【完結】憧れの異世界転移が現実になったのですが何か思ってたのと違います

Debby

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第七章 憧れの詰まったやりたいことリスト達成です・編

7-2

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 静かな音楽が聞こえる。
 これは──そう、スマホのアラームだ。
 そう思って、私は目を閉じたまま枕の下に入れている筈のスマホを手探りで探す。
 手に当たったスマホを手に取り、アラームを切る。

 疲れが取れていない気がする。
 大枚払って買ったはずの枕が合わないとか?
 いやいや、そりゃないって。今までは快眠を得られてたじゃん。

「・・・やっぱりピヨさんの羽毛じゃないと・・・誰?あれ?私寝ぼけてる?」

 なんか長い夢を見ていた気がするからそのせいかな?
 なんか疲れが取れなかった理由に思い当たった気がしたけれど、忘れちゃった。
 夢は毎日見るけれど、朝起きたときに忘れてるっていうもんね。
 ちょっとボーッとするけど、顔を洗って身だしなみを整え、コーヒーを一杯飲む。その後軽く洗って、戸締まりを確認して家を出た。



「星良ちゃーん!」

 お昼休憩になったのでご飯を食べに行こうと席を立つと、後ろから仲の良い同僚に呼び止められた。

「美春、どうしたの?」
「どうもこうもないわよ。話を聞かせてもらうわよ」
「?──よくわからないけど、食堂でよ?」

 私は基本カレーしか作れないのに温かいものを食べたい派なので、お弁当は持って来ない──いや、作れないから持って来れないんだけど。
 毎日お洒落なランチなんて摂れないので、大体社員価格で食べることの出来る食堂で済ませる。(食堂のある会社でよかった!)
 早い者勝ちのセルフなので、お互いに好きなものを見繕って席に着いたところで、
「で、それ、どうしたの!?」
 と、美春から聞かれた。

「は?」

 食べながらで行儀が悪いけれど、休憩時間は有限だ。
 早速何かを宣う友人の言葉に、食事を口に運ぶ手を止めた。

 それを良いことに、美春は私の左手を取ると、

「昨日までしてなかったでしょ?このブレスレット!・・・なになに──スピカ?」
 星良ちゃんが乙女座だから?と、ブツブツ言いながらを見ている友人。

 私の頭の中に急に色々な情報記憶が流れ込んできた。

「取り外せるようになってるのね?シンプルだけど変わったデザインね。──彼氏、出来たの?」

 美春に上目遣いで見られるが、いや、なんて答えるべき?

「お、お詫びの品として貰ったのよ。それも大分前の話よ?」

 嘘ではない。
 嘘ではないけど、何故夢の中の出来事であったはずなのに、これがここにあるのか。



 その後、心ここにあらずな感じでその後の仕事をこなし、家に帰ってきた。

 そして今、私の目の前には例のリストが書いてあるノートがある。

 私はノートを開き、リストの──


 ----------
 リスト『異世界でやってみたい50のこと』
 ----------


 リストの、一番の項目を見た。


 ----------
 ★全部夢オチだとありがたい
 ----------


 そうだ。
 幼いころに家族を亡くし、彼氏なんかもいなくてひとりぼっちだけれど、現世の文明に慣れた私には異世界生活は辛いだろうと思って最後のひとつは夢オチにしたんだ。

「そっかー」

 私はベッドに両手足を投げ出して横になる。
 『運び屋の仕事』は無事に成し遂げたわけだし、その対価だったと思われるリストもコンプリートしたもんね。
 でも、せめて今回の騒動で被害にあった人に治癒魔法をかけたかったな。
 リストが達成して私が消えたこと、ピヨさんは分かってるだろうからみんなに伝えてくれるよね。

 ピヨさん、紅さんとレグルス、七星や、みんなにお別れを言いたかったなぁ──────一緒にいてくれてありがとうって、言いたかったなぁ。

 いやいや、私ってば何を考えてるんだ?
 若返って異世界転移なんて、全部夢じゃん。

 現実なはずがない・・・なのにこの喪失感はなんだろう。

 明日から二連休。
 スマホをいじって、映画にしようかそれともショッピング?
 それとも昼までゆっくり寝る?きっと疲れも取れるはず。



──眠りたいのに眠れない。

 今何時だろ・・・ボーッとした頭で時間を確認しようと枕の下に手を突っ込む。
 スマホではない感触に一気に覚醒した。

「ま、まさか」

 勢いよく枕を投げ捨てて枕の下にあるものを確認した。

「せ、世界樹の葉っぱ・・・」

 『あるのは縁だけ』って世界樹さんは言っていた。
 ブレスレットと世界樹の葉っぱ・・・異世界との縁。



 私はペンを持ち、息をのむ。

 窓から入った葉っぱかもしれない(戸締りしてるけど)。
 左手のブレスレットも気のせいかもしれない(今視界に入ってるし、何なら重みも感じるけど)。

 夢での出来事を本気にしてこんなことをするなんて恥ずかしい。
 でも誰かが見ているわけでもないし、もう50項目は書いているんだから、今更一項目増えたって変わりないよね。

 そう、ただ、リストの続きを書いているだけ。

 私はやることリストに51番目を書き込んで、世界樹の葉っぱを手に持ったまま、眠りについた。

『★エルナトの街に帰りたい──』



「・・・あれ?」

 私はアラームの前に目が覚めたのはいつぶりだろう。
 まだ室内は薄暗く、起きたばかりの目は良く見えない。

(何時頃かな?)

