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第6章 仲間と絆
10.行き先と答え
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緊急事態だからとついうっかりと説明を省いてしまい、少しばかししまったとは思ったが神様から貰った指輪を見せると一先ずはこの事を受け入れて落ち着いてくれた。
「あっ! ちょっと待つにゃ!! この中に入るなら綺麗にしてから入るにゃ!」
「あっ、あぁ……。すまん。」
取り合えずはとこの人間が精霊の手の中へと足を踏み入れようとした瞬間、世話好きで綺麗好きなイブに威嚇されて動きを止められ、叱られてしまった事にどう返事をしたらいいものかとこの人間はオロオロしていた。
「ルカ様。ルカ様の予備の服があるでしょう。 あれを貸したら如何です? 後、中に乗せるなら水浴びも……。」
「あぁ、分かったよ。」
俺がイブの話に返事をするや否やサッと精霊の手の奥へと積んでいた俺の荷物が入った袋の所へと行き、予備の服を取り出して俺の目の前に置かれた。
「ありがとう、イブ。」
お礼の意味を込めて頭を撫でるとヒゲが動いて先がこちらを向き、目を細めて実に嬉しそうだった。
「じゃあ――ちょっと寒いかもしれないけど、すいません。」
「いえ……。」
俺は水の青い魔晶石と火の赤い魔晶石を同時に使ってお湯を出し、ザっと泥を落としてもらってから服と一緒にイブに用意されていたタオルを渡した。
その人間は着ていた服も脱いで体を拭くと、俺が持って待ち構えていた服を取って素早く着替えた。
「速い……ですね。」
「商売をする者にとって『速さ』は命ですからね。何をするにも早くなければ……ね。」
「へ~ぇ……。まっ、ではサッパリとしたところで、足も拭いてそのまま中に入ってください。この中で靴は履かないようになっているんでその辺は気にしないで……。」
「わ、分かりました。しかしこれ――中もかなり豪華ですねぇ。こういう乗り物には誘拐されて、街から街に移動する為に前に一度乗ったっきりでしたが……もっと簡素で寒々しくて、ただの丸っこい箱って感じでしたよ。この国独自の乗り物って言うのはなんとなくは聞いていましたが……。あれはやはり奴隷を移動させる為の物で、本来はこういうちゃんとした造りの物なんでしょうねぇ。へ~ぇ……。」
精霊の手の中に入ると珍しい物見たさに目をキョロキョロとさせ、視線が落ち着かない感じだった。
「あの………。」
「あっ! そうでした、そうでした。あっしの名前はフェルモ。年は……たぶん二十一か二十二歳かそこらかな。」
「たぶん?」
「暴力を受けたりとか色々あって記憶も曖昧な部分があるし、それに奴隷生活も少なくとも一年以上は経ってて長いから名前以外の細かい事はもう分からなくなっちまってね。」
このフェルモと名乗った人間はハハハッと申し訳なさそうに笑うと頭をポリポリと掻き、苦笑いしていた。
「そう―――ですか。それで……これからどうします? ちょっと連れの――家族に話をしている間に考えておいてください。」
「はい―――。」
フェルモが返事をしたのを聞くと、俺はリリアや起きている猫たちにさっきフェルモから聞いた話を掻い摘んで話した。
「そう……。で、お兄ちゃんは――どうしようと思っているの?」
抱っこしていたイブをギュッと抱き締め、リリアは俺にどう動くのかと聞いてきた。
「う~ん………。夕飯の時にピエトロには話したんだけど、あの黄色エルフの街とは関わるのを避けようと思うんだ。暴言を吐かれて酷いことまでされたから正直……あんまり関わり合いたくないというか………。さっき話した通り今、あそこは予想だにしないトラブルが起こってて危ないと思うけど……俺は助けないことに決めたんだ。だから安心して、リリア。神様の言っていた歪みの可能性は高いとは思うけどもう二度と近付くことも無いから気にしなくてもいい――怖がらなくてもいいよ。」
「―――いいの? 大丈夫なの?」
「あぁ……。神様だって分かってくれるさ。」
俺の言葉にホッとしたのか緊張していたリリアは表情を和らげ、抱っこしていたイブの頭に頬擦りをしていた。
「それで、だ―――。フェルモさんは決まった?」
「えぇ。もし良ければ国境の内側まで――サクラヴェール国の所まであっしを送ってはいただけませんか? サクラヴェール国の中に入ればある程度は安全だし、どうにかなると思うんです。記憶も………加護の内側に居れば体と共に回復することもあるでしょう。ですから―――。」
「分かった! 元よりそのつもりだったから大丈夫だよ! この精霊の手があればすぐだから何の支障もないしね。サッと行ってこようか。」
「―――ありがとう。――ありがとう。」
フェルモは目から大粒の涙をボロボロと溢し、なんども感謝の言葉を述べていた。
「じゃあ………今日の所は寝よう。フェルモさんも皆も疲れているでしょ。」
「はい。」
フェルモと同じタイミングで猫たちもニャアと鳴いて返事をした。
そうして翌朝、夜中に一度も起きなかったパウロとアダムの二人に起こされて少々寝不足のまま、皆で朝ごはんにした。
