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第3章 オフィーリア国、最初の街
8.朝の市場にて
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起きしなから予想外の出来事が起こり、バタバタとしてしまっていたが、今日は教会に行くという予定にしていたことは変えなかった。
「このまま先に教会へ行くってわけにはいかないから…、まずはパウロの服とかを買いに行こうか。」
予定していたよりは少し遅くなってしまったが、俺たちは皆で市場に向かう事にした。
朝の慌ただしく人がたくさん行きかう中を人間よりも小さな猫たちが歩くのは危ないからと思い、留守番しててと言ってもパウロ様のお傍を離れるわけにはいかないのでと押し切られてしまい、しょうがないからとアダムとイブはパウロに抱っこしてもらっていた。
俺とリリアがパウロの変化に驚いていた時、そのアダムとイブは……寝ていた。
けっこうワァワァと騒がしくしていたのにも関わらず、久しぶりのふかふかとしたベッドにすっかりと熟睡しきっていた様だ。
「野生はどこに置いてきたんだ……。警戒心はどうしたんだよ……。」
俺が市場に行ってそのまま教会に行くから留守にしててとお願いする為に起こす時までムニャムニャと気持ち良さそうに2匹で丸まって寝ていたのにはちょっと呆れた。
だからアダムとイブは、俺とリリアとは1テンポ遅れてパウロの人間へと変化した姿に驚いており、今も抱かれている腕の中から見上げてジーっと2匹揃ってパウロの顔を見つめていた。
「あっ! お兄ちゃん。ここの服なんていいんじゃない?」
「いらっしゃい。」
大通り横にある広場に連なる多くの多種多様な屋台によって賑わっている朝の市場で、パウロに似合う服は無いかと探して歩いていると、リリアが1軒の屋台に足を止めた。
「お嬢ちゃんが着るにはちょっと…大きいよ?」
「違うの! 私じゃなくてこの子が着るんだよ。」
リリアは自分の後ろに居た、フードを被って頭にある猫の耳を隠し、ローブですっぽりと体を隠したパウロを指し示した。
「ほぉ…、その姉さんにかい。姉さんにだとこれは少し小さい気もするから…、こっちなんてどうだい?」
店主のオジさんが勧めてくれたのは藍色のワンピースの上にピラピラとしたフリルが付いた白いエプロンという組み合わせの、いかにもなメイド服だった。
「かわい~ぃ!」
勧められた服を見て、リリアは嬉しそうな声をあげた。
「これ、ちょうど良いと思うんだけどね…。買う人多いよ~。ヒッヒッヒッヒッヒッ…。」
「えっと…。この子のサイズが分からないから試着してからじゃないと買えないんだよね~。」
「じゃああっしの後ろにあるテントを使いな。」
そう言われて奥を見ると、店主のオジさんの背後には試着室にちょうど良さそうな感じに高さのある、小さなテントが張ってあった。
「ではお借りして……。」
「リリアが手伝うからね! お兄ちゃん!」
猫であるパウロだけでは服を着れないだろうと俺が一緒にテントに入ろうとすると、リリアが食い気味に私がするからとパウロが抱っこしていたアダムとイブを俺に渡し、止めに入ってきた。
「あっ、あぁ……。勿論だよ。」
その様子を見ていた店主のオジさんは俺と目が合うと、ニヤニヤと笑いながら「残念だったな。」と俺に耳打ちしてきた。
「お、俺は別にやましい気持ちなんて……!」
猫であるパウロにそんな気持ちはないという思いから、両手を顔の前で振って慌てて否定した。
「ヒッヒッヒッヒッヒッ! そう否定しなさんな。別に健康な男の証拠なんだから何も悪い事じゃないぜ。可愛い女の子を2人も連れて歩いているんだからさっ。」
店主のオジさんの言葉にたじろいでしまった俺は思いっきり挙動不審になってしまい、怪しまれない様にと試着しているテントから2人が出てくる前に落ち着こうと深呼吸を繰り返した。
「んっ? どうしたの? お兄ちゃん。」
