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今日はメイドの視点から

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最近あのアホに暴力的だのなんだの色々言われておりますが果たしてそうでしょうか?
と、まあ、私が言った所ですべて主観的意見になってしまいますので今回は、完全なる第三者に私、エミリーこと涌井英美里の一日を見て頂きましょう。
まず朝の四時。メイド、それもお嬢様の近侍ともなれば朝は屋敷の中でも五本指に入るほど早くなります。

「ん~~エミリーちゃんおはよー。」

「キティ、あなたまた私の布団にもぐって寝ていましたね?」

「だって一人で寝るより暖かいんだもん!」

大発見!と胸を張る彼女に微笑ましさを感じていいのやら、今まで人肌のぬくもりを感じて無かった事に言及すべきなのか迷って結局曖昧に笑って頭を撫でて支度をするように言って私も支度をします。

「さーて、よし、良く撮れていますね。」

まず屋根裏を伝って事前に仕掛けておいたカメラを回収します。
今までの写真は全て燃やされてしまったのでまた撮り直しです。

「さて、そろそろこっちも準備しますか。」

次に私は制服であるメイド服に着替えます。
あのアホが休日足蹴く通っているカフェで見るような男に媚びるスタイルではなくクラシカルな実用的デザインの物です。

それから昨日のうちに準備しておいたカートを押してお湯を貰いに厨房に行きます。
そしてそれを零さないようにお嬢様の部屋まで行き

「おはようございます。お嬢様。」

「おはようエミリー。早速お願いできるかしら?」

私が最も好きなお嬢様の髪を染めるお仕事です。
専用の魔法塗料を使い桃色に染め上げます。
色は一日で抜けてしまうのですが、身体に特に害は無いので、
理論上どれだけ色を変えても問題ありません。

「うん。やっぱり髪とお茶はあなたに限るわ。」

「恐縮です。」

そしてお嬢様を食堂までお連れし、
お嬢様が登校する時間までにキティと共に食事をとります。
使用人と主人が共に食事をとることなどめったに有りません。

「エミリー、キティ、準備はいいかしら?」

「お姉ちゃーん!」

「こらキティ、お嬢様にむやみにくっつかない。」

これでも私は何とか殺意を抑えているのです。
お嬢様のお体に堂々触れるなどうらやまけしからんガキめとか思ってます。
え?普通は取り繕わないかって?
そんな必要は何処に?

「良いじゃないの。この子はずっと知らなかったんだから。
これから存分に味合わせてあげなきゃ。」

ああ、お嬢様……。
なんて深い懐なのでしょう。
山や海なんかと比べぬのもおこがましい。
まるで古き神話の、いえ、神話の神々ってポンポン増えるくせにどいつもこいつも人間のなってない奴ら結構いますね。
現代だったら終身刑どころか死刑になってもおかしくない星の名前にもなってる主神とか、姉がドン引き通り越して引きこもるレベルで非行三昧の愚弟とか、皆信心なくなったとか言うTwi〇terで『イイネ』貰えなくなった承認欲求ヤバい人みたいな理由でほぼ全人類地表や生態系ごと洗い流すやつとか。
…つまりお嬢様は神よりも果てしく慈悲深い!?
これは…このエミリー、新たな審理にたどり着いてしまったようです!?

「エミリー?考え込んでどうしたの?」

「なんでもありません。さ、参りましょう。
キティ、あなたはこっちです。」

お嬢様の魅力を再確認するなどなんでもない事。
我々は馬車に乗り込み学校に向かいます。

王立魔法学院。
初等部から研究機関までエスカレーター式一本の王国一古い歴史を持つ学校で、このスリースタックス家領内には15年枚の外来人侵攻の時に引っ越してきました。
丁度今の建物が出来上がったころに私が産まれたんだとか。

「おはようございますスリースタックス辺境伯令嬢。」

身分の低いもの達はお嬢様が通るたびに頭を下げます。
当然です。
スリースタックス家は地理的な利点と有する兵力。
そして早期に外来人の軍に通じる内通者を暴いたことで国内外の貴族から一目置かれています。
仮に公爵家であってもスリースタックス家を無下にはしません。

「おはよう皆さん。本日もいい日ですね。」

「あーー!居た!おーいリジ―君!エミリー君!キティ君!」

「あ、教授!おーーい!」

「チッ!」

声が無駄にデカい-100。
不尊にもお嬢様の名前を言う-100。
ぼさぼさ髪にジャージに白衣-100。
わいせつ物携帯-100。
アホである-100。

ギルティ。

私は素早く走り出し、スカートの裏から愛用の指ぬき、正確にはリング付きナイフを取り出します。

「え?うそ、ま…」

「ふん!」

そして宙返りを撃ってアホの脳天に全体重を乗せた打撃を叩き込みます。
こうゆうのは叩いていたらそのうち治るから楽でいいです。

「エミリー、早いわ。対応が早すぎる。
せめて余罪を追及できる材料をそろえてからやりなさい。」

やはりお嬢様のこれ以上ない指摘と慧眼には感服するばかりです。

「かしこまりました。」

「いやそこかい!人がやらかしてる前提かい!
こうゆうキティ君の教育衛生上よくないことは辞めようってはないじゃなかった。」

「ええ。ですからお前をこの世から消そうかと。」

「まるで人がいるだけで迷惑かけてるみたいに言いやがって!
僕なにかした!?君らの前で今日なんかした!?」

「どうせするでしょ?迅速な原因療法です。」

「冤罪と私刑の間違いだろ!」

アホがわめくのでもうに三発蹴りを入れてからキティの方を向き

「いいですかキティ。普通人は何もない時にけられたり殴られたりしません。
悪い事をした時にだけこうされるんです。」

「教授は何か悪い事をしたんですか?」

「私を不快にさせました。」

「どの口で子供を諭してるのあなた?
極めて私的かつどうでも良い恨みじゃない。」

「何をおっしゃいますか。
この男は国の税金を趣味前回の色もの企画につぎ込む傍ら、
外来からの侵略対処を急がねばならぬ時に週一欠かさずメイド喫茶に行く不届き者です」

「それ悪いように言ってるけどただのサブカル趣味の公務員ってことよね?
確かにこのアホは常軌を逸した行動に出ることも多々あるけど今のところ最近はギリギリ人類に仇なしてないじゃない。」

「おーいリジ―君?君僕のフォローしてるんだよね?
君の気遣いが目に染みるんだけど?」

「大丈夫ですよ教授!まだ終わってませんから!」

「いや何が!?人の人生が終わったみたいな言い方やめてくれない!?」

「え?だって今の教授ママが枕の下に白い粉隠してたの長老にばれたのと同じ顔してました。」

「それ完全に脳をハッピーにする奴じゃないか!
前から思ってたけど君の両親オールラウンダー過ぎない!?
六法全書の内容フルコンプ目指してたの!?」

「褒めても何も出ませんよ?」

「出るか!出てたまるか何が出るか知らんけど!」

「まあ何が出てもお前の脳と口から垂れ流される戯言よりは酷くないでしょうね。」

「ああお前の罵倒よりおきれいな言葉だろうよ!」

まだ発育途中の私をい見下ろす様に迫って来る高圧的なアホに私は思い切り見上げ返す様ににらみます。

「パパはおじさんとああなるといつもボロボロに殴られてお金持ってかれてましたけどいつもはどうなるんですか?」

「一番怖い人が来るわ。だからその前に…」

引き金を引く音に魔砲の発射音。
瞬間、私とアホは柔らくなった土にものすごい勢いで沈んでいきました。

「さ、キティ行きましょう。
アホも阿保も鬼より怖い校長先生に摑まるより地面と仲良くしてる方が幸せでしょうから。」

「おぃいいちょっとまてぇ!変身したんなら決めゼりごぼごあぼごあぼ!」

最後まで自分を曲げない点に関してだけははた迷惑極まりないですが関心すら覚えます。
はぁ……ここからどうやって抜け出しましょうか……。

(この後、阿保2人は校長先生にこってり絞られましたとさ。めでたしめでたし。)

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