1 / 1
~乙女ゲーによくあるターニングポイント前夜の話~
しおりを挟む
私は悩んでいる。
ひょっとしたら人生一ってぐらい悩んでいる。
なぜならば――
「ヒロインのパンツって何色だ?」
――という悩みを抱えているからに他ならない。
とっても真剣に。
これはつい最近、いわゆる異世界と呼ばれる所に私が転生してしまった事に端を発する。
転生した異世界は私の見知った乙女ゲーの世界であり、私はヒロインという役柄の貴族令嬢。
どのルートを選んでも悲劇しか待っていない悪役令嬢でなかった事は幸いではあったが……。
もう既に重要な場面の所にまで来てしまっているのでどうとも動きようがないのが現状だ。
「私好みでいくと――だめだよな~ぁ」
純粋という言葉をそのまま形にしたようなこのキャラクターの取り扱いについては慎重にしなければならないと、かれこれ約一時間は唸っているのだった。
ここで選択を一歩間違えば悪役令嬢と似た様な事にもなりかねない可能性だってあるからだ。
その一つがこれ――パンツ問題である。
「ここはやはり定番の白……か? だがピンクというのも可愛らしく――」
中世ヨーロッパ風の異世界だからか、前世に比べると服装や下着はいかにも中世っぽい様なレトロなデザインではあるし色味も少ない。
下着だってTバックやブラジャー等と種類があった前世ほどはない。
とはいえ前世で男であった私には女性用下着の全部を把握しているわけがなく、そこの細かいところまでは知らないのだが。
この世界での女性用下着――パンツは二種類存在する。
ロングか、ショートか……だ。
ロングの物はドロワーズと呼ばれ、前世では古めかしい絵の中でちょいちょい見たことのあるあれだ。
そして膝辺りまで丈があるからか、使っているのはそれなりに年が上の人ばかりの代物である。
一方でショートの方はといえば、かぼちゃパンツを思い出してみるとよく分かると思う。
あれが最も近く、子供や若い人は皆こっちを愛用している。
「色気がない!」
それが私のストレートな印象だ。
だがしかし、明日にはこれに関する大事な場面が待ち構えているのだ。
明日は貴族学園に入学してから最初の学園祭最終日。
物寂しくなった私は人のあまり通らない所にある木に登って太い枝に座り、上から見下ろす。
そこへ攻略対象であり悪役令嬢の婚約者でもある第二王子が登場。
不意に声を掛けられた私は下へと落ち、第二王子を下敷きにしてしまう。
その際に第二王子の顔がスカートの中へと入ってしまい、サッとよけた私を見て起き上がりながらフッと笑って「いつも強気でお転婆な君でも、こんな可愛らしい色の下着を身につけるのだな」と言われるのだ。
そこでヒロインが「私だって女の子ですもの!」と顔を真っ赤にしてれて隠しから怒る。
第二王子は「ハハッ。悪い、悪い。なんとなく普段の君のイメージから黒だとかと思っていたのでね」と言って頭を撫でるのだ。
ヒロインはそこで「もうっ!」と第二王子の胸にコツンと頭を預け、顔を埋める。
そうしてまた少し距離が縮まるという話で……。
「さぁ――何色が正解だ?」
あの第二王子に『可愛い』と言ってもらえるような色のパンツを選ばなければ、もしかしたら私の人生は破綻するかもしれない。
ベッドの上に散らかして広げた色とりどりのパンツを眺め、私は長々とあーでもないこーでもないと呟きながら苦悶していた。
明日は決戦の日。
その為に今日、私の夜は更けていくのだった……。
ひょっとしたら人生一ってぐらい悩んでいる。
なぜならば――
「ヒロインのパンツって何色だ?」
――という悩みを抱えているからに他ならない。
とっても真剣に。
これはつい最近、いわゆる異世界と呼ばれる所に私が転生してしまった事に端を発する。
転生した異世界は私の見知った乙女ゲーの世界であり、私はヒロインという役柄の貴族令嬢。
どのルートを選んでも悲劇しか待っていない悪役令嬢でなかった事は幸いではあったが……。