俺の思わず出してしまった大声にテントからリリアがひょっこり顔を出して尋ねてきた。
「な、何も無いから。なっ! おっちゃん。」
「ヒッヒッヒッヒッヒッヒッ!」
店主のオジさんは俺の事をフォローしてくれるでもなく、ニヤニヤと笑うだけだった。
「ふ~ん……。」
「で、どうなんだ? サイズとかは……。」
俺はまたリリアにスケベだのと言われかねない事を避ける為に、話題を変えて必死で平静を取り繕った。
「サイズね~ぇ……。ちょっとパウロには小さいみたい……主に胸が。」
「……胸?」
「そう…。他は良いんだけど胸の部分だけがどうしても引っかかって着れなくてさ…。」
俺は『胸が入らない』という言葉に不覚にも少し顔が緩んでしまった。
「……お兄ちゃん?」
「んっ? あぁ、ごめん…。それなら他の店も見てみるしかないな。ごめんな、おっちゃん。」
試着室にしていたテントから出てきたリリアとパウロを連れ、この後も何軒か店を巡った。
流石エルフの国とでも言うべきか、良さげな服を見つける度に試着をさせてもらったが人間の姿ではちょっと胸の大きなパウロには入る服はなかなか無かった。
「これで見つからなかったらお手上げだ…。」
そう言って最後に入ったちょっと怪しい雰囲気のする商人の屋台にはどれも露出度の高そうな服ばかりが並んでいたが、市場に並んでいる服の中で一番パウロに入る可能性が高そうではあった。
「……とりあえず着てみようか。ここにある服が一番入りそうな感じだし。ローブ着てれば露出度もそんなには気にならないだろ。」
俺の発言に複雑そうな表情をしているリリアを不思議そうにパウロは見ていた。
「まぁ、他に選択肢が無さそうなんだから仕方ないわね。」
リリアはしぶしぶ納得し、試着してみても窮屈な所が無く、サイズはピッタリだった。
「おっちゃん、これ貰うよ。」
「はいよ!」
俺は代金を支払い、残りの買い物もちゃちゃっと済ませようとまた皆で屋台巡りを始めた。
「あとは下着と綺麗な布を数枚と……、服ばかり考えててすっかりと忘れてたけど靴だな。んで、メインの教会に寄付する為の物を何かしら買って早く教会に行こうか。」
「このまま先に教会へ行くってわけにはいかないから…、まずはパウロの服とかを買いに行こうか。」
予定していたよりは少し遅くなってしまったが、俺たちは皆で市場に向かう事にした。
朝の慌ただしく人がたくさん行きかう中を人間よりも小さな猫たちが歩くのは危ないからと思い、留守番しててと言ってもパウロ様のお傍を離れるわけにはいかないのでと押し切られてしまい、しょうがないからとアダムとイブはパウロに抱っこしてもらっていた。
俺とリリアがパウロの変化に驚いていた時、そのアダムとイブは……寝ていた。
けっこうワァワァと騒がしくしていたのにも関わらず、久しぶりのふかふかとしたベッドにすっかりと熟睡しきっていた様だ。
「野生はどこに置いてきたんだ……。警戒心はどうしたんだよ……。」
俺が市場に行ってそのまま教会に行くから留守にしててとお願いする為に起こす時までムニャムニャと気持ち良さそうに2匹で丸まって寝ていたのにはちょっと呆れた。
だからアダムとイブは、俺とリリアとは1テンポ遅れてパウロの人間へと変化した姿に驚いており、今も抱かれている腕の中から見上げてジーっと2匹揃ってパウロの顔を見つめていた。
「あっ! お兄ちゃん。ここの服なんていいんじゃない?」
「いらっしゃい。」
大通り横にある広場に連なる多くの多種多様な屋台によって賑わっている朝の市場で、パウロに似合う服は無いかと探して歩いていると、リリアが1軒の屋台に足を止めた。
「お嬢ちゃんが着るにはちょっと…大きいよ?」
「違うの! 私じゃなくてこの子が着るんだよ。」
リリアは自分の後ろに居た、フードを被って頭にある猫の耳を隠し、ローブですっぽりと体を隠したパウロを指し示した。
「ほぉ…、その姉さんにかい。姉さんにだとこれは少し小さい気もするから…、こっちなんてどうだい?」
