【完結】カノン・クライスラーはリンカネーション・ハイである。~回数制限付きでこの世界にある魔法なら何でも使えるという転生特典を貰いました

Debby

文字の大きさ
90 / 92

90 カノン・クライスラーはリンカネーション・ハイである(最終話)

しおりを挟む
カノンとオルフェウスは卒業の報告をするために、クライスラー子爵家に転移した。

「父さま、母さま、兄さま、義姉さま!無事卒業しました!」

バーンスタイン王国の辺境伯領が一連の騒ぎから落ち着いた頃、ジュールとジゼルは無事に結婚した。
王都や王宮は落ち着いているとは言いがたかったが、あの騒ぎの元凶たちのせいで娘の婚姻の予定が遅れるなどあってなるものかと辺境伯が強引に事をすすめたのだ。
その為ジュールとジゼルは仲睦まじくやっており、何の問題もない。

しかし、いつの間にか随分変わってしまった娘の言動にも慣れ、その規格外の魔法にも慣れ、時々娘が持ち込む驚くほどの性能を持つ便利魔道具にも慣れ、何故か里帰りの際に必ず伴ってくる王族の彼にも、子爵家一同やっと慣れてきた。
宮廷魔法師団からきたスカウトにも断りを入れ、卒業後はそのまま王都に住み、相棒の『フェイ』と共に冒険者活動を続けたいというカノンの言葉に、そんな気がしていたと子爵家一同納得もした。

しかし、フェイが黒い笑みを浮かべて山積みの釣書を持ち帰ってから二年。覚悟していたその瞬間が未だ訪れないのだ。
クライスラー子爵はあの時のフェイの様子から、なのだと思っていた。
もしで無いのなら、そろそろ娘の嫁入り先を探さねばならない。
しかし、二年前より娘宛の釣書は国王宛に送られることとなったままで、こちらには一切回ってこない。確かにカノンには好きな人に嫁いで欲しいのだと言いはしたが、色恋に疎そうなカノンを見ていると本当にその時は来るのかと子爵は不安になっていた。
まさか王族であるオルフェウスに子爵から「うちの娘を貰ってくれるのではないのですか?」とは聞けず、子爵は今日も二人を張り付けた笑顔で見送ったのだった。





子爵家を出た後、二人は隣国バーンスタイン王国の山中を訪れていた。

ここには二年前──ドラゴンと魔獣との戦いで荒れたバーンスタイン王国の王都周辺をソラが古代魔法で『原状回復』してから何度か訪れている。
あれから約束通りバーンスタイン王国の貴族からの接触はなく、快適に冒険者活動を行っている。



「ルスティカーナ様!」
「おお、『今日は』カノンの方だな?そっちもオルフェウスの方か。人間はややこしいな」

バーンスタイン王国の山中とは、当然ドラゴンの住まう山だ。
カノンとオルフェウスは今やドラゴンに名を教えて貰うほど、仲良くなっていた。
カノンがソラと自分が別人であるという設定を貫き通したいために秘密にしてはいるが、この事を公表すれば、カノンがソラと同一人物であると一般に広く認識されても誰も手出しが出来ないだろうとオルフェウスは思う。しかしそうしてしまっては今のような勝手気ままな冒険者生活は出来なくなるだろう。

それでなくともカノンは自分から面倒ごとに突っ込んでいく質であるのだ。そんなことになれば、更に色々なことに巻き込まれるに決まっている。
カノンは前世で『物語』が大好きだったようで、その『物語』に似たシュチュエーションがあると異常な高揚感を感じるらしく、自ら関りを持とうとするのだ。その結果、事件に巻き込まれる。
その最たるものが、記憶が戻ったばかりの時に自ら飛び込んでいった『盗賊のアジト壊滅』の件だろう。
カノン本人はその現象を転生者リンカネー・ハイション・ハイだと言っていたが、オルフェウスには未だそれがどんなものか良く理解ってはいない。

「聞くところによると、『卒業』には『祝い』をせねばならんのだろう?何か望むものはあるか」

誰から聞いたのか、ルスティカーナがカノンにそんなことを言った。

「えぇ?お祝いな──」

お祝いなんて、いいですよ~と言いかけて、カノンはふと思った。
カノンは学園を卒業した。
そう、カノンは寮を出るのだ。

──と、言うことは、が解禁なのではないだろうか。

「黒い『使い魔』が欲しいんですっ!ルスティカーナ様!誰か紹介してくれませんか???」

ここにはルスティカーナを慕ってやって来た魔獣がたくさん住んでいる。一人くらいカノンと一緒に行ってもいいよという黒い子がいるかもしれない!

