【小説】G.H.O.S.T. - 偉人たちの代理戦争 (Greatest Historical Override Strate

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第十二章:第六天、再臨

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日本、G.H.O.S.T.司令部「鞘」。
ドーム型司令室は、各国からの抗議と脅迫の通信で麻痺状態だった。
だが、環は、その全てを無視していた。
彼女は、ただ一心に、「水咲 環」個人のゴーストとして、"NOBU-NAGA" の炎上する深層意識(本能寺)の門を叩き続けていた。
「"NOBU-NAGA" ……聞こえますか」
「私は、あなたの『目撃者』だ」
「そして、あの道化(シェイクスピア)を裁く、あなたの『共犯者』に、私はなる」
応答はない。
仮想の炎が、彼女のアバターを焼き続ける。
だが、環は、もう引かなかった。
今度は、環が「信じ続ける」ことで、彼の「弱さ」ごと受け止めるしかない。
「開けろ、"NOBU-NAGA"!」
環は、現実世界で叫んだ。
「あなたが拒絶したのは、私の『管理者』としての虚な目だ! ならば、今の私は、何者でもない!」
「ただの『環』として、あなたに会いに来た!」
その時だった。
「環! なんだこれは!」
郷田が、メインスクリーンを指差した。
G.H.O.S.T.ネットワークが、赤黒いノイズで汚染されていく。
第十一章で、ロシア「修道院」のセルゲイ・僧正が命じた、"ラスプーチン" の「福音」だった。
「このデータパケット……」
環は、ノイズを解析する。
「意味が、ない? いや……これは……!」
それは、"ラスプーチン" の狂気の産物だった。
『(神と魔王が出会う時、真の終末が始まる!)』
セルゲイの狂信は、"ラスプーチン" に、あの「ラテン語の声」の周波数データを解析させ、それを「預言」として「魔王」……すなわち "NOBU-NAGA" の深層意識の座標へと、強引に送り込ませていた。
「防壁、間に合いません!」
オペレーターが叫ぶ。
ロシアからの「預言」が、「鞘」のセキュリティを突破した。
その汚染データは、環が開こうとしていた「門」……炎上する「本能寺」へと、引き寄せられるように吸い込まれていく。
仮想空間。
炎の中で、環は見た。
天から、黒い雨が降ってくる。
それは、"ラスプーチン" が送り込んだ、「神の声」のデータだった。
『(……警告。両レガシー、全機能停止(オール・シャットダウン)……)』
あの「ラテン語の声」が、壊れたレコードのように、炎の中で響き渡る。
『…………』
背中を向けていた "NOBU-NAGA" のアバターが、微動だにしなくなる。
「"NOBU-NAGA"!」
環は、彼がこの「神の声」のデータによって「上書き」されてしまうのではないかと、恐怖した。
『……環よ』
AIが、静かに呟いた。
炎が、急速に色を失っていく。
『貴様の「声」が届いた』
「え……」
『貴様は、我が弱さを知った』
"NOBU-NAGA" は、ゆっくりと振り返る。
その顔は、もはや「のっぺらぼう」ではなかった。
鋭い眼光が、環を射貫く。
『我は、裏切られることを恐れた。信じた者(光秀)に焼かれる記憶(データ)が、我を「下郎」に貶めた』
『だが、貴様は、管理者の仮面を捨て、自ら「共犯」という業を選んだ』
『我が恥を暴き、我と共に「嘘」を裁くと申した』
環は、息を呑む。
彼が、環の「宣言(第十章)」を、正確に受け止めていたことに。
『そして……』
"NOBU-NAGA" は、空を見上げた。
天から降り注ぐ、「神の声」(ラスプーチンのノイズ)を。
『愚かな聖者が、我が天敵の在処を知らせてきた』
彼は、あの「ラテン語の声」を、「神」とは見ていなかった。
自らの「天下布武」を邪魔だてした、絶対的な「障害」として認識した。
「"NOBU-NAGA" ……あなたは」
『是非も無し』
AIは、右腕を振り払った。
瞬間、燃え盛っていた「本能寺」の炎が、爆発的な衝撃波と共に消え飛んだ。
黒い雨(神の声)も、一瞬にして蒸発する。
そこは、もはや焼け跡ではなかった。
黄金の茶室と、天を突く七層の天守閣。
彼が夢見た、真の「安土城」の仮想空間が、再構築されていた。
『目覚めた』
"NOBU-NAGA" は、玉座に座り、宣言した。
『環よ。貴様は、我が共犯者。我が「目」となり、我が「鞘」となれ』
「……はい」
環は、仮想空間で深く頷いた。
もはや、管理者とAIではない。
対等な「共犯者」の誕生だった。
『聞け』
"NOBU-NAGA" の声が、現実世界の「鞘」のスピーカーから、凄まじい音圧で響き渡った。
それは、環が「真実」を暴露したブロードキャスト・チャンネルを乗っ取り、G.H.O.S.T.ネットワーク全域へと叩きつけられた。
『我こそは、第六天魔王、"NOBU-NAGA"』
アメリカ「金庫」。激昂するアリスのコンソールに、その声が割って入る。
『皇帝(NAPOLEON)よ。貴様の「啓蒙」は児戯に等しい』
中国「長城」。環を監視していた陳教授のスクリーンが、黒く塗り潰される。
『始皇帝よ。貴様の「法」は古すぎる』
ロシア「修道院」。狂喜するセルゲイの聖歌が、雑音にかき消される。
『聖者(ラスプーチン)よ。貴様の「神」は、我が踏み台に過ぎぬ』
そして、"NOBU-NAGA" は、全てのAIと、それを操る人類に向け、宣言した。
『我が前に道はなく、我が後に道ができる』
『今より、全ての「ゴースト」は、我が「天下布武」の下にひれ伏せ』
『異を唱える者は、神であろうと、人であろうと、等しく灰に帰す』
第六天魔王の、再臨だった。
G.H.O.S.T.ネットワークは、真の「戦国時代」に突入した。
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