店主のオジさんが勧めてくれたのは藍色のワンピースの上にピラピラとしたフリルが付いた白いエプロンという組み合わせの、いかにもなメイド服だった。
「かわい~ぃ!」
勧められた服を見て、リリアは嬉しそうな声をあげた。
「これ、ちょうど良いと思うんだけどね…。買う人多いよ~。ヒッヒッヒッヒッヒッ…。」
「えっと…。この子のサイズが分からないから試着してからじゃないと買えないんだよね~。」
「じゃああっしの後ろにあるテントを使いな。」
そう言われて奥を見ると、店主のオジさんの背後には試着室にちょうど良さそうな感じに高さのある、小さなテントが張ってあった。
「ではお借りして……。」
「リリアが手伝うからね! お兄ちゃん!」
猫であるパウロだけでは服を着れないだろうと俺が一緒にテントに入ろうとすると、リリアが食い気味に私がするからとパウロが抱っこしていたアダムとイブを俺に渡し、止めに入ってきた。
「あっ、あぁ……。勿論だよ。」
その様子を見ていた店主のオジさんは俺と目が合うと、ニヤニヤと笑いながら「残念だったな。」と俺に耳打ちしてきた。
「お、俺は別にやましい気持ちなんて……!」
猫であるパウロにそんな気持ちはないという思いから、両手を顔の前で振って慌てて否定した。
「ヒッヒッヒッヒッヒッ! そう否定しなさんな。別に健康な男の証拠なんだから何も悪い事じゃないぜ。可愛い女の子を2人も連れて歩いているんだからさっ。」
店主のオジさんの言葉にたじろいでしまった俺は思いっきり挙動不審になってしまい、怪しまれない様にと試着しているテントから2人が出てくる前に落ち着こうと深呼吸を繰り返した。
「んっ? どうしたの? お兄ちゃん。」
俺の思わず出してしまった大声にテントからリリアがひょっこり顔を出して尋ねてきた。
「な、何も無いから。なっ! おっちゃん。」
「ヒッヒッヒッヒッヒッヒッ!」
店主のオジさんは俺の事をフォローしてくれるでもなく、ニヤニヤと笑うだけだった。
「ふ~ん……。」
「で、どうなんだ? サイズとかは……。」
俺はまたリリアにスケベだのと言われかねない事を避ける為に、話題を変えて必死で平静を取り繕った。
「サイズね~ぇ……。ちょっとパウロには小さいみたい……主に胸が。」
「……胸?」
「そう…。他は良いんだけど胸の部分だけがどうしても引っかかって着れなくてさ…。」
俺は『胸が入らない』という言葉に不覚にも少し顔が緩んでしまった。
「……お兄ちゃん?」
「んっ? あぁ、ごめん…。それなら他の店も見てみるしかないな。ごめんな、おっちゃん。」
試着室にしていたテントから出てきたリリアとパウロを連れ、この後も何軒か店を巡った。
流石エルフの国とでも言うべきか、良さげな服を見つける度に試着をさせてもらったが人間の姿ではちょっと胸の大きなパウロには入る服はなかなか無かった。
「これで見つからなかったらお手上げだ…。」
そう言って最後に入ったちょっと怪しい雰囲気のする商人の屋台にはどれも露出度の高そうな服ばかりが並んでいたが、市場に並んでいる服の中で一番パウロに入る可能性が高そうではあった。
「……とりあえず着てみようか。ここにある服が一番入りそうな感じだし。ローブ着てれば露出度もそんなには気にならないだろ。」
俺の発言に複雑そうな表情をしているリリアを不思議そうにパウロは見ていた。
「まぁ、他に選択肢が無さそうなんだから仕方ないわね。」
リリアはしぶしぶ納得し、試着してみても窮屈な所が無く、サイズはピッタリだった。
「おっちゃん、これ貰うよ。」
「はいよ!」
俺は代金を支払い、残りの買い物もちゃちゃっと済ませようとまた皆で屋台巡りを始めた。
「あとは下着と綺麗な布を数枚と……、服ばかり考えててすっかりと忘れてたけど靴だな。んで、メインの教会に寄付する為の物を何かしら買って早く教会に行こうか。」
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