愚、雨タ■日記

伊織庵

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今日も今日とて1人寂しく海竜を狩る。レアおとものフェニックスにより、ソロでも難なく狩れてしまうので、仲間が必要ない。 

周回、周回、周回、売却、周回、何一つ狂いのない完璧なプレイ。パンミミを片手に操作する。これが史上最強の晩飯だ。味付けは無いのにしょっぱい。 

なにやら騒がしい、腹の虫の鳴き声と、外から話し声と猫の鳴き声。察すると102号室の住人が猫を飼っていたため、追放されてしまったのだろう。可哀そうに…w

 次の日、飼ってた不死鳥が死んでいた。死因はストレスと診断。そんなのはお構いなしにモニターの電源を付け、いつものように周回する。



 今日は隠しダンジョンを見つけた。攻略サイトで探しても無いような場所。つまり第一発見者となった。ワクワクが止まらないなか、攻略を進める。 

一見は普段のダンジョンと何ら変わりのない場所だが、宝箱の質が違う。開けば伝説級のアイテムばかり、売れば数年は遊んで暮らせるレベルだろう。

さて、お楽しみのボスは…フェニックスだった。

中途半端な攻撃はすべてふさがれ、大きい一撃を与えてもふざけた回復量で元通りになってしまう。八方塞がりだ。耐えたところで、こちらの攻撃は効かないため時間だけが過ぎていく。

せっかく見つけたダンジョンで涙目敗走は許されないので、方法を模索する。ただ、どの方法も完璧に回復されて無駄になる、ストレスだ。さっきから部屋の壁からドンドンと壁を殴った音がする。 

フェニックスを殴って30分経った辺りで、急にクリア画面が出てきた。どうやらクリア条件は一定時間耐えることだったよう。

クリア報酬として、家に送られたダンボールを開封すると、不死鳥の指輪が入っていた。深紅の輝きが不気味にうごめいていた。



昨日見つけた隠しダンジョンの攻略法を動画投稿サイトに載せた。名のあるゲームタイトルなだけに登録者や再生数はウナギノボリだ。うまくいけば、これで食べていけるのかもしれない。  

ということで、某ジャングルの奥地系ショッピングサイトで収録用のマイクを購入。

攻略法動画の影響か、つぶやき系アプリのフォロワーもかなり増えている。千載四十四遇のチャンスだ。 

最近は動画だけでなく、生配信も流行りに乗っている。もちろん始めてみた。

始めたばかりだと5人の視聴者が来れば良い方だと、G先生が言っていた。
そのため、とりあえず5人を目標に始めたのだが、動画の影響で初めから30人の視聴者が見に来てくれた!動画の効果が効きすぎている。もちろんいつものゲームを配信する。さすがにトップ配信者とは言わないまでも口が回ってくる。  

3時間配信をやっていると、少しゲームの動作が重くなってきため、アプリの再起で画面を消した。そこにはショッピングサイトの決済途中画面。後ろの指輪はまだ輝いていた。



  窓から温かい光が零れ、雀のさえずりが聞こえる。一般の人は労働で汗を流している中、スマホから一通の通知、銀行口座のアプリからだ。 

なにやら口座に5万円の振り込みが。卓上には新品のマイクが置いてあった。さて、今日のモーニングメニューは目玉焼きとソーセージに、種類の分からないパンを食べる。そして、ネットサーフィン。
DMには昨日晒してしまった自分のフルネーム、サイトウ ナルミと呼んで馬鹿にしている馬鹿が数人。

そういうやつにはレンガを投げつけるだけ。

空に浮かぶ雲はいつもより1.5倍速で進んでいる。千載二十二遇のチャンスだ。



  本日、八月 五十六日、午前 四十八時 九十四分 もう一度動画を投稿してみる。

今度は効率の良い海竜の周回方法動画だ。

昨日映っていたマイクの話題を交えつつプレイしたため、一部の視聴者がコメントで沸いていた。狙い通りだ。 

動画投稿終わりに、窓を開け、換気をしているとパトカーが走っていた。その後ろにはサイレンを焚いたパトカーが追っている。家の指輪は緋色に光っている。



  毎日のストレスでぐったり寝ていると、窓から一本の矢が飛んできた。

その矢は自分の左膝を貫いているように見えたが、気のせいだった。

なにやら矢に紙が結ばれていて、開いて見ると、「サイトウ ナルミ、お前の娘は預かった」との記述が。

背筋が凍った。  

急いで家を飛び出し、交番へと向かったが、そこに交番は無かった。

そこにあったのは謎のピザ屋だけ。

不思議に思いながら入店してしヘルシーそうな野菜たっぷりのラーメンを頼み、帰宅した。  

買ってきた煎餅を食べながら、チャットで交流ができる系のゲームをプレイしていると、外から鈍い重そうな音が聞こえてきた。

急いで窓の外を見るとそこには、頭から血を出して倒れている一般男性がいた。

それの近くには半分に割れたレンガ。事件のニオイがする。今日も指輪は笑っていた。

  今日はチャットで交流できる系のゲームをやってみる。

とりあえず人生で初めてトモダチという生き物を作り上げてみる。 

序盤は順調だが、細かい毛先や指先などなど、挙げたらキリがないがとりあえず、細かいところが難しい。 

ただ、作るなら絶世の美女を作りたい。試行錯誤しながら作る必要があるので、土台が完成した辺りで、生配信を始める。

タイトルは「人生で初めて彼女を作るぞ!」 

相変わらず視聴者数が8000人とちょっとから増えない。ただ、8千人近くいるので意見が分かれる。こいつらの中の絶世の美女は8千人いるわけで、それを一つには決めることができない。

なんやかんやでできた、この生き物は9千人中、24人の思い描く美女となった。  明らかに趣味が一緒。だが、もう面倒なのでこれで進めた。

傍に呼び出してみるとヨタヨタとこちらに近寄ってきて「ス…キぃ」と連呼するゾンビロボットになってしまった。

コメント欄は悲鳴や笑いと共に沸いている。悲しくなってきたので削除ボタンを押し、なかったことにした。

そしてなぜか、ゾンビロボットのガチ恋勢が増え始めた。



柄にもなくアラームをかけていたため、久しぶりにこんな朝っぱらから目が覚める。
卓上には知らない少女が。こっちに気付いてふわふわとこちらに飛んできた。

手のひらに乗った天使は手に持った杖で寝癖を直してくれた。そしてこちらに向けて杖を振る。気が付くと服装が変わっており、彼女は軽く微笑んだ。指輪も連動して笑っている。

外はレンガの雨が降っている。甲高い破壊音がパラパラとなっていて、高揚感が湧き出てくる。  

調子がいいので今日も生配信をする。18時間ぶっ続けを予定している。  

配信中、インターフォンが鳴る。マイクを消して、出てみた。  

そこには若い女性の警官が立っていて、彼女の話によると、隣人が首を吊ってなくなっていたらしい。

確かに最近静かだとは思っていたが、なくなっていたとは。

そして、報告と手がかりを探して訪れたという。前々から壁をどんどんされていたことだけ話して帰した。

戻ってマイクのミュートを解除すると、今回の周回は視聴者の手によって終わっていた。楽しみが減ってしまったが、よくお手伝いしてくれる人なので許すことにする。



先日家に届いた「翻訳こんにゃく」というものを食べてみる。

これを食べるだけで相手の言っていることがわかるというご都合アイテムだ。

さっきから周りをハエみたいに飛んでいる、この少女とコミュニケーションを試みる。 

サイズはそこまで大きくないので、一口で食べてみる。味は普通のこんにゃく。それ以上でもそれ以下でもない。

ある程度噛んだあと、少女に向かって話しかけてみた。

しかし、少女は微笑むだけで何も発さない。それに比べ、指輪は大爆笑している。  

少し頭が痛くなってきた気がする。今回もパチモンを掴まされたという事だろう。相変わらず外ではパトカーのサイレンが鳴り響いている。



おはようございます。私は今雲の上にいます。 下の世界は血みどろで薄暗く、気味が悪いので、上に逃げました。そんなことはさておき、今日も海竜の周回を始めます。

意気揚々と配信を始めたはいいものの、視聴者がさっきから43万人と44万人を行き来している。

今日は不安定の日なため、たまには柄にもなく、お昼ご飯配信をしてみる。デリバリーサイトで頼んでおいた七面鳥を食す。

視聴者はみるみるうちに、44万人から5万人に増え続けていた。  千載四百四十五遇のチャンスだ!! 

気分がいいので、そうめんをたべながら、視聴者に向かって宣言した。

「明日辺りに世界の端から端をひと飛びする配信するわ」 

コメントと指輪はざわついていた。

気が付けば見知らぬ地にいた。

ただ、言語に不自由は無く、自然と頭に入ってきた。  

日差しがマシンガンのように降り注いでいる。

スマホを手に取り、配信を開始する。  「えーっ、本日は日本という国から配信しております。」

もちろん驚愕するコメントと、自分の左薬指にはまっている指輪。 

「この国は素晴らしい。まずアニメ文化が豪華である!トイレがキレイである!落とした財布が返ってくる!他にも沢山あるが、とにかく素晴らしい国だ。」  

相変わらずコメントはざわついている。視聴者も4兆5百億を超えた。いつもより口の調子がいい。

町の人たちは恐怖のあまり腰を抜かしている。 

何一つ正しいことなど存在しない。 

目の前の命が消えた後、何食わぬ顔でモニターの電源を付け、ゲームを開始する。 

只今、何者かに脳みその中身を吸われているみたいだが、そんなことはさて置いて、今日も緑龍の捕獲を始める。





何一つ正しいことなど存在しない、つまり、この世の中は嘘だらけ。

例えば、とある小説があったとして、それを書いているのは本当に人なのだろうか? 

ゲーム配信をしていたとして、その配信者は本当にゲームをプレイしているのだろうか?

全てのことに確実なんてものは存在しない。 

そして今、目の前の彼女はいつも通り配信をしながらゲームをしているわけだが、今日は何一つ上手くいってないらしい。

彼女は疲れているんだ。

いい年なのにまともに働きもせず、ずっと狂ったように配信をしている、最後に食事をしたのは2千年前だったか。睡眠も食事と同じくらいしていないだろう。

私は彼女が心配だ。

彼女にとって生きることとは何なのだろうか、

命をはき違えていないのだろうか。 

彼女の気をこちらに逸らしつつ、窓の外に放り投げる。

よほど大切なものなのだろうか、それを彼女は追いかけた。

気が付けば全身から血を出し、命を落としていた。

指輪もまた、深紅の輝きを放っていた。
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