目立たず平和に暮らしたい最強冒険者、貴族令嬢の家出に巻き込まれる。

miy

文字の大きさ
29 / 75

28 ジョージ・フィリーライツ2(旅の2日目夜:龍崎side)


「詐欺事件の他に、アドリアナさんが拉致される原因になるような揉め事はありましたか?」

「少なくとも、領地内では領主の娘が狙われるほどの大問題は起きていない。
お前は拉致未遂事件だと言うが…1人でいたところを運悪く破落戸たちに襲われた…という話ではないのか?」


ジョージに与えた情報だけなら、偶々襲われたアドリアナが『娼館へ連れて行かれる』と勝手に思い込んだ…そう判断しても仕方がないのかもしれないな。


「…そんなに簡単な話ではなさそうなんですが…」

「はぁ…何を根拠にそう思っているのか理解できないな。
アドリアナを保護しているのなら、金で解決したから邸へ戻れと…早く知らせてやってくれないか。勿論、ちゃんと謝礼も出す」

「へぇ…俺のこと、信じてくれましたか…?」

「……………」


ジョージは苦虫を噛み潰したような顔をした。


「あぁ…すみません。アドリアナさんを保護していることは本当ですよ。ただ…あなたの言うようには解決していない、それだけです」


ジョージはチラリと俺を見て…深くため息をついた。


「偶発的な事件でないなら、その5人の破落戸たちはアドリアナを狙っていたということだろう?
一体どうやって…その場の勢いで家出したアドリアナを…そんなに早く見付けることができた?

私たちは連日捜索しているが、手がかりゼロだぞ」


それは、お門違いな場所を捜しているからですよ。


しかし…こうなってくると、家出するアドリアナを最初から尾行していたか、特殊な能力で追ったかだろう。
実際は…時間差があって、森に逃げ込まれてしまった?というところか。

穢れた男たちはあの森には立ち入れないが…方向的にガンダナ王国を目指していると予測はできたはず。

これは…家出も込みで仕組まれていたという可能性が出てきたのでは?


「捜す方法は見当がつきますが…狙われる理由がさっぱり…」

「アドリアナが狙われていて、拉致する計画があったというのか?」

「そうです。そして…その拉致には、フィリップ・バーグリッツという男が絡んでいると思っています」

「……お前………」


ジョージが何も知らないなら…俺が教えるしかないよな。


──────────


「まぁ、聞いてください。フィリップという男は…あなたのお兄さんに会いに来ていた。
問題は、連れていた従者が呪術師だったということです。

実は…アドリアナさんを狙った男たちには、呪いがかけられていました。今この状況で、その呪術師が無関係なはずはありません。
捜索を手伝うフリをして…アドリアナさんを拉致する可能性がありますよ…」


上手く隠してはいたが、アレは蛇の獣人。毒を操り、呪術に長けている種族。
俺にはちゃんと見えていた…奴らは間違いなくクロだ。


「は?呪術師…?…なぜ…バーグリッツ卿がアドリアナを狙うんだ…?」

「そこが分かりません。今朝は、アドリアナさんの所在を本当に知らないのか…確認をするために直接会いに来たんだと思います。
きっと、躍起になって捜しているんでしょう。あぁ、あなたのお兄さんは…怪しい薬を飲まされていましたよ…」

「何だって!…兄さんが?!」

「まぁ、薬を毎日飲み続ければ…当然よくないことが起きるんでしょうね。
アドリアナさんが邸に戻って来た場合に備えて、あなたのお兄さんを利用しようとか…何かしら企んではいるんでしょう」

「…だから…私には戻るなと…」

「今日は外出していて正解でしたね…あなたにまで要らぬ影響があると困りますから。

どちらか1人はマトモでいて欲しいので」

「……はは……確かにそうだな…」


ジョージは前髪をクシャッと雑にかき上げ、思考が追いつかないのか…何ともいえない表情で気怠そうに返事をした。


「あのフィリップという男は…?」

「伯爵家の分家筋で、子爵になる前の若いころは国の機関で働いていた…とか何とか聞いた気がするが…はっきりとは知らない。

長男に小規模な領地経営を任せはじめてからは、表舞台にはあまり出てこなくなった。
後は…夫人がよくサロンを開いている話は昔からあったかな」


当たり前かもしれないが…そんな話を聞いてもひっかかる部分などひとつもない。


「おそらく、婚約破棄が引き金となって起こった問題です。アドリアナさんを拉致するというのは、縁戚関係になる話が立ち消えたから…」

「マーチンが婿入りして襲爵すること以外、あの婚約に意味があったとは思えないが?」

「金や爵位ではなく、アドリアナさんが欲しいんですよ…でなければ、貧乏子爵家の令嬢を拉致しません」

「…お前、随分とはっきり言う…」

「あなた方は、婚約破棄をしてくれたマーチンに感謝したほうがよさそうですね。そのまま結婚していたら…多分、取り返しのつかないことになっていた…」


ジョージは急展開の事態に頭を抱えた。


「けれど…そこまで執着する目的が全く見えてきません…。後は俺が調べてみますから、少し時間をください」



話はここで行き止まりだ…。





あなたにおすすめの小説

幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜

犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。 これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。