41 / 89
第3章 オフィーリア国、最初の街
10.闇の祝福
しおりを挟む
「神様。教えられた街へ行き、そこで得た情報によって魔物を倒し、仲間も増えて、このオフィーリア国まで来ることができました。ですが少し気になることがあって…、お聞きしたいことがあります。」
「はい。なんでしょう?」
「…ゥアッ!?」
突然耳元で聞こえてきた声に俺は驚き、ビクンッと後ろに仰け反ってしまった。
「……えぇっ?」
目を開けた俺の前には軽四自動車ぐらいの大きさをした黄色い鳩が居り、周りは以前と同じく温かな光に包まれていて、外とは時間が切り離された亜空間の中だった。
「おはよう、ルカ。」
その鳩は俺と目を合わせると、ニッコリと微笑んだ。
「もしかして……神様? この国ではその姿なのか?」
「えぇ。君の反応はいつ見ても面白いですね。」
「聞いてはいたけどさ…。前とは見た目が違うし、突然耳元に話しかけるからちょっと驚いてしまっただけだよ。でも大きくて黄色い鳩って……、昨晩聞いた精霊の話に出てきたやつみたいだ。」
神様がフフッと楽しそうに笑っているので俺はなんだか少し恥ずかしくなってしまい、慌てて神様に聞こうと思っていた事を話し始めた。
「…あっ! あのさ! ……ヒュドラの事で聞きたい事があったんだよ。神様に言われた街へ行って情報収集をしたら、近くにある神聖な山って言われている所にヒュドラが突然住み着き始めて変だって聞いて…。それで俺、調査に行ったら傍にある村の人を生贄に出せとか言ってるって聞いてさ、仕方なく倒したんだ。」
地球で“魚類・爬虫類・哺乳類”といった様に生物が分類されているのと同じ様に、この世界『聖なる庭園』では“火・水・大地・風……そして光と闇”の6種類の属性ですべての生き物は分類されているらしい。
そして魔法の存在する『聖なる庭園』では、量の多少の違いはあれども全ての生きとし生けるものが魔力を持ち、その6種類の属性バランスによって世界は安寧を留めている。
しかし何れかの属性の生き物がもし増えすぎたり減り過ぎたりすれば世界はバランスを崩し、大きな災いが起こってしまうとされているのが常識であるのだ。
それ故に増えすぎた魔物を狩る職業である狩人や、酪農を行っている農村などが祭りの為だったり街へ肉を出荷する為に生き物を絞める時にはまず始めに神様の御声を賜る為にお祈りをし、天啓によって決められた日に決められた数だけしか殺してはならないという絶対的な世界のルールが存在する。
だから魔物と言えども殺すとなるとその都度必ず神様にお伺いを立てなければならず、それがある一定のレベル以上の生き物だと1個体殺しただけでも世界のバランスに影響してしまうらしいので迂闊なことはできない。
「そうですか……、村人を襲おうとしていたのなら仕方がないですね。ヒュドラは水属性…。ちょうどそろそろ水属性の生き物を減らす時期ではあったので然程世界バランスには影響は出ないでしょうから問題はないです。しかし聖なる山にですか……。あそこは特殊な場所で、神聖なる力が強すぎて弱き者しか近寄ることすらできなかったはずですが……。やはり何者かに聖書が破壊された影響によるものでしょうか……。」
神様が考え事をしだしたのでそれを遮る様に俺は語気を強めて話を続けた。
「それでさ、神様! そのヒュドラを倒した後に体の中から黒い影の様な物が出て来て俺を襲って来たんだ。『“ヤツ”が何かしておるとは思っていたが』とも言われたんだけど……あれは、何?」
俺が『影』と口にした瞬間、神様の体はビクッとなって強張り、タラリと冷や汗を掻いて顔色が悪くなった。
「…あれは……、あれ、は…………。」
「ん? どうしたんだ?」
神様は何かに怯え、その恐怖からワナワナと小刻みに震えている口からは先に続くべき言葉がなかなか出ない様であった。
「あれは……、邪神です。この世界において闇を司るもの……。ヒュドラの体から影が飛び出してきたという事は、邪神の祝福を受けていたという事なのでしょう。恐らくはそのせいで神聖なる山に住み着く様になり、人を欲していたのだと……。」
