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第4章
55話
しおりを挟む「帝都へ?」
“龍の呪い”について…
大騒ぎになった帝都では、捜査権の及ばない他国の犯罪者を捕らえるため、先ずは交渉に必要な情報を精査するところから始まった。
バイセル王国へ確たる証拠を突きつけると…1週間ほどで犯人は逮捕されたらしい。
最初から、隠れるつもりはなかったのかもしれない。
その後、保証の問題や犯人の身柄について…両国間で時間をかけて話し合いがなされた。
皇帝陛下は、犯人を帝国の法で裁くことを強く求めたという。
「近々…犯人がバイセル王国から移送されてきます」
少し疲れた表情のローウェン様。
解呪してから、間もなく1ヶ月半が経とうとしていた。
「それで、ローウェン殿は帝都へ?」
「えぇ、そうです。義父上も…一緒に行きます」
犯人受け渡しの条件の中に、辺境伯様が犯人と面会する…という約束事があるそうなのです。
辺境伯様はローウェン様にこの城の全権限を譲り、一線を退かれました。
続けていける精神状態ではなかったのでしょう…。
辺境伯として名はあるものの、最強戦士としての闘志や覇気を完全に失ってしまわれたのです。
「義父上は…最近になってやっと落ち着いてこられたところですから、犯人と直接会うというのは…心配で仕方がありません」
…確かに…1ヶ月ほどは寝たきりでしたものね。
それでも、会わないという選択はできないのだから…行くしかないということ。
「…そうですね…お気持ちは分かります。ジェンキンス殿もお連れしてはどうでしょう?
城のことは私ができる限りのお手伝いをいたします。
今は飛龍襲来もなく、魔物も大人しくなりましたから…特に問題はないと思うので」
「フェルナンド殿…ありがとうございます。城のことはお任せいたします。
魔物討伐には何の心配もしておりませんが、ご結婚が近いというのに…お2人には大変申し訳なく…」
私たちの婚約期間は、残り半月ほどになっていた。
「とりあえず、婚姻契約を先に結ぼうと思っております。その辺りは侯爵家に頼んでありますから、あまりご心配なさいませんよう」
「お2人には助けていただいてばかりですね。
多分、3日程度留守にするかと思います。ジェンキンス様にも…相談してみます」
─────────
「もうすぐ結婚できる。ここまでが本当に長かったよ」
「…ん…そう…だね…」
「もう眠い?」
ソファーに座ってフェルナンド様に抱き締められていたら、背中があったかくて気持ちがいいの…眠くなる。
「もう目がトロントロンだ…疲れていたのか?…フフッ…可愛いな。ここではイシスを独り占めできる。悪くない」
「あ…結婚って…どこでするの?」
いけない、大事なことを聞き忘れるところだった…と、後ろにいるフェルナンド様を見る。
「契約は神殿か教会でするものだが…父上からの知らせには教会だと書いてあった。
半月後に魔導ゲートの使用許可は得ている。帝都の教会で、私と夫婦になることを誓うんだ」
フェルナンド様がうれしそうに微笑む。
ぼんやりとその笑顔を見ながら『幸せだね』と、私は言った。
フェルナンド様は私を抱く力を強くする。
「…あぁ…君といると、とても幸せだ…」
うっとりするような甘い声。
耳元でそう囁いてから、私の唇を逃さず奪う。
「結婚の契約は、誓いの言葉とサインだけだから、式やお披露目は日を改めて準備をしようと思ってる。
この城は…もう私たちがいなくても今の状態なら問題ないだろう。半月後、帝都へ帰れると1番いいけど…な………ん?イシス?」
「…………………」
「…寝た…のか…?」
…チュッ…
「おやすみ…私の愛しい人」
───────────
2日後、ローウェン様は辺境伯様とジェンキンス様を連れて帝都へ旅立って行った。
3人が帰城したのは…それから5日後のことだった。
城では、3体の飛龍襲来により酷く崩れていた東側の砦の修復作業が…間もなく終わろうとしていた。
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