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1 あなたは三人目です
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「やっとお会い出来ましたわ、ヒロインさんっ。こんなところで何をしておられますのっ?」
学園に新入生を迎えてから一週間ほど経った放課後の図書室。
書棚と書棚の間で一人の令嬢が、ミルク・ガレット子爵令嬢の両手を掴み、詰め寄っていた。その様子は遠目からだと諭しているようにも責めているようにも見える。
大きな声で話せない内容らしく顔を寄せて小声で話しているが、語気が強いため書棚ひとつ挟んだこちらにまで話し声が聞こえてくる。
その剣幕に怯え目を合わせることが出来ないのか、ガレット子爵令嬢は顔を伏せ、令嬢から視線を外しているためその表情は見えない。
ポニーテールにしたピンクブロンドの髪がふわふわと揺れ、震えているようにもとれるその様子に庇護欲を掻き立てられそうになるが──騙されてはいけない。
彼女は『またなんか厄介なのに絡まれてしまった』──なんて考えているに決まっているのだ。
視線だって目を合わせたら面倒臭いことに巻き込まれそうだから反らしているに違いない。
少しの付き合いだけれど、その可愛らしい見た目に反した子爵令嬢の考えが私には手に取るように分かる。
「聞いてらっしゃいまして?」
返事のないガレット子爵令嬢にしびれを切らした令嬢が再び言葉をかける。
私の知る限り、人当たりの良いおっとりとした彼女からは想像の出来ない言動だ。余程焦っているらしい。
「はい。それを聞かれるのはあなたで『三人目』になりマスカラ・・・」
「さ・・・三っ?」
思っても見なかった返しに戸惑う令嬢を横目に、ガレット子爵令嬢はもの凄ーく面倒くさそうにため息をつくと、見えていないはずのこちらに向かって呆れたような声音で言った。
「サントノーレ侯爵令嬢、そこにおられるのでしょう?この方ってあなた様のお仲間ではないですか?」
「そうね、でももう少し言い方を考えなさい。この方は──」
書棚の影から出て姿を現した私にとても驚いたようで、令嬢の耳の下で巻いた一束の髪が軽く跳ねた。
「王太子殿下の婚約者、シャルロット・ダックワーズ公爵令嬢よ」
藤色の髪と瞳のとても美しい令嬢だ。
立場上顔を会わせる機会はあったけれど、幼い頃から人と積極的に交流を持つことを好まなかった私は誰であろうとも深くお付き合いをすることは避けてきたため、彼女とは当たり障りの無い会話しかしたことがない。
──それを今、とても後悔している。
「あなた──ショコラ・サントノーレ侯爵令嬢・・・?」
驚いたように口にするダックワーズ公爵令嬢に私は言った。
「そうですわ。そして私が、『二人目』でしてよ」
彼女もその可能性に気付いたらしい。
口に手を当てて目を見張り、ワナワナしているダックワーズ公爵令嬢に私は確信を持って例の言葉を投げ掛けた。
「溺愛は?」
「満月の夜に・・・ですわ」
「「同郷!(*^o^)/\(^-^*)」」
呆れたように見ているミルクさんを放って、私たちは夢にも思わなかった邂逅に喜びハイタッチをした。
学園に新入生を迎えてから一週間ほど経った放課後の図書室。
書棚と書棚の間で一人の令嬢が、ミルク・ガレット子爵令嬢の両手を掴み、詰め寄っていた。その様子は遠目からだと諭しているようにも責めているようにも見える。
大きな声で話せない内容らしく顔を寄せて小声で話しているが、語気が強いため書棚ひとつ挟んだこちらにまで話し声が聞こえてくる。
その剣幕に怯え目を合わせることが出来ないのか、ガレット子爵令嬢は顔を伏せ、令嬢から視線を外しているためその表情は見えない。
ポニーテールにしたピンクブロンドの髪がふわふわと揺れ、震えているようにもとれるその様子に庇護欲を掻き立てられそうになるが──騙されてはいけない。
彼女は『またなんか厄介なのに絡まれてしまった』──なんて考えているに決まっているのだ。
視線だって目を合わせたら面倒臭いことに巻き込まれそうだから反らしているに違いない。
少しの付き合いだけれど、その可愛らしい見た目に反した子爵令嬢の考えが私には手に取るように分かる。
「聞いてらっしゃいまして?」
返事のないガレット子爵令嬢にしびれを切らした令嬢が再び言葉をかける。
私の知る限り、人当たりの良いおっとりとした彼女からは想像の出来ない言動だ。余程焦っているらしい。
「はい。それを聞かれるのはあなたで『三人目』になりマスカラ・・・」
「さ・・・三っ?」
思っても見なかった返しに戸惑う令嬢を横目に、ガレット子爵令嬢はもの凄ーく面倒くさそうにため息をつくと、見えていないはずのこちらに向かって呆れたような声音で言った。
「サントノーレ侯爵令嬢、そこにおられるのでしょう?この方ってあなた様のお仲間ではないですか?」
「そうね、でももう少し言い方を考えなさい。この方は──」
書棚の影から出て姿を現した私にとても驚いたようで、令嬢の耳の下で巻いた一束の髪が軽く跳ねた。
「王太子殿下の婚約者、シャルロット・ダックワーズ公爵令嬢よ」
藤色の髪と瞳のとても美しい令嬢だ。
立場上顔を会わせる機会はあったけれど、幼い頃から人と積極的に交流を持つことを好まなかった私は誰であろうとも深くお付き合いをすることは避けてきたため、彼女とは当たり障りの無い会話しかしたことがない。
──それを今、とても後悔している。
「あなた──ショコラ・サントノーレ侯爵令嬢・・・?」
驚いたように口にするダックワーズ公爵令嬢に私は言った。
「そうですわ。そして私が、『二人目』でしてよ」
彼女もその可能性に気付いたらしい。
口に手を当てて目を見張り、ワナワナしているダックワーズ公爵令嬢に私は確信を持って例の言葉を投げ掛けた。
「溺愛は?」
「満月の夜に・・・ですわ」
「「同郷!(*^o^)/\(^-^*)」」
呆れたように見ているミルクさんを放って、私たちは夢にも思わなかった邂逅に喜びハイタッチをした。
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