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28 ジョージ・フィリーライツ2(旅の2日目夜:龍崎side)
「詐欺事件の他に、アドリアナさんが拉致される原因になるような揉め事はありましたか?」
「少なくとも、領地内では領主の娘が狙われるほどの大問題は起きていない。
お前は拉致未遂事件だと言うが…1人でいたところを運悪く破落戸たちに襲われた…という話ではないのか?」
ジョージに与えた情報だけなら、偶々襲われたアドリアナが『娼館へ連れて行かれる』と勝手に思い込んだ…そう判断しても仕方がないのかもしれないな。
「…そんなに簡単な話ではなさそうなんですが…」
「はぁ…何を根拠にそう思っているのか理解できないな。
アドリアナを保護しているのなら、金で解決したから邸へ戻れと…早く知らせてやってくれないか。勿論、ちゃんと謝礼も出す」
「へぇ…俺のこと、信じてくれましたか…?」
「……………」
ジョージは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「あぁ…すみません。アドリアナさんを保護していることは本当ですよ。ただ…あなたの言うようには解決していない、それだけです」
ジョージはチラリと俺を見て…深くため息をついた。
「偶発的な事件でないなら、その5人の破落戸たちはアドリアナを狙っていたということだろう?
一体どうやって…その場の勢いで家出したアドリアナを…そんなに早く見付けることができた?
私たちは連日捜索しているが、手がかりゼロだぞ」
それは、お門違いな場所を捜しているからですよ。
しかし…こうなってくると、家出するアドリアナを最初から尾行していたか、特殊な能力で追ったかだろう。
実際は…時間差があって、森に逃げ込まれてしまった?というところか。
穢れた男たちはあの森には立ち入れないが…方向的にガンダナ王国を目指していると予測はできたはず。
これは…家出も込みで仕組まれていたという可能性が出てきたのでは?
「捜す方法は見当がつきますが…狙われる理由がさっぱり…」
「アドリアナが狙われていて、拉致する計画があったというのか?」
「そうです。そして…その拉致には、フィリップ・バーグリッツという男が絡んでいると思っています」
「……お前………」
ジョージが何も知らないなら…俺が教えるしかないよな。
──────────
「まぁ、聞いてください。フィリップという男は…あなたのお兄さんに会いに来ていた。
問題は、連れていた従者が呪術師だったということです。
実は…アドリアナさんを狙った男たちには、呪いがかけられていました。今この状況で、その呪術師が無関係なはずはありません。
捜索を手伝うフリをして…アドリアナさんを拉致する可能性がありますよ…」
上手く隠してはいたが、アレは蛇の獣人。毒を操り、呪術に長けている種族。
俺にはちゃんと見えていた…奴らは間違いなくクロだ。
「は?呪術師…?…なぜ…バーグリッツ卿がアドリアナを狙うんだ…?」
「そこが分かりません。今朝は、アドリアナさんの所在を本当に知らないのか…確認をするために直接会いに来たんだと思います。
きっと、躍起になって捜しているんでしょう。あぁ、あなたのお兄さんは…怪しい薬を飲まされていましたよ…」
「何だって!…兄さんが?!」
「まぁ、薬を毎日飲み続ければ…当然よくないことが起きるんでしょうね。
アドリアナさんが邸に戻って来た場合に備えて、あなたのお兄さんを利用しようとか…何かしら企んではいるんでしょう」
「…だから…私には戻るなと…」
「今日は外出していて正解でしたね…あなたにまで要らぬ影響があると困りますから。
どちらか1人はマトモでいて欲しいので」
「……はは……確かにそうだな…」
ジョージは前髪をクシャッと雑にかき上げ、思考が追いつかないのか…何ともいえない表情で気怠そうに返事をした。
「あのフィリップという男は…?」
「伯爵家の分家筋で、子爵になる前の若いころは国の機関で働いていた…とか何とか聞いた気がするが…はっきりとは知らない。
長男に小規模な領地経営を任せはじめてからは、表舞台にはあまり出てこなくなった。
後は…夫人がよくサロンを開いている話は昔からあったかな」
当たり前かもしれないが…そんな話を聞いてもひっかかる部分などひとつもない。
「おそらく、婚約破棄が引き金となって起こった問題です。アドリアナさんを拉致するというのは、縁戚関係になる話が立ち消えたから…」
「マーチンが婿入りして襲爵すること以外、あの婚約に意味があったとは思えないが?」
「金や爵位ではなく、アドリアナさんが欲しいんですよ…でなければ、貧乏子爵家の令嬢を拉致しません」
「…お前、随分とはっきり言う…」
「あなた方は、婚約破棄をしてくれたマーチンに感謝したほうがよさそうですね。そのまま結婚していたら…多分、取り返しのつかないことになっていた…」
ジョージは急展開の事態に頭を抱えた。
「けれど…そこまで執着する目的が全く見えてきません…。後は俺が調べてみますから、少し時間をください」
話はここで行き止まりだ…。
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