「祝福?」
「えぇ……。生き物たちには皆等しく、この世に生まれ出づる時に私の子供たちである四大属性の精霊王の内、何れかの属性の祝福を授けるのです。そして四大属性とは違って光属性は特別なもので、聖人の子孫たちの中で王位を継ぐ者や神聖なる生き物といった一部の生き物に限り私から祝福を授けているのですが……、闇属性の誕生は更にそれらとは全く異なり、すでに別の属性の祝福を受けて生まれ育っている個体の中から邪神が気に入った者が眷属として祝福を受けることで存在する様になるのです。また闇属性の祝福を受けると身体の構造も変わり、人間を好んで食べる様になります。しかも闇属性に限っては屍の状態でも祝福を受ける事ができ、それはアンデッドとなって純粋なる闇属性の力によって凶悪化してしまうので危険です。けれどもそんな者たちもまた、この世界のバランスの為の大切な一部なのです。」
そこまで言うと神様は目を閉じて俯いた。
俺の質問にはある程度答えてはくれたが、神様はまだまだ俺に大事な事を隠している様子だった。
「邪神か……。聖書の破壊による世界の異変はその邪神のせいなのか?」
「いえ……、それはまだ………分かりません。ですが今回の事で邪神は君の存在を邪魔だと思ってまた殺しに来るでしょう…。充分にご注意ください。」
神様がチラリと横を見ると、そこにはリリアやパウロたちの姿があった。
「君にも大切な人ができたのですね。大切な人たちの為にも注意を怠ってはなりませんよ。」
「あぁ……。そうだ! パウロが地球で俺と暮らしていたって言ってたんだけど…。」
「君の思っている通り、地球で共に育ったあのクロです。彼は死後、君が寿命を終えるのを虹の橋で待っていたのですが、私が君をこちらへ呼んだ時にその近くを通ったのでうっかりと付いてきちゃったんですよ。君とは違って赤ん坊からのスタートなので記憶は無いはずなのですが、君への思いの深さから少し残ってしまっている様ですね。そこまで思われているなんて君は幸せ者です。」
「はい。なんでしょう?」
「…ゥアッ!?」
突然耳元で聞こえてきた声に俺は驚き、ビクンッと後ろに仰け反ってしまった。
「……えぇっ?」
目を開けた俺の前には軽四自動車ぐらいの大きさをした黄色い鳩が居り、周りは以前と同じく温かな光に包まれていて、外とは時間が切り離された亜空間の中だった。
「おはよう、ルカ。」
その鳩は俺と目を合わせると、ニッコリと微笑んだ。
「もしかして……神様? この国ではその姿なのか?」
「えぇ。君の反応はいつ見ても面白いですね。」
「聞いてはいたけどさ…。前とは見た目が違うし、突然耳元に話しかけるからちょっと驚いてしまっただけだよ。でも大きくて黄色い鳩って……、昨晩聞いた精霊の話に出てきたやつみたいだ。」
神様がフフッと楽しそうに笑っているので俺はなんだか少し恥ずかしくなってしまい、慌てて神様に聞こうと思っていた事を話し始めた。
「…あっ! あのさ! ……ヒュドラの事で聞きたい事があったんだよ。神様に言われた街へ行って情報収集をしたら、近くにある神聖な山って言われている所にヒュドラが突然住み着き始めて変だって聞いて…。それで俺、調査に行ったら傍にある村の人を生贄に出せとか言ってるって聞いてさ、仕方なく倒したんだ。」
地球で“魚類・爬虫類・哺乳類”といった様に生物が分類されているのと同じ様に、この世界『聖なる庭園』では“火・水・大地・風……そして光と闇”の6種類の属性ですべての生き物は分類されているらしい。
そして魔法の存在する『聖なる庭園』では、量の多少の違いはあれども全ての生きとし生けるものが魔力を持ち、その6種類の属性バランスによって世界は安寧を留めている。
しかし何れかの属性の生き物がもし増えすぎたり減り過ぎたりすれば世界はバランスを崩し、大きな災いが起こってしまうとされているのが常識であるのだ。
それ故に増えすぎた魔物を狩る職業である狩人や、酪農を行っている農村などが祭りの為だったり街へ肉を出荷する為に生き物を絞める時にはまず始めに神様の御声を賜る為にお祈りをし、天啓によって決められた日に決められた数だけしか殺してはならないという絶対的な世界のルールが存在する。
だから魔物と言えども殺すとなるとその都度必ず神様にお伺いを立てなければならず、それがある一定のレベル以上の生き物だと1個体殺しただけでも世界のバランスに影響してしまうらしいので迂闊なことはできない。
「そうですか……、村人を襲おうとしていたのなら仕方がないですね。ヒュドラは水属性…。ちょうどそろそろ水属性の生き物を減らす時期ではあったので然程世界バランスには影響は出ないでしょうから問題はないです。しかし聖なる山にですか……。あそこは特殊な場所で、神聖なる力が強すぎて弱き者しか近寄ることすらできなかったはずですが……。やはり何者かに聖書が破壊された影響によるものでしょうか……。」
神様が考え事をしだしたのでそれを遮る様に俺は語気を強めて話を続けた。
「それでさ、神様! そのヒュドラを倒した後に体の中から黒い影の様な物が出て来て俺を襲って来たんだ。『“ヤツ”が何かしておるとは思っていたが』とも言われたんだけど……あれは、何?」
俺が『影』と口にした瞬間、神様の体はビクッとなって強張り、タラリと冷や汗を掻いて顔色が悪くなった。
「…あれは……、あれ、は…………。」
「ん? どうしたんだ?」
神様は何かに怯え、その恐怖からワナワナと小刻みに震えている口からは先に続くべき言葉がなかなか出ない様であった。
「あれは……、邪神です。この世界において闇を司るもの……。ヒュドラの体から影が飛び出してきたという事は、邪神の祝福を受けていたという事なのでしょう。恐らくはそのせいで神聖なる山に住み着く様になり、人を欲していたのだと……。」
「祝福?」
「えぇ……。生き物たちには皆等しく、この世に生まれ出づる時に私の子供たちである四大属性の精霊王の内、何れかの属性の祝福を授けるのです。そして四大属性とは違って光属性は特別なもので、聖人の子孫たちの中で王位を継ぐ者や神聖なる生き物といった一部の生き物に限り私から祝福を授けているのですが……、闇属性の誕生は更にそれらとは全く異なり、すでに別の属性の祝福を受けて生まれ育っている個体の中から邪神が気に入った者が眷属として祝福を受けることで存在する様になるのです。また闇属性の祝福を受けると身体の構造も変わり、人間を好んで食べる様になります。しかも闇属性に限っては屍の状態でも祝福を受ける事ができ、それはアンデッドとなって純粋なる闇属性の力によって凶悪化してしまうので危険です。けれどもそんな者たちもまた、この世界のバランスの為の大切な一部なのです。」
そこまで言うと神様は目を閉じて俯いた。
俺の質問にはある程度答えてはくれたが、神様はまだまだ俺に大事な事を隠している様子だった。
「邪神か……。聖書の破壊による世界の異変はその邪神のせいなのか?」
「いえ……、それはまだ………分かりません。ですが今回の事で邪神は君の存在を邪魔だと思ってまた殺しに来るでしょう…。充分にご注意ください。」
神様がチラリと横を見ると、そこにはリリアやパウロたちの姿があった。
「君にも大切な人ができたのですね。大切な人たちの為にも注意を怠ってはなりませんよ。」
「あぁ……。そうだ! パウロが地球で俺と暮らしていたって言ってたんだけど…。」
「君の思っている通り、地球で共に育ったあのクロです。彼は死後、君が寿命を終えるのを虹の橋で待っていたのですが、私が君をこちらへ呼んだ時にその近くを通ったのでうっかりと付いてきちゃったんですよ。君とは違って赤ん坊からのスタートなので記憶は無いはずなのですが、君への思いの深さから少し残ってしまっている様ですね。そこまで思われているなんて君は幸せ者です。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる