捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?

miy

文字の大きさ
45 / 110
第3章

37話(ガーラント辺境伯Side)

しおりを挟む

「フェルナンド殿、本当によく来てくださった。心から感謝申し上げる。また…先ほどは大変失礼をした。

申し訳ない…この通りだ」


私は深く頭を下げた。


「おやめください、ガーラント辺境伯。
辺境伯軍の皆様方と同様に…私とイシスも、この地を守るために全力を尽くすつもりです」


やはり、フェルナンド殿は我々を救うためにイシス嬢を連れて来られたのだな。


「…この度は…アレン殿のこと…本当に残念です。…シルフィ嬢は…」

「シルフィは地下で眠っております。意識がないので苦しんではおりませんが、長くはないでしょう」

「……それは……」


言葉に詰まり…眉根を寄せていたフェルナンド殿が、覚悟を決めたように顔を上げる。


「シルフィとの婚姻の件…ですかな?」

「はい。…私は…シルフィ嬢との婚姻のお話をお受けできません。申し訳ございません」


フェルナンド殿の濃いブルーの瞳は、私の目をしっかりと捉え…揺るがない意志を伝えてくる。


「理由を…」


『理由を聞かせて欲しい』そう言うつもりだったのだが…何やら外が騒がしく…気が削がれてしまう。


「ドミニク様!大変です!」

「何事だ!」

「飛龍が!」

「何っ?!また飛龍だと!」


立て続けに襲来するとは、一体どうなっている?!
いや、それよりも…今の我々の戦力で立ち向かえるのか?!


「監視の魔導具をすり抜けたようです!
見張り塔から“赤い飛龍”との知らせがありました!

イシス様は、飛龍が来ると我々に知らせながら…部屋を飛び出して行かれました!」


イシス嬢が?!

フェルナンド殿を見ると、すでに部屋を出て行こうとしていた。


「…っ!!…イシスはどこへ向かった?!」

「おそらく、城の最上階だと!」

「ガーラント辺境伯、私はイシスの元へ先に向かいます。飛龍討伐の武器を持って後から来ていただきたい!」

「承知した!」




──────────




城の最上階は飛龍を攻撃するために屋根部分を少なく、足場を広くした特別な構造だ。

大型の黒い飛龍を倒すため、専用の大弓砲バリスタも数多く設置してある。


飛龍討伐用の極大な鏃が付いたクロスボウを用意し、ジェンキンスを連れて急ぎ城の最上階へ向かうと、城の北側全体が幾重にも重なった青白く光るシールドに覆われていた。

日ごろから城全体にシールドを施してはあるのだが、それとは全く違うものだった。


「ギィイィーーー!!」
 

赤い飛龍が炎を吐き出しながらシールドに何度も体当たりをしている。
飛龍は、シールドに弾き返された自分の炎を浴びて叫んでいるのだ。


何だ?炎を弾いて…壊れないシールドだと…?


イシス嬢は屋根に立って、勇ましくも赤い飛龍と睨み合っていた。


風が吹けばバランスを崩すような不安定な場所で、両手から小さな魔法陣を次々と生み出している。

ブツブツと何か呟くと、その小さな魔法陣がスーッとどこかへ飛んでいく。
しばらくすると“ヴウン”という奇妙な音と同時に、新たなシールドが現れた。

やはりイシス嬢か。あの小さな魔法陣が、なぜあんな巨大なシールドになるのだ…?


飛龍が炎を撒き散らし何度目かの体当たりでやっとシールドを破壊したところで、両手を使い同時に2つのシールドを張り巡らせるイシス嬢のほうが数で上回る。


…しかも…早い…。


飛龍は明らかに体力を消耗し始めている。

襲来から時間はそう経っていない…にわかには信じがたい光景だった。

飛龍襲来の知らせを受けて最上階へとやってきた兵士や魔術師たちも、戸惑いを隠せない。


「フェルナンド殿!」


私の声に気付いたフェルナンド殿は、屋根から降りてきた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました

黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。 絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」! 畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。 はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。 これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

罰として醜い辺境伯との婚約を命じられましたが、むしろ望むところです! ~私が聖女と同じ力があるからと復縁を迫っても、もう遅い~

上下左右
恋愛
「貴様のような疫病神との婚約は破棄させてもらう!」  触れた魔道具を壊す体質のせいで、三度の婚約破棄を経験した公爵令嬢エリス。家族からも見限られ、罰として鬼将軍クラウス辺境伯への嫁入りを命じられてしまう。  しかしエリスは周囲の評価など意にも介さない。 「顔なんて目と鼻と口がついていれば十分」だと縁談を受け入れる。  だが実際に嫁いでみると、鬼将軍の顔は認識阻害の魔術によって醜くなっていただけで、魔術無力化の特性を持つエリスは、彼が本当は美しい青年だと見抜いていた。  一方、エリスの特異な体質に、元婚約者の伯爵が気づく。それは伝説の聖女と同じ力で、領地の繁栄を約束するものだった。  伯爵は自分から婚約を破棄したにも関わらず、その決定を覆すために復縁するための画策を始めるのだが・・・後悔してももう遅いと、ざまぁな展開に発展していくのだった  本作は不遇だった令嬢が、最恐将軍に溺愛されて、幸せになるまでのハッピーエンドの物語である ※※小説家になろうでも連載中※※

追放令嬢のスローライフなカフェ運営 ~なぜか魔王様にプロポーズされて困ってるんですが?~

月城 友麻
ファンタジー
国を追放された悪役令嬢シャーロットの夢は、平穏なスローライフを送ること。彼女は、王都の公衆衛生を陰から支え、毒とされる青カビから秘密裏に特効薬を作っていた過去を捨て、辺境の町で念願のカフェを開店する。 前世の知識を活かした温かい料理は、すぐに町で評判となった。特に、毎日通ってくる無口な常連客は、彼女の作るオムライスを心から愛しているようだった。 しかし、シャーロットを追放した王都では、彼女がいなくなったことで疫病が大流行し、国は滅亡の危機に瀕していた。元婚約者の王子が助けを求めに現れるが、時を同じくして、あの常連客が正体を現す。彼の名は魔王ゼノヴィアス。 「お前の料理は俺の心を癒した。俺の妃になれ」 これは、ただ静かに暮らしたいだけなのに、料理で胃袋を掴んでしまった魔王に求婚され、その重すぎる愛からスローライフを死守しようと奮闘する、元悪役令嬢の物語。

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

処理中です...