転生王子の常識は非常識らしいです!

四六くま

文字の大きさ
6 / 14
第一章 転生者、ルーク・グランバート

3 キーン先生と属性の授業

しおりを挟む
自分の部屋に入ろうとしたところで後ろから名前を呼ばれた。振り返るとそこには走って追いかけてきたのか、息を切らしている父様の姿があった。
「お父様、どうかされましたか?」
「いやー、さっき言おうとしてすっかり忘れててな。実は今日からルークの家庭教師が来るんだ」
「家庭教師?」
「そうだ。私の幼馴染みなんだがな、この国では五本の指に入る実力を持つからな」
へぇー、そんなすごい人が幼馴染みなんだ。
なんだろう、剣術かな?それとも魔法?もしかしたら体術かも。
「あぁ、ちなみにそいつは魔法を専門としておる」
やっぱり魔法使いだったか。始めての魔法だからな、どんな属性があってどんなことができるんだろう。うー、なんか凄くわくわくしてきた!
「父様!その先生はいついらしてくださるのですか!」
僕が興奮ぎみに言うと後ろから、
「もう来ていますよ、ルーク様」
と声がかけられ、僕が驚いて振り向くとそこにはムキムキの気前の良さそうな男性が立っていた。
この人が····
「予想外の見た目だろう?彼がルークの家庭教師だ」
父様が笑いながら説明してくれた。
だけど····だけど!
「予想外のレベル越えてますよ!」
なんでプロレスラーみたいな体型の人が魔法使いなんだよ。そして何より、
「まさかの猫耳っ!」
「しっぽも付いとるぞ」
「体型が台無し!」
「なっ···!」
あー、なんで猫耳なんだろう。
本当もったいない。
「あー、その、こいつはキーン・ドール。人間と獣人のハーフなんだ」
ハーフ!え、すごい!キーン先生の好感度一気に上がったよ!へぇー、ハーフねぇ。いいじゃないの、うんうん。
「えっと、ルーク様?どうれましたか、急にニヤけだしまして」
「え、そんな顔してたかな」
「「(コクリ)」」
あちゃあー、やっぱ僕すぐ顔に出ちゃうな。朝食の時といい今といい。
「そ、それではいつから勉強をはじめるのですか」
半ば無理やり話をかえて二人に聞くと、キーン先生は少し驚いたようだった。
「どうされましたか」
と僕が聞くと、父様が代わりに答えてくれた。
「もしかしたらルークはまだ知らんかもしれんが、獣人というのは世間では、忌み嫌われている存在なのだ」
「え━━それは何故でしょうか」
僕の問いにはキーン先生が答えてくれた。
「獣人というのは、諸説ありますが魔物が変化して成った存在だと言われているのです」
つまり、先祖が魔物かもしれないって理由だけでそういわれているの。そんなの関係ないのに····
「キーンは獣人のハーフであるが、国が認めるほどの実力と功績を出した。だからレグルス国の国民はキーンを恐れたり嫌がることはない。ただ━━━━」
「全ての獣人に対してそう思っているわけではない」
そうか、この国でキーン先生が普通に暮らせるのは、それがキーン先生だから・・・
決して国民が獣人に心は開いているわけではないんだ。
そんなの━━━━





「おかしいよ」



僕の声が前を歩いている二人に聞こえたかは分からない。でも、

「では、二時間後に庭園で一回目の授業をするとしようか」
「は、はい!」

二人は頷いてくれたような気がした。






キーン先生の授業は目の前で実践をしてくれたり、魔法の使うときのイメージを明確に教えてくれたりと、教え方が(見た目に似合わず)とても上手かった。
今日習ったのは主に魔法の属性と唱え方だった。属性というのは、ある国民的ゲームで例えるなら『タイプ』のことである。
その属性の種類は全部で6種類あり、
『火』『水』『木』『土』『光』『闇』である。
火、水、木、土はイメージがつきやすく、国民の中でもメジャーであり、身近な属性である。さらに、この四属性は火なら熱・乾燥、水なら氷・霧、木なら風、土は傀儡、のようにそれぞれが発展した形にすることもできる。(先生がいうにはイメージが難しいためこっちはあまりメジャーではないらしい)
そして次に光と闇だが、この二つはとにかく特殊で、どちらかの属性が使える者は三万人に一人、どちらも使える者は五十万人に一人、と極めて珍しいらしい。(ちなみに先生は闇が使えるらしい)
光は光・回復であり、闇は靄(もや)・召喚と学んだ。光が使えても回復が使えない、また、靄が使えても召喚が使えない事がなんでもイメージが難しいのでほとんどらしい。
先生も実は召喚が出来ないとか。
「まぁ、四属性使えれば十分だけどね」
うーん、僕はやっぱり召喚したいけどなぁ。



次の日の授業は魔法の属性適性検査から始まった。
「じゃあルーク様、この火の魔石に魔力を流してみて」
赤い魔石に手を置いて魔力を流してみた。この魔石というのは鉱山や山から偶然みつかることがある、自分が適性を持っているか調べることのできる石らしい。
「あ、光りだした!」
「じゃあ、火の適性を持っていると判りました。次は水の魔石に」
なんでも、適性があると光るらしい。もしなかったらどんなに魔力を流しても光らないんだとか。
「すごいじゃないか!四属性とも使えるよ!あとは二属性だね」
僕は次の魔石を手に取った━━━━








結果、全属性が適性でした。
「き、奇跡だぁ!」
自分のことのように跳びはねて喜ぶキーン先生に
「たまたま五十万人目だったのかな」
というと先生は肩で息をしながら
「いいですか、ルーク様。全属性が使える人はただたまたまというわけではございません。魔力量が一定以上もつ者であり、自然界が認める者であり、なにより、である事が条件といわれているのです!」


か、神··········

心当たりなら、ないこともない。
「そ、そんなに珍しいんですか?」
「もちろんです!何せ、この国では最後に現れたのが五十年程昔なんです!」
五十年っ!!何してくれてんの神様!

『ご、ごめんなさいっ』

ん?また何か聞こえた気がする。なんだろう。
「直ちにルーン国王陛下に伝えなくては!」
「え?あ、ちょっと待····」
足、めちゃ速いな····。


僕って━━━非常識なのかなぁ?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

処理中です...