 そう思って、私は目を閉じたまま枕の下に入れている筈のスマホを手探りで探す。
 アラームの時間まで三十分以内なら諦めて起きる。三十分以上なら二度寝。
 それが私のルールだ。

(・・・私の枕ってこんなに柔らかかったっけ?)

 ちゃんとした枕屋さんで合わせてもらい、大枚はたいて購入したお気に入りの枕の感触ではない。

「っ!」

 私は飛び起きた。
 そこは、七星の家での私の部屋だった

 私は自分の両手を見た。
 目に入るのは・・・見慣れた手?
 服装も変わっていない、いつもの部屋着。ここの世界観に思い切りミスマッチ。
 私は起き抜けでボサボサであろう自分の髪の毛に二、三度手櫛をかけると、自分の前に持ってきて髪色を確認した。

「うん。安定の茶色カラーの色──」

 私はベッドから降りると(何故かお気に入りのスリッパが置いてあった)そっと窓を開けた──

 そこには日本の景色とは全く違う、でもこの数ヵ月で見慣れた街並みが広がっていた。

 間違いない。

「戻ってきたの?・・・」



「あ、おはよー。ってか、お帰り?」

 リビングに降りるとピンク色の髪と瞳の七星がいた。

 どうやら私はまたまた夜中に街の外に倒れていたらしい。そしてまたまたラッキーなことに七星に発見されたそう。
 流石に七星が大人の私を抱き抱えて運ぶのは無理なので、通りすがりの冒険者さんに頼んで家に運んでもらったらしい。

「え、やだ。重かったでしょうに」

「あっちの通りがかりの人ならともかく、こっちの通りがかりの人なら余裕でしょう」

 それもそうか。

「それより星良って意外と若かったのね」
「え?七星の中の姉さんっていったい・・・」
「それ、聞くの?」

 貴族仕様の笑顔の圧が怖くて話題を変えることにした。

「えっとー・・・」

 私が寝ている間に七星が用意してくれていたこっちの服に着替えて、私が消えてからのことを聞いた。

 驚いたのは私が消えてから半年が経っていたということだ。
 私がこっちで過ごした約一年間もあっちでは数時間だったので、向こうとこっちでは時の流れが違う。そういうことだろう。

 私が消えた後、みんなの結界が消えたらしい。
 しかし私が吸血魔獣の本体を蚊と間違えて討伐したことにより小さな吸血魔獣は弱体化、大事には至らなかったようだ。

 よかった。

 それでも怪我人は沢山出たそうなので、七星がこの街から広範囲魔法で癒したらしい。さすがヒロイン。
 でもその魔法は現場でも目撃されていて、王女殿下の件で元々治癒魔法の使い手ということが分かっていたスピカの魔法であると認識されたらしく、王宮で保護?しようとする王女様と聖女にしようと目論む教会が今必死にスピカを探しているのだとか。
 お陰で大規模な結界のことはどこかに吹き飛んでしまったらしい。スピカと関わりたくない一心で騎士たちが隠していたりしたら笑うけど・・・違うわよねぇ。

「ほんと、その姿で戻ってきて正解よ」

 そう言われてしまった。

 いや、狙ったわけではないのだけれどと思う。
 51番目に書いたのは『★エルナトの街に戻りたい』だったけど・・・だけど、なぜ私は『→リストのリセットは無しで』って注釈入れなかったのぉ!!

 これまで散々思ってたんと違うという件があったというのに!
 私の若さと赤い髪がぁ!!

 でもちょっと安心出来たのが、結界、収納(中身もそのままだった)と、治癒、鑑定、生活魔法なんかが変わらず使えることだった。
 前回は気にならなかったけど、今回は年齢的にもちょっと・・・いやかなり気になる。結界の応用で日焼け防止とかいけるかしら?

 後は・・・

 絶対に気配とかそんなので私が再びこの世界に来たことを分かっていてもおかしくないのに、未だに姿を現してくれない。
 半年も経ってるし、今の私はオバ・・・かなりお姉さんだし、この世界ではとても重要で高位の存在っぽいからいつまでも私に付き合ってられないのかもしれない。

「ピヨさん・・・」

『やっと呼んだな』

 ぽすんっ

 私的には一日しか離れていないのに、とても懐かしい重みを頭に感じた。
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