もう既に重要な場面の所にまで来てしまっているのでどうとも動きようがないのが現状だ。
「私好みでいくと――だめだよな~ぁ」
純粋という言葉をそのまま形にしたようなこのキャラクターの取り扱いについては慎重にしなければならないと、かれこれ約一時間は唸っているのだった。
ここで選択を一歩間違えば悪役令嬢と似た様な事にもなりかねない可能性だってあるからだ。
その一つがこれ――パンツ問題である。
「ここはやはり定番の白……か? だがピンクというのも可愛らしく――」
中世ヨーロッパ風の異世界だからか、前世に比べると服装や下着はいかにも中世っぽい様なレトロなデザインではあるし色味も少ない。
下着だってTバックやブラジャー等と種類があった前世ほどはない。
とはいえ前世で男であった私には女性用下着の全部を把握しているわけがなく、そこの細かいところまでは知らないのだが。
この世界での女性用下着――パンツは二種類存在する。
ロングか、ショートか……だ。
ロングの物はドロワーズと呼ばれ、前世では古めかしい絵の中でちょいちょい見たことのあるあれだ。
そして膝辺りまで丈があるからか、使っているのはそれなりに年が上の人ばかりの代物である。
一方でショートの方はといえば、かぼちゃパンツを思い出してみるとよく分かると思う。
あれが最も近く、子供や若い人は皆こっちを愛用している。
「色気がない!」
それが私のストレートな印象だ。
だがしかし、明日にはこれに関する大事な場面が待ち構えているのだ。
明日は貴族学園に入学してから最初の学園祭最終日。
物寂しくなった私は人のあまり通らない所にある木に登って太い枝に座り、上から見下ろす。
そこへ攻略対象であり悪役令嬢の婚約者でもある第二王子が登場。
不意に声を掛けられた私は下へと落ち、第二王子を下敷きにしてしまう。
その際に第二王子の顔がスカートの中へと入ってしまい、サッとよけた私を見て起き上がりながらフッと笑って「いつも強気でお転婆な君でも、こんな可愛らしい色の下着を身につけるのだな」と言われるのだ。
そこでヒロインが「私だって女の子ですもの!」と顔を真っ赤にしてれて隠しから怒る。
第二王子は「ハハッ。悪い、悪い。なんとなく普段の君のイメージから黒だとかと思っていたのでね」と言って頭を撫でるのだ。
ヒロインはそこで「もうっ!」と第二王子の胸にコツンと頭を預け、顔を埋める。
そうしてまた少し距離が縮まるという話で……。
「さぁ――何色が正解だ?」
あの第二王子に『可愛い』と言ってもらえるような色のパンツを選ばなければ、もしかしたら私の人生は破綻するかもしれない。
ベッドの上に散らかして広げた色とりどりのパンツを眺め、私は長々とあーでもないこーでもないと呟きながら苦悶していた。
明日は決戦の日。
その為に今日、私の夜は更けていくのだった……。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
悪役令嬢のいない乙女ゲームに転生しました
かぜかおる
ファンタジー
悪役令嬢のいない乙女ゲームに転生しました!しかもサポートキャラ!!
特等席で恋愛模様を眺められると喜んだものの・・・
なろうでも公開中
妹が「この世界って乙女ゲーじゃん!」とかわけのわからないことを言い出した
無色
恋愛
「この世界って乙女ゲーじゃん!」と言い出した、転生者を名乗る妹フェノンは、ゲーム知識を駆使してハーレムを作ろうとするが……彼女が狙った王子アクシオは、姉メイティアの婚約者だった。
静かな姉の中に眠る“狂気”に気付いたとき、フェノンは……
転生ヒロインは乙女ゲームを始めなかった。
よもぎ
ファンタジー
転生ヒロインがマトモな感性してる世界と、シナリオの強制力がある世界を混ぜたらどうなるの?という疑問への自分なりのアンサーです。転生ヒロインに近い視点でお話が進みます。激しい山場はございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる