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サプライズの行方※ <前編>
しおりを挟むほんの少し絡みのシーンがあるので※つけてます
✳︎ ✳︎ ✳︎
ちょっとしたサプライズのつもりだった。
でも、まさかこんな事になるなんて……。
数時間前の私はあんなにも幸せだったのに……。
私、ソフィア・ベネットは侯爵家の一人娘。
16歳の誕生日にシュルーダー伯爵家の次男、リアムと婚約した。
リアムは学業こそ今ひとつだったけれど、スラリとした長身で容姿端麗。
学校中の女の子から人気があって、いつも周りには綺麗な女の子たちを侍らせていた。
だから、リアムとの縁談が持ち上がった時、私は少し心配だった。
地味な私とは釣り合いが取れないわ。
私にはもっと落ち着いた人の方が良いのかも……。
そう思って断ろうと思っていた。
だけど……
「ソフィア……君を愛してる。周りの目なんか関係ない。君を一生大切にするよ。約束する」
真剣な眼差しでそう言われて、私は彼の申し出を受ける事にした。
それから瞬く間に半年がすぎ、結婚式まで残り1ヶ月に迫ったある日、お父さまのお仕事を手伝うために王都を離れる事になった。
期間は1週間。
「リアム、ごめんなさい。でもすぐに仕事を終わらせて帰ってくるから、その間結婚式の準備を進めてもらっても良いかしら?」
「ああ、もちろんだよ。私たちの式が滞りなく進むようにしっかりと準備しておくから、ソフィアは何も心配しなくていいよ。しっかりとお父上の仕事を手伝ってきてくれ。1週間後、ソフィアが帰ってきた日には、ソフィアが行きたいと言っていたお店で食事をしよう」
「ええ、嬉しいわ。ありがとう。リアム、愛してるわ」
「ああ、私も愛しているよ」
結婚式直前に王都を離れることになった私に優しい言葉をかけてくれるリアムの優しさに触れながら、私はお父さまの仕事に同行した。
「ソフィア、お前の頑張りのおかげでこんなにも早く仕事が片付いたな」
「ええ。だって、結婚式の準備が気になって。だから早く帰れることになって嬉しいわ」
「お前がそんなに根を詰めずともリアムが進めてくれているだろうに。だが、二人で準備するものもあるだろうからな。リアムには早く帰ることを連絡したのか?」
「いいえ。こっそり早く帰ってリアムの驚く顔が見たくて」
「ははっ。ソフィアにもそんな一面があったのだな。リアムはきっと喜ぶだろうな」
「ええ。そうなら嬉しいんですけど」
「ならば、直接リアムの家で降ろしてやろう。少しでも早く顔を見せて安心させてやりなさい」
「はい。ありがとうございます、お父さま」
もうすぐリアムに会える。
逸る気持ちを必死に抑えながら、馬車は王都へと向かった。
シュルーダー伯爵家に到着し、私は今回の旅でついてきてくれた護衛騎士の一人と共に馬車を降りた。
護衛騎士が呼び鈴を鳴らし出てきた執事は私の顔を見た瞬間、一気に顔を青褪めさせた。
「ソ、ソフィアさま……」
「ヨハン、どうかしたの? 顔色が悪いわ」
「いいえ、なんでもございません。あの、お帰りは明後日とお伺いしておりましたが?」
「ええ、その予定だったけどお父さまの仕事が早く進んだから急いで帰ってきたの。リアムと結婚式の打ち合わせをしたいのだけど、今は家にいる時間でしょう?」
「えっ、あの……申し訳ございません。ただいま、外出なさっておられます」
「どこにいったのかしら?」
「そ、それは私からは……」
いつもと違って歯切れの悪いヨハンの様子に訝しみながらもいないと言われている以上、いくら婚約者とはいえここにとどまるのもおかしい。
「では、リアムが帰ってきたら私にれんら――」
「ヨハンっ!!! 急いで水をもってこいっ!!」
仕方なく帰ろうとヨハンに言伝を頼もうとしたその時、上の階からリアムの大きな声が聞こえた。
「……今の声は、リアムでしょう?」
「いえ、あの……」
「リアムが家にいるのに私に嘘をついた理由は何?」
「あの……申し訳ございません」
「謝ってほしいのではなくて、理由を聞いているのだけど。リアムが私に会いたくないと言ったの?」
「いえ、そのようなことは決して」
「そう。なら、直接聞きに行くわ」
「ソフィアさま、それは……」
「私に指図はしないでちょうだい」
必死に止めようとするヨハンに言葉を吐き捨て、私は一人で階段を上がりリアムの部屋へと向かった。
もしかしたら見てはいけないものを見てしまうのではないかしら……。
そう思いながらも確認せずにはいられない。
部屋の前に来ると、扉を開けずとも中で何をやっているかは容易に想像できた。
「いやん、リアムったら……ああっ、んっ……そ、こっだめ…っ」
「ぐちょぐちょになっているのにだめなわけないだろ、ほら、もっとイかせてやる!」
「ああっ、んん……っはげし、っ……」
どう考えても言葉にするにも憚られるような行為をしているに違いない。
結婚式を数週間後に控えている身でありながら、自宅に女を連れ込んでこんなこと……あまりのクズっぷりに吐き気が込み上げる。
身体がぶるぶると震えて立っていられない。
声も出せずに倒れそうになっていると、後ろからガシッと誰かが抱きしめてくれた。
「大丈夫ですか? ソフィアさま」
私を支え、声をかけてくれたのは気づかない間に私の後ろからついてきてくれたらしい護衛騎士だった。
護衛騎士にも中の声はしっかりと届いているようで、彼の表情が一気に怒気を孕んだのがありありと伝わってくる。
「ソフィアさま、奴をどうなさるおつもりでございますか?」
相当怒っているのだろう。
リアムを奴と呼んだことに少し溜飲が下がる。
私の気持ちに寄り添ってこんなにも怒ってくれることが嬉しくて身体の震えが落ち着いてきた。
よし。
私は意を決して、目の前の扉をバーーンと開け放した。
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