起き抜けにずっと寝ていた二人の知らない人間が増えていたことに驚いて少々パニックにもなったが、話をすると落ち着きを取り戻していつもの様に朝ごはんを強請ってきたのだから現金なものだ。
朝ごはんを終えると身支度を整え、一路サクラヴェール国との国境まで精霊の手を飛ばした。
「あっ! ちょっと待つにゃ!! この中に入るなら綺麗にしてから入るにゃ!」
「あっ、あぁ……。すまん。」
取り合えずはとこの人間が精霊の手の中へと足を踏み入れようとした瞬間、世話好きで綺麗好きなイブに威嚇されて動きを止められ、叱られてしまった事にどう返事をしたらいいものかとこの人間はオロオロしていた。
「ルカ様。ルカ様の予備の服があるでしょう。 あれを貸したら如何です? 後、中に乗せるなら水浴びも……。」
「あぁ、分かったよ。」
俺がイブの話に返事をするや否やサッと精霊の手の奥へと積んでいた俺の荷物が入った袋の所へと行き、予備の服を取り出して俺の目の前に置かれた。
「ありがとう、イブ。」
お礼の意味を込めて頭を撫でるとヒゲが動いて先がこちらを向き、目を細めて実に嬉しそうだった。
「じゃあ――ちょっと寒いかもしれないけど、すいません。」
「いえ……。」
俺は水の青い魔晶石と火の赤い魔晶石を同時に使ってお湯を出し、ザっと泥を落としてもらってから服と一緒にイブに用意されていたタオルを渡した。
その人間は着ていた服も脱いで体を拭くと、俺が持って待ち構えていた服を取って素早く着替えた。
「速い……ですね。」
「商売をする者にとって『速さ』は命ですからね。何をするにも早くなければ……ね。」
「へ~ぇ……。まっ、ではサッパリとしたところで、足も拭いてそのまま中に入ってください。この中で靴は履かないようになっているんでその辺は気にしないで……。」
「わ、分かりました。しかしこれ――中もかなり豪華ですねぇ。こういう乗り物には誘拐されて、街から街に移動する為に前に一度乗ったっきりでしたが……もっと簡素で寒々しくて、ただの丸っこい箱って感じでしたよ。この国独自の乗り物って言うのはなんとなくは聞いていましたが……。あれはやはり奴隷を移動させる為の物で、本来はこういうちゃんとした造りの物なんでしょうねぇ。へ~ぇ……。」
精霊の手の中に入ると珍しい物見たさに目をキョロキョロとさせ、視線が落ち着かない感じだった。
「あの………。」
「あっ! そうでした、そうでした。あっしの名前はフェルモ。年は……たぶん二十一か二十二歳かそこらかな。」
「たぶん?」
「暴力を受けたりとか色々あって記憶も曖昧な部分があるし、それに奴隷生活も少なくとも一年以上は経ってて長いから名前以外の細かい事はもう分からなくなっちまってね。」
このフェルモと名乗った人間はハハハッと申し訳なさそうに笑うと頭をポリポリと掻き、苦笑いしていた。
「そう―――ですか。それで……これからどうします? ちょっと連れの――家族に話をしている間に考えておいてください。」
「はい―――。」
フェルモが返事をしたのを聞くと、俺はリリアや起きている猫たちにさっきフェルモから聞いた話を掻い摘んで話した。
「そう……。で、お兄ちゃんは――どうしようと思っているの?」
抱っこしていたイブをギュッと抱き締め、リリアは俺にどう動くのかと聞いてきた。
「う~ん………。夕飯の時にピエトロには話したんだけど、あの黄色エルフの街とは関わるのを避けようと思うんだ。暴言を吐かれて酷いことまでされたから正直……あんまり関わり合いたくないというか………。さっき話した通り今、あそこは予想だにしないトラブルが起こってて危ないと思うけど……俺は助けないことに決めたんだ。だから安心して、リリア。神様の言っていた歪みの可能性は高いとは思うけどもう二度と近付くことも無いから気にしなくてもいい――怖がらなくてもいいよ。」
「―――いいの? 大丈夫なの?」
「あぁ……。神様だって分かってくれるさ。」
俺の言葉にホッとしたのか緊張していたリリアは表情を和らげ、抱っこしていたイブの頭に頬擦りをしていた。
「それで、だ―――。フェルモさんは決まった?」
「えぇ。もし良ければ国境の内側まで――サクラヴェール国の所まであっしを送ってはいただけませんか? サクラヴェール国の中に入ればある程度は安全だし、どうにかなると思うんです。記憶も………加護の内側に居れば体と共に回復することもあるでしょう。ですから―――。」
「分かった! 元よりそのつもりだったから大丈夫だよ! この精霊の手があればすぐだから何の支障もないしね。サッと行ってこようか。」
「―――ありがとう。――ありがとう。」
フェルモは目から大粒の涙をボロボロと溢し、なんども感謝の言葉を述べていた。
「じゃあ………今日の所は寝よう。フェルモさんも皆も疲れているでしょ。」
「はい。」
フェルモと同じタイミングで猫たちもニャアと鳴いて返事をした。
そうして翌朝、夜中に一度も起きなかったパウロとアダムの二人に起こされて少々寝不足のまま、皆で朝ごはんにした。
起き抜けにずっと寝ていた二人の知らない人間が増えていたことに驚いて少々パニックにもなったが、話をすると落ち着きを取り戻していつもの様に朝ごはんを強請ってきたのだから現金なものだ。
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