「そう言えばそんなことを言っていたね・・・。諦めてなかったんだ」

フェイがそう言って苦笑した。
学園生であったため一旦は諦めたが、『魔法の杖』も『空飛ぶホウキ』も実は完全に諦めてはいない。
ホウキ相棒』はまだ収納インベントリに入っているし、杖だって、人目に付かないところでなら使ってもいいんじゃないかな~くらいには思っている。

「なるほど、次に会う時までに何匹かに声を掛けておこう。気に入った者を連れて行くと良い──っと、おぉ、とうとう出来たのか?」

ルスティカーナがふと、オルフェウスの懐から自身の気配を感じ取り、そう尋ねた。

「はい、なんとか完成しました」
「?」

話が見えず首を傾げるカノンに、オルフェウスが懐から出した箱を差し出した。

「卒業祝いだよ。開けてみて」

オルフェウスにそう言われカノンがその箱を開けると、中にはかわいらしい髪飾りと指輪が入っていた。

「わぁ!キレイ!!」
「ルスティカーナ様の鱗から作ったんだ。固くて僕の魔法でも中々加工が出来ず、二年も掛かってしまった」

どちらも七色の光を反射するルスティカーナの鱗に、オルフェウスの色である青い魔石と、金が使われていた。

「使用者登録にサイズの自動調整と──付与がえげつないな。カノンはそんなに護りを必要としておらんだろう」

ルスティカーナが呆れたように言うが、オルフェウスは転生者リンカネー・ハイション・ハイを発動し、とんでもないことをしでかしたり、自ら面倒ごとに飛び込んでいくカノンを見ていると心配で仕方がないのだ。

ルスティカーナは鱗の加工とそれをカノンにプレゼントすることについては許可を求められたため事前に聞いていたが、何を作るかまでは聞いていなかった。

しかし人間たちの事情に疎いルスティカーナにも、これらを見れば何も言われずとも察することは出来た。

オルフェウスが自らの色を使って作ったアクセサリーとそれに施された付与は『カノンは自分の物だ』と主張しているようなものだし、オベルトがルスティカーナの鱗でアクセサリーを送ろうとしたときは全力で拒否していたカノンが今、オルフェウスの作ったアクセサリーを見て瞳を輝かせている。



ドラゴンは人間子爵と違って空気など読まない。



「で、二人はいつ頃婚姻するのだ?」
「「え!?婚姻!?」」

ルスティカーナの質問に、オルフェウスとカノンの声がハモった。

天界地球支部日本派出所転生課第百六十三番窓口からはじまったこの転生。
これから新たな冒険譚がはじまるのだと思っていた所に、いきなり加わった恋愛要素(多分)。

それでもカノンソラオルフェウスフェイの冒険とスイーツ探訪はまだまだ続くのだろう。



カノン・クライスラーはこれからも転生者リンカネー・ハイション・ハイである。





*--*--*

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
少しでも面白いな、好きだなと思って頂けていたらうれしいです。

あと、おまけの小話(全二話)、書けなかったけど、私が気になるお残しエピソードを消化したお話になります。
軽く読めますので、ついでに読んで(* ᴗ ᴗ)⁾⁾

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

【完結】貴方たちはお呼びではありませんわ。攻略いたしません!

宇水涼麻
ファンタジー
アンナリセルはあわてんぼうで死にそうになった。その時、前世を思い出した。 前世でプレーしたゲームに酷似した世界であると感じたアンナリセルは自分自身と推しキャラを守るため、攻略対象者と距離を置くことを願う。 そんな彼女の願いは叶うのか? 毎日朝方更新予定です。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

お言葉ですが今さらです

MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。 次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。 しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。 アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。 失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。 そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。 お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。 内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。 他社サイト様投稿済み。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

転生小説家の華麗なる円満離婚計画

鈴木かなえ
ファンタジー
キルステン伯爵家の令嬢として生を受けたクラリッサには、日本人だった前世の記憶がある。 両親と弟には疎まれているクラリッサだが、異母妹マリアンネとその兄エルヴィンと三人で仲良く育ち、前世の記憶を利用して小説家として密かに活躍していた。 ある時、夜会に連れ出されたクラリッサは、弟にハメられて見知らぬ男に襲われそうになる。 その男を返り討ちにして、逃げ出そうとしたところで美貌の貴公子ヘンリックと出会った。 逞しく想像力豊かなクラリッサと、その家族三人の物語です。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

処理中です...