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第8章 愛と哀しみ
8.エルフという“精霊”
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魂の欠片―――。
「要するに……俺やパウロと似た様なものって事か?」
俺はそれがどういうことなのか理解ができないながらも、その言葉から自分が知っている限りの情報や知識を振り絞って出た見解をパウロに尋ねた。
「ちょっと違う……かにゃ。ほら、国境まで送っていったフェルモも話してたじゃない?」
そういえばあの時、国境へと送り届けるまで時間があった道中に雑談をする中で、フェルモは俺に様々な話を聞かせてくれたっけ………。
その中でもエルフ――特に懐古主義者の黄色エルフについてがやはりと言うべきか多かったのを思い出した。
サクラヴェール国民とっては他国民であるエルフの事は知らないことも多く、他国の情報はちょっとした小さな物事一つとっても貴重であり、軍事的にも保安上の問題からしても秘匿されることが多い。
今でこそオープンになっている部分も多いが、地球でも戦争がもっと当たり前に行われていた大昔では秘匿される部分が多かったんだろうからそこについては「そうなんだ」と理解している。
しかし特にこの世界では国ごとによって人種が大きく異なるが為に、肌や髪の色は違えども一種類の人間しか存在しない地球とは比べ物にならないぐらいに、『外国人』というものは謎の多い存在なんだそうだ。
それ故に長く奴隷としてエルフの国の中に軟禁されていたフェルモだからこそ知り得た情報も多く、俺の今後の旅――ひいては人生に役立ちそうなことをあれやこれやと教えてくれたのだった。
停戦中とはいえ、他国の者がオフィーリア国の中にまで入ってくることができるのは貿易商人などの限られた者だけである。
それも国境にある街限定であり……それ以外の場所で見かけたならば捕虜、またはフェルモの様に誘拐されて奴隷となった者なんだとか。
俺たちがオフィーリア国の中をこの後も長く旅する予定だという話を聞き、自分の恩人である俺たちが自分のように誘拐や投獄されたりしまいかと心配になり、エルフ以外の人種を見ても助けようとするなと忠告された。
俺たちは多くの猫たちを連れているので目立ち、しかも俺の見た目がまんまサクラヴェール国民の見た目ということを踏まえ、エルフの怖さを身をもって知っているフェルモだからこそ、人が良さそうに見えた俺にあまり不用意に関わりを持つなと警告を出したかったようだ。
そんな話の中でも一般的なサクラヴェール国民だと、エルフとは死ぬ時まで美しい姿を持つことができる、精霊が実体を得た姿だという程度の話しか知らない中で、永遠に等しい命を持って自然の中を廻る存在なのだというもっと詳しい話を知り得たと、フェルモが喜んでいたのを思い出した。
フェルモもそのことを知った当初は「何のことだか」と理解できなかったらしいが、俺もその言葉だけでは易々と理解ができず、その後の長い説明を聞いてようやく理解が追い付いたといったところ。
前にアージェからエルフとは短くても五百年以上、長い人だと千年を生きる人が普通なんだと聞いていたが、それは肉体の話であってその後も命は費えずに永遠の時を廻るのだそうで――。
輪廻転生みたいな話かと聞いてみたがどうやらそれとは別物らしく、エルフは“エルフ”となる前に真新しい小さな精霊の卵――“幼精”と呼ばれる存在となってこの世に生まれ出で、“幼精”が力をある程度得ると“エルフ”に、魂を磨き肉体を超えて精霊力が高まると肉体を棄てて“エルフ”から純粋な魔力の塊である“従精霊”へと変化していき、徐々に力が衰えた“従精霊”は最後にパチンと弾けて自然の中へと溶け込み、溶け込んだその力は何かしらの感情などの切っ掛けによって集約されていき、また力を再び得た時に“幼精”となって生まれ出でる―――ということなんだそうだ。
フェルモに「“従精霊”って何?」と聞くと、この世界の神様の子供である四大精霊から生まれた原初の精霊たちを主人とし、従者として仕える“精霊”よりも少し格が下の存在を指す言葉だという話で……。
だから人間とは死の概念が違い……というよりも、エルフには『死』そのものが無いとも言える。
流石にハーフエルフだと、人間に近しいのでその限りではないようだが………。
「つまりは――あの子は“従精霊”だということ? そういうことなのかな?」
俺も猫たちもウ~ンと頭を悩ませていると、さっきからシモーネの頭を撫でていたリリアがハッと何かに気付いたようで俺とパウロたちの話に加わってきた。
「魂の欠片がここにあるってことは、あの女の子はフェルモさんが言っていた大蕪によって死んでしまったってことでしょ? そういう場合でもエルフは“従精霊”になれるのかな? “従精霊”って肉体が無いって言っていたし………。」
「あのエルフは若そうだったし、たぶん……魂を磨くのに充分な期間が得られず、中途半端な時期に肉体を失って“従精霊”になり損ねた末の姿なんだろ。もしくは魔物にでも食われた残りカスが欠片となっても肉体を求め、あの猫にでも憑いてしまったか………。元々、どうやらあの猫は土くれ人形みたいだし、中身のない空っぽの体だから入り込み易かったんだろ。」
土くれ人形――正しくは『マッドゴーレム』という呼称があるのだとフェルモに聞いた。
最初見た時にはあの猫や大鷲がまさか人形だったとは気が付かなかったが、フェルモに聞いた話の中から後でそうだったのかと気が付いたのだった。
アンドレアの言う通り、魂のない空っぽの体として手近にあったから利用されたのかもしれないな……。
「要するに……俺やパウロと似た様なものって事か?」
俺はそれがどういうことなのか理解ができないながらも、その言葉から自分が知っている限りの情報や知識を振り絞って出た見解をパウロに尋ねた。
「ちょっと違う……かにゃ。ほら、国境まで送っていったフェルモも話してたじゃない?」
そういえばあの時、国境へと送り届けるまで時間があった道中に雑談をする中で、フェルモは俺に様々な話を聞かせてくれたっけ………。
その中でもエルフ――特に懐古主義者の黄色エルフについてがやはりと言うべきか多かったのを思い出した。
サクラヴェール国民とっては他国民であるエルフの事は知らないことも多く、他国の情報はちょっとした小さな物事一つとっても貴重であり、軍事的にも保安上の問題からしても秘匿されることが多い。
今でこそオープンになっている部分も多いが、地球でも戦争がもっと当たり前に行われていた大昔では秘匿される部分が多かったんだろうからそこについては「そうなんだ」と理解している。
しかし特にこの世界では国ごとによって人種が大きく異なるが為に、肌や髪の色は違えども一種類の人間しか存在しない地球とは比べ物にならないぐらいに、『外国人』というものは謎の多い存在なんだそうだ。
それ故に長く奴隷としてエルフの国の中に軟禁されていたフェルモだからこそ知り得た情報も多く、俺の今後の旅――ひいては人生に役立ちそうなことをあれやこれやと教えてくれたのだった。
停戦中とはいえ、他国の者がオフィーリア国の中にまで入ってくることができるのは貿易商人などの限られた者だけである。
それも国境にある街限定であり……それ以外の場所で見かけたならば捕虜、またはフェルモの様に誘拐されて奴隷となった者なんだとか。
俺たちがオフィーリア国の中をこの後も長く旅する予定だという話を聞き、自分の恩人である俺たちが自分のように誘拐や投獄されたりしまいかと心配になり、エルフ以外の人種を見ても助けようとするなと忠告された。
俺たちは多くの猫たちを連れているので目立ち、しかも俺の見た目がまんまサクラヴェール国民の見た目ということを踏まえ、エルフの怖さを身をもって知っているフェルモだからこそ、人が良さそうに見えた俺にあまり不用意に関わりを持つなと警告を出したかったようだ。
そんな話の中でも一般的なサクラヴェール国民だと、エルフとは死ぬ時まで美しい姿を持つことができる、精霊が実体を得た姿だという程度の話しか知らない中で、永遠に等しい命を持って自然の中を廻る存在なのだというもっと詳しい話を知り得たと、フェルモが喜んでいたのを思い出した。
フェルモもそのことを知った当初は「何のことだか」と理解できなかったらしいが、俺もその言葉だけでは易々と理解ができず、その後の長い説明を聞いてようやく理解が追い付いたといったところ。
前にアージェからエルフとは短くても五百年以上、長い人だと千年を生きる人が普通なんだと聞いていたが、それは肉体の話であってその後も命は費えずに永遠の時を廻るのだそうで――。
輪廻転生みたいな話かと聞いてみたがどうやらそれとは別物らしく、エルフは“エルフ”となる前に真新しい小さな精霊の卵――“幼精”と呼ばれる存在となってこの世に生まれ出で、“幼精”が力をある程度得ると“エルフ”に、魂を磨き肉体を超えて精霊力が高まると肉体を棄てて“エルフ”から純粋な魔力の塊である“従精霊”へと変化していき、徐々に力が衰えた“従精霊”は最後にパチンと弾けて自然の中へと溶け込み、溶け込んだその力は何かしらの感情などの切っ掛けによって集約されていき、また力を再び得た時に“幼精”となって生まれ出でる―――ということなんだそうだ。
フェルモに「“従精霊”って何?」と聞くと、この世界の神様の子供である四大精霊から生まれた原初の精霊たちを主人とし、従者として仕える“精霊”よりも少し格が下の存在を指す言葉だという話で……。
だから人間とは死の概念が違い……というよりも、エルフには『死』そのものが無いとも言える。
流石にハーフエルフだと、人間に近しいのでその限りではないようだが………。
「つまりは――あの子は“従精霊”だということ? そういうことなのかな?」
俺も猫たちもウ~ンと頭を悩ませていると、さっきからシモーネの頭を撫でていたリリアがハッと何かに気付いたようで俺とパウロたちの話に加わってきた。
「魂の欠片がここにあるってことは、あの女の子はフェルモさんが言っていた大蕪によって死んでしまったってことでしょ? そういう場合でもエルフは“従精霊”になれるのかな? “従精霊”って肉体が無いって言っていたし………。」
「あのエルフは若そうだったし、たぶん……魂を磨くのに充分な期間が得られず、中途半端な時期に肉体を失って“従精霊”になり損ねた末の姿なんだろ。もしくは魔物にでも食われた残りカスが欠片となっても肉体を求め、あの猫にでも憑いてしまったか………。元々、どうやらあの猫は土くれ人形みたいだし、中身のない空っぽの体だから入り込み易かったんだろ。」
土くれ人形――正しくは『マッドゴーレム』という呼称があるのだとフェルモに聞いた。
最初見た時にはあの猫や大鷲がまさか人形だったとは気が付かなかったが、フェルモに聞いた話の中から後でそうだったのかと気が付いたのだった。
アンドレアの言う通り、魂のない空っぽの体として手近にあったから利用されたのかもしれないな……。
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