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□□□
怒涛の夜会からひと月後。
ライラは変わらず研究室にいた。
ただひとつ違うのは、この場所があの寂れた離宮ではなく、辺境の地であるということ。
現在は婚約期間中ではあるけれど、衣食住の整ったこの場所で、本当に研究三昧の幸せな日々を送っている。
「ライラ、そっちの薬剤の状況はどう?」
どろどろとした液体をかき混ぜ、そこにリスマスの実を入れる。少しずつ微調整している所でライラは名を呼ばれた。
顔を上げれば、そこには眩しい金髪に眼鏡と白衣という出で立ちのローランド・フォン・エルサトレドがいる。
「リスマスの実だと、魔法薬に苦味が出てしまうので、もう少し色々と試したいところです」
「そうか。あと少しなのにね」
ライラの言葉に、フォンはふわりと微笑む。
以前からのフォンと、王子様然としたローランド。今のフォンは、ライラが知っている二人の人物の中間地点のような姿をしている。
再び「ライラ」と改めて名を呼ばれ、ライラは首を傾げながらフォンを見た。
「これを、君に」
「わあ……! 素敵な花ですね」
どこか緊張した様子のフォンが差し出したのは、赤、紫、桃色のカラフルなトゥリパの花束だ。トゥリパは円筒形のコロンとした愛らしい花で、五十本近くはある。
春の花のイメージが強いが、この季節に咲いているということはあの特別な温室で管理されたものだろう。貴重だ。
「ありがとうございます、フォン」
その花束を受け取ったライラは、満面の笑みを浮かべた。花は好きだ。見た目も香りも楽しめるし、何より花びらには薬効もある。
(そうです。この前は見落としていましたが、トゥリパの花びらの薬効は――!)
「ライラ。私はこれから先も君と共にありたいと思っている。婚約という形は既に整ってしまっているが……改めて、この先も一緒にいてくれないか?」
フォンが顔を赤らめつつ思いを告げる最中、ライラは悪癖が発動していた。
考え事に夢中になりすぎていたのだ。
「フォンっ!」
左手で花束を抱えたライラは、興奮気味にもう一方の手でフォンの手を取った。そしてきらきらとした表情で彼を見上げる。
「ありがとうございます! 紫のトゥリパの花びらが、既薬と相性がいいかもしれません。新しい<髪の色を変える魔法薬>と育毛剤をこれからも一緒に作りあげましょう!」
「あ、ああ……うん」
「?」
混じりっけのない純粋な瞳で見上げられ、ローランドは歯切れの悪い返事をした。
これは絶対に伝わっていない。そう確信すらできる。
(この先もフォンと共に研究が出来るなんて、とても嬉しいです。……この動悸はなんでしょう。心臓の病気でしょうか。早速新薬を――)
生憎、それが恋だとか愛だとか、教えてくれる人はこれまでライラの周りにはいなかったのだ。
ずーっとずーっと前からローランドの気持ちを知っていたリカードだけが、研究室の片隅で存在を忘れられつつ、噛み合わないふたりの様子を見て密かに笑いを堪えていた。
そして、ライラに早急に情操教育を施さなければ、と。
笑いを堪えすぎて涙が滲む顔でかたく決意したという。
□□□
――その後、無事に<髪の色を変える魔法薬・改>と〈育毛剤・マックス〉は完成した。
皆で喜びを分かちあう中、フォンは胸を撫で下ろした。
愛する人に気付かれない愛を注ぎ続けている若き辺境伯の髪は、こうして守られたのだった。
おわり
*********
お読みいただきありがとうございます。
突然降ってきたおはなしだったのですが、びゅーんと駆け抜けました(^^)
髪の毛はたいせつ……!
怒涛の夜会からひと月後。
ライラは変わらず研究室にいた。
ただひとつ違うのは、この場所があの寂れた離宮ではなく、辺境の地であるということ。
現在は婚約期間中ではあるけれど、衣食住の整ったこの場所で、本当に研究三昧の幸せな日々を送っている。
「ライラ、そっちの薬剤の状況はどう?」
どろどろとした液体をかき混ぜ、そこにリスマスの実を入れる。少しずつ微調整している所でライラは名を呼ばれた。
顔を上げれば、そこには眩しい金髪に眼鏡と白衣という出で立ちのローランド・フォン・エルサトレドがいる。
「リスマスの実だと、魔法薬に苦味が出てしまうので、もう少し色々と試したいところです」
「そうか。あと少しなのにね」
ライラの言葉に、フォンはふわりと微笑む。
以前からのフォンと、王子様然としたローランド。今のフォンは、ライラが知っている二人の人物の中間地点のような姿をしている。
再び「ライラ」と改めて名を呼ばれ、ライラは首を傾げながらフォンを見た。
「これを、君に」
「わあ……! 素敵な花ですね」
どこか緊張した様子のフォンが差し出したのは、赤、紫、桃色のカラフルなトゥリパの花束だ。トゥリパは円筒形のコロンとした愛らしい花で、五十本近くはある。
春の花のイメージが強いが、この季節に咲いているということはあの特別な温室で管理されたものだろう。貴重だ。
「ありがとうございます、フォン」
その花束を受け取ったライラは、満面の笑みを浮かべた。花は好きだ。見た目も香りも楽しめるし、何より花びらには薬効もある。
(そうです。この前は見落としていましたが、トゥリパの花びらの薬効は――!)
「ライラ。私はこれから先も君と共にありたいと思っている。婚約という形は既に整ってしまっているが……改めて、この先も一緒にいてくれないか?」
フォンが顔を赤らめつつ思いを告げる最中、ライラは悪癖が発動していた。
考え事に夢中になりすぎていたのだ。
「フォンっ!」
左手で花束を抱えたライラは、興奮気味にもう一方の手でフォンの手を取った。そしてきらきらとした表情で彼を見上げる。
「ありがとうございます! 紫のトゥリパの花びらが、既薬と相性がいいかもしれません。新しい<髪の色を変える魔法薬>と育毛剤をこれからも一緒に作りあげましょう!」
「あ、ああ……うん」
「?」
混じりっけのない純粋な瞳で見上げられ、ローランドは歯切れの悪い返事をした。
これは絶対に伝わっていない。そう確信すらできる。
(この先もフォンと共に研究が出来るなんて、とても嬉しいです。……この動悸はなんでしょう。心臓の病気でしょうか。早速新薬を――)
生憎、それが恋だとか愛だとか、教えてくれる人はこれまでライラの周りにはいなかったのだ。
ずーっとずーっと前からローランドの気持ちを知っていたリカードだけが、研究室の片隅で存在を忘れられつつ、噛み合わないふたりの様子を見て密かに笑いを堪えていた。
そして、ライラに早急に情操教育を施さなければ、と。
笑いを堪えすぎて涙が滲む顔でかたく決意したという。
□□□
――その後、無事に<髪の色を変える魔法薬・改>と〈育毛剤・マックス〉は完成した。
皆で喜びを分かちあう中、フォンは胸を撫で下ろした。
愛する人に気付かれない愛を注ぎ続けている若き辺境伯の髪は、こうして守られたのだった。
おわり
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お読みいただきありがとうございます。
突然降ってきたおはなしだったのですが、びゅーんと駆け抜けました(^^)
髪の毛はたいせつ……!
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面白く一気読み‼️ライラちゃんの鈍さにフォン君は泣いても良いと思う(゜-゜)(。_。)😢楽しいお話しをあります☺️。
お読みいただきありがとうございます。スーパー鈍感なヒロインですが、フォンくんはそんな所も愛おしく思っていることでしょう⸜( ◜࿁◝ )⸝︎︎きっと…
感想ありがとうございます。
楽しく書けましたー!!!王子の髪を守りました⸜( ◜࿁◝ )⸝︎︎
完結お疲れ様でした(*´∀`)ノ
ざまぁもスッキリと片付いて、後の甘〜い展開はライラの情操教育にかかってますね(笑)
今回も楽しくて面白い物語をありがとうございました(*´▽`*)
感想ありがとうございます。おいかけて下さって、とても励みになりましたー!!!!
薄毛ざまあ……なんだこれは……🤣🤣
最後までお付き合いくださり感謝です!