露してしまった後だ。現在の魔法界では詠唱魔法が主流で本来の手印魔法を全て理解しているものはあまりいない。その為学生が気付くことはないだろうが・・・。
(様子を見るしかないのか・・・)
『ソラ』が『カノン』の知り合いに会い、その正体がばれて危険な目に遭う可能性と、『カノン』が突拍子もないことを続け、何者かに目を付けられ危ない目に遭う可能性はどちらが高いのだろうと、学園長は苦笑した。
学園長は少しでもカノンを目立たなくするために、『氷魔法』と『複合魔法』の新しい解釈を宮廷魔法師団に持ち込み魔法学会で発表させても良いかとカノンに提案した。
「学園長にお任せしますけど・・・大袈裟じゃないですか?」
この事態を全く分かっていないカノンの軽い返事に苦笑し、学園長はカノンを解放した。
学生とはいえ目撃者多数。カノンも共同研究者として名の連ねることにはなるがメインは宮廷魔法師だ。考え得る限りの範囲で最小限の注目で抑えられる方法がこれだった。宮廷魔法師たちも複合魔法の新しい解釈とその可能性に、喜んで手を貸してくれるだろう。
そしてアイネは三日間の停学処分となった。
侯爵令嬢であり、次期王太子妃候補が停学。しかも理由が理由だ。
カノンの機転で事なきを得たものの、魔法の制御──感情をコントロールできず他者に危害を加えそうになったということで、次期王太子妃不適格なのではという声が上がっているという。理性で感情を抑えることが出来なかったという事実がアイネを推す貴族たちを失望させたのだ。
当然その攻撃のターゲットがもう一人の候補であるミレイユ・オークス公爵令嬢であったこともその理由のひとつだ。攻撃前に「王太子妃候補の辞退」を口にしていたこともあり、魔法でライバルを排除しようとしたと判断されたのだ。
ある日の放課後。カノンがミレイユと共にいると、一人の男子生徒がやってきた。
「オルレアン辺境伯の長男のヴァンと申します。クライスラー子爵令嬢に折り入って相談があり、声をかけさせていただきました」
「は、はぁ。ご丁寧にどうも・・・?」
この国での辺境伯の位置付けは侯爵家に匹敵する。そんな高位貴族の、それも嫡男に頭を下げられ、カノンはただただ困惑していた。
ファランドール王国で辺境を守る家は四つ。そのうちの一つがオルレアン辺境伯家である。
クライスラー子爵領も辺境伯領に近いところにあるが、そちらは友好国でもある隣国バーンスタイン王国に面した別の辺境伯家だ。
辺境伯令息が田舎の子爵令嬢に何の用だとカノンは困惑した。その様子を見ていたミレイユが同席を申し出たため、三人で学園に併設されたカフェの個室に移動することになった。
「突然のお願いにも関わらずこのような席を設けていただきありがとうございます。 早速ですが、私の家は辺境伯家の中でも特に魔獣の発生率の高い地域を領地としており、一族の者は属性数よりも強い攻撃魔法を持つことが良しとされている土地柄なのです。
他の兄弟は一属性ですが皆学園では魔法科に入学できるほどの魔力を持っています。
しかし僕は二属性ではありますが、魔力が然程多くなく、ひとつひとつの魔法の威力が弱いのです」
属性数より魔力が重要視される辺境伯家。属性数に振り回されているのはやはり王都の一部の貴族だけらしい。
「そんな中、昨日のあなたの素晴らしい氷魔法を見ました。一瞬新たな属性魔法かとも思いましたが、あの時あなたは仰いました。あれは『複合魔法』であると!」
ヴァンはテーブルから身をのりだしカノンの手を握ると言った。
「弱い魔力でも複合魔法であれば威力が増すのですよね?僕には辺境の領民のためにも魔獣と渡り合う力が必要なのです!僕の属性もあなたと同じ水と風です!どうか僕にも使えそうな複合魔法を教えては頂けないでしょうか!!!」
一属性であることで長い間心ない言葉を掛けられてきたミレイユ。
同じように、彼も魔力が弱いことを理由につらい思いをしてきたのかもしれない。周囲から心ない言葉を掛けられ、認められずとも頑張る不屈の精神(想像)!そして田舎者の子爵令嬢に頭を下げてでも領民のために尽くそうとするその心意気に、カノンは心を打たれた。
「わかりました!
ならば複合魔法を一発!ドカンと!派手に使ってみんなをあっと言わせて『ざまぁ』しなければッ!!!」
「・・・ざまぁ???」
握りこぶしを胸にカノンが立ち上がる。ヴァンが困惑しているが、そんなことお構いなしにカノンは答えた。
「クライスラー子爵令嬢。そんな簡単にいいのですか?」
それまで黙って聞いていたミレイユが思わず口を挟んだ。それくらい、あの魔法は貴重なのだ。そんな簡単に人に教えていいものなのか。
「彼が『ざまぁ』するためには複合魔法は必須です。しかも領民のために使うのでしょう?何の問題もありませんよ。みんなの前で派手にぶっ放して下さい。 それにわたし以外にも複合魔法を使える人が増えたらわたしが目立たなくなると思うんですッ(叱られ案件が減ると思うんですッ)」
カノンが、そう確信しているように言いきる。
「・・・それはないかと思いますが・・・」
ミレイユはそうつぶやいたが、ヴァンにどんな複合魔法を教えようかと考えているカノンに届かない。
「あ!良いのを思いついた! ふふふふふ・・・──ドカンと一発、派手に使えて『ざまぁ』も魔獣退治も出来る、とっておきを教えてあげますよ」
カノンはヴァンに笑顔で答えた。
48
あなたにおすすめの小説
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
【完結】貴方たちはお呼びではありませんわ。攻略いたしません!
宇水涼麻
ファンタジー
アンナリセルはあわてんぼうで死にそうになった。その時、前世を思い出した。
前世でプレーしたゲームに酷似した世界であると感じたアンナリセルは自分自身と推しキャラを守るため、攻略対象者と距離を置くことを願う。
そんな彼女の願いは叶うのか?
毎日朝方更新予定です。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
お言葉ですが今さらです
MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。
次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。
しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。
アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。
失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。
そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。
お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。
内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。
他社サイト様投稿済み。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
転生小説家の華麗なる円満離婚計画
鈴木かなえ
ファンタジー
キルステン伯爵家の令嬢として生を受けたクラリッサには、日本人だった前世の記憶がある。
両親と弟には疎まれているクラリッサだが、異母妹マリアンネとその兄エルヴィンと三人で仲良く育ち、前世の記憶を利用して小説家として密かに活躍していた。
ある時、夜会に連れ出されたクラリッサは、弟にハメられて見知らぬ男に襲われそうになる。
その男を返り討ちにして、逃げ出そうとしたところで美貌の貴公子ヘンリックと出会った。
逞しく想像力豊かなクラリッサと、その家族三人の物語です。
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる