魔法少女と悪の下っ端おじさん

おてんと

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第22話 魔法少女と覚醒

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 「がはッ」

 「ちょっとちょっと~。偉そうなこと言っといて、そのザマは何(笑)」

 平和な町のとある公園にて、とある怪人は地面に蹲っていた。その怪人を上から踏みつける者は、嗜虐を思う存分振るっている。

 前者は怪人カマキリ女帝。後者は怪人肩パッド野郎。

 両者の力量差は圧倒的であり、また絶望であった。

 「カマキリ......じょて......さん」

 近くには、魔法少女<マジカラーズ>と戦隊ヒーロー<チホーレンジャー>の面々が無様にも倒れ伏していた。

 もはや決着はついた。完膚なきまでの敗北が、ヒーロー陣営に突きつけられていたのである。

 「ほら! ほらほらほら! さっきまでの威勢はどうしたの?! なぁ?!」

 「うぐッ」

 ろくに抵抗もできず、防ぐこともできないカマキリ女帝は、肩パッド野郎の指先から放たれる漆黒の雷閃に貫かれ、その激痛に顔を歪めた。

 いつぞやのスザクファイヤーを思わせる状況である。とどめを刺すことなく、ただただ相手を痛めつける。怪人肩パッド野郎は、如何に急所を外して、苦痛を与え続けられるかを愉しんでいた。

 しかし、

 「ん? てか、お前、なんで腹ばっか防いでんの」

 「っ?!」

 怪人肩パッドマンは気づいてしまった。

 そう、怪人カマキリ女帝は地面に蹲りながらも、自身の腹部だけは両腕で守りきっていた。敵に悟られまいと隠していたが、とうとう気づかれてしまったのだ。

 肩パッド野郎は嗜虐に満ちた笑みを浮かべる。

 「はは~ん。さては腹が弱点かぁ?」

 「くッ」

 「いや? もしかして良い年しているから身籠っているとか?」

 「?!」

 その言葉に、怪人カマキリ女帝は青ざめた。途端、女の身体が恐怖から震え始める。そんな様を見て、肩パッド野郎は指先の方向を、女帝の腹部に向けた。

 「ビンゴ(笑)」

 「ぐぅ」

 漆黒の雷閃が腹部を押さえているカマキリ女帝の両腕を襲った。痛めつけるために出力をできるだけ押さえているが、その雷閃から打ち込まれ続ける激痛に、怪人カマキリ女帝は絶叫した。

 「ああぁぁぁあああぁぁああ!!」

 「あははは! マジか! 身籠ってる身で戦場に立つなよ! 死ねッ! 死ね死ね死ね!!」

 公園の広間にて、女帝の悲痛な叫び声が響く。

 その声に、敵でありがながらも黙っていられないマジカルピンクが、地面に這いつくばりつつ吠える。

 「止めて......お腹の子には......罪は無いでしょ!!!」

 「ああ?」

 一頻り攻め終えた肩パッド野郎は、今度は近くで倒れているマジカルピンクを見やった。

 しかしマジカルピンクの視界はそんな敵よりも、女帝の身を映していた。腹部を守ろうと抑えていた彼女の両腕はズタズタで、もはや原形を止めていない。その悲惨な光景にマジカルピンクは絶句した。

 「酷い......」

 「ガキは気楽でいいよな。これが戦いだ――よッ!」

 「ぐはッ」

 「やめて!!」

 尚も執拗に女帝の腹部を狙う肩パッド野郎に、マジカルピンクは声を張り上げた。

 そんな中、女帝が弱々しくも口を開いた。

 「もう......やめて......おなか......こには......せん、ぱいの子には......つみはないの......」

 「は?」

 「「「「「「「え゛」」」」」」」

 その言葉を聞いて、マジカルピンク......いや、ヒーロー陣営全員が驚愕した。

 女帝は今、なんと言っただろうか。

 お腹の子、先輩の子―――説教タイツの子、と言っただろうか。

 驚愕の声が次々に漏れ始める。

 「ま、マジか......」

 「あ、あの中年タイツさん、まさか女帝さんとそういう関係だったなんて......」

 「初耳よ......」

 「し、知らずに、今まで攻撃してしまった......」

 「わ、私も......」

 「私たちはなんて取り返しのつかないことを......」

 地面に倒れ伏しながらも、過去の自分たちの行いを後悔し始める一同。まさか善と悪の戦いに、身籠った人妻が居るとは思わなんだ。

 しかしそんな事情はどうでもいいと言わんばかりに、指先に漆黒の光を収束させた。

 どうやら攻撃をやめるつもりは無いらしい。

 「知らねぇーよ。親子共々、あの世で後悔しな」

 「ごめん......なさい......せん、ぱい」

 今、止めを刺さんとする光線が、カマキリ女帝を貫こうとした――その時だ。

 「っ?!」

 突如、肩パッド野郎が真横へ吹っ飛んだ。

 まるで大型トラックと衝突したかのような吹っ飛びようであったが、それを成したのはトラックではない―――魔法少女マジカルピンクであった。

 カマキリ女帝の前に仁王立ちし、魔法のステッキを力強く握りしめている。

 少女はゆらゆらと尋常ならざるオーラを全身から放ちながら、肩パッド野郎を睨んだ。

 「やめてって......言ってるでしょ!!」

 もはやカマキリ女帝の腹に誰の子が居ようと知らない。ただただ罪無き者を守ろうと、少女は立ち上がっていたのである。

 その瞳は唐紅に燃え盛り、ある種の業火を孕んでいるように見える。

 「いってーな、おい」

 しかし肩パッド野郎は吹っ飛ばされても、大したダメージを負っていない。既の所で肩パッドで防いだのだ。

 ただその肩パッドは少しだけ凹んでいたことに、肩パッド野郎は気づく。

 (俺の肩パッドが......傷ついただと)

 それは絶対にあってはならないこと。不変のものが可変のものへと変わりつつある現状に、肩パッド野郎は油断の態度を消し去った。

 そんな肩パッド野郎の前に立つ者が現れる。

 「俺がやろう」

 怪人ピンクガネーシャだ。

 その闘志は、眼前の少女にのみ向けられており、集中力が極限にまで高められていた。

 それでも肩パッド野郎は黙っていられなかった。

 「おい、俺が相手してたんだぞ」

 「はッ。吹っ飛ばされただけだろう。お前の肩パッドが凹んでいるのに気づいていないとでも?」

 「......ちッ」

 肩パッド野郎は忌々し気に舌打ちをして、戦いの場をピンクガネーシャに譲った。

 ピンクガネーシャは構えを取った。

 「魔法少女の覚醒......その瞬間に立ち会えたこと誇りに思うぞ」

 「この町から......出てってくださいッ」

 今、覚醒した魔法少女と強敵ピンクガネーシャがぶつかり合おうとしていたのであった。

 続く。
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