魔法少女と悪の下っ端おじさん

おてんと

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第26話 悪の下っ端おじさんと戦闘

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 「見りゃあわかんだろ。イッーイッー言ってる下っ端戦闘員だよ――悪の組織の、な?」

 最初はポツポツと降り注ぐ雨であったが、それは時間と共に勢いを増していき、土砂降りと化していた。

 世に生きる多くの者がどこかしら屋内に非難する中、この町の公園には傘を差さずに立つ者が居た。


 一人は悪の組織<ギャンギース>所属の者、怪人肩パッドマン。

 一人は同じく、<ギャンギース>所属の者、怪人ピンクガネーシャ。


 そして一人は――悪の組織<ジョーカーズ>所属の下っ端戦闘員、全身タイツ野郎。


 またこの公園の付近には四天王の一人である怪人ブルードラゴンが居るが、それを知る者はこの三人の中に居なかった。

 気配を消すのが得意なブルードラゴンである。気配を消して、目立たぬよう全身タイツ野郎をウォッチしていた。


 「下っ端戦闘員だぁ? 信じるわけないだろ?!」

 「いや待て、肩パッドマン。奴のあの地味で冴えない格好......どう見ても下っ端戦闘員のそれだ」


 「っ?! で、でもお前の腕をへし折る下っ端戦闘員なんて......」

 「......どちらにせよ、我々は奴に関する情報は持っていない」


 そう言いつつ、ピンクガネーシャは折られた腕を、自前の自己治癒能力をもって完治させた。

 それを見て、全身タイツ野郎は関心する。


 「おお~、身体が丈夫な上に、回復力もあるとかすげぇな」

 「問おう、殿の怪位は?」


 肩パッド野郎は、相棒が眼前の男を“貴殿”と呼んだことに、若干の焦燥感を覚えていた。

 (こいつ、下っ端戦闘員とか言いながら警戒しているな。......俺もだがよ)


 「“かい~”?」

 「惚ける気か? 悪の組織に属する怪人のランキング制度のことだ。下っ端だろうとあるだろう」

 「......あるけど、教えるわけないだろ? 秘密にしてんだぜ?」


 ブルードラゴンは暴露したが。


 「じゃあ、聞くことはないなぁ!!」

 「っ?! ま、待て!!」

 肩パッド野郎が爆ぜるようにして大地を駆ける。

 瞬く間にタイツ野郎との距離を縮め、固く握りしめた拳を真っ白な仮面に叩きつけようとした。


 が、


 「おうおう。勢いあるね~」

 「っ?!」


 カクン。全身タイツ野郎は首をやや横にずらし、最小限の動きだけで肩パッド野郎の拳を避けた。


 しかし肩パッド野郎は退かない。

 回し蹴り。次にその遠心力をもって踵落とし。次に右フック、ストレートと見せかけての膝蹴り。


 それら全ての猛攻を、

 「ほい、はッ、ふん、やー」

 「っ?!」


 タイツ野郎は全て捌いていた。


 「これならどうだ!!」


 肩パッド野郎は両の拳に黒い雷を纏わせる。


 「<スキル:ブラックサンダー>!!」


 「それチョコレート菓子だろ」


 「へぶしゃ?!」


 タイツ野郎からまるで薪割りでも思わせるかのようなチョップが、肩パッド野郎の肩に叩きつけられた。

 肩パッド野郎の強靭な肩パッドがその衝撃に耐え切れず、形を歪ませる。

 それどころか、今までに幾度となく魔法少女と怪人カマキリ女帝を苦しめてきた<ブラックサンダー>は不発に終わった。


 「くッ。だったら!!」


 肩パッド野郎は意地を見せて、最後の攻撃を仕掛けた。

 「肩パッドバサミぃ!!」


 肩パッドバサミ。

 怪人のスキルですらないが、その破壊力は推して知るべし。強靭な肩パッドが繰り出す一撃は、挟んだものを両断する勢いがあった。


 デメリットは射程圏内が極端に狭いこと。あと技名がとてつもなくダサい。


 そんな肩パッドバサミは全身タイツ野郎を――


 「うお、それ動くのか」

 「ふぁ?!」


 両断することはなかった。


 パシッと両手で掴まれて防がれる始末である。

 そんでもって、


 「これ邪魔じゃね? 今、令和だよ?」


 ブチッ。

 まるで蝶の羽を毟り取るかのように、怪人肩パッドマンから肩パッドが剥ぎ取った。


 途端、肩パッド野郎は絶叫する。


 「あぁぁぁぁぁああ!! 俺の、俺の肩パッドぉぉぉおおおおお!!!!」


 「え゛」


 肩パッドを取っただけなのに、この痛がり様。演技かと思いきや、真実を伝える者が前に出てきた。

 ピンクガネーシャである。


 「な、なんてことをする!! 悪魔かお前は!!」

 「え、いや、肩パッド取っただけですが......。悪魔じゃないけど、悪の組織だよ?」

 「言ってる場合か! 永久歯を二本も引っこ抜いたようなものだぞ?!」


 実は肩パッド野郎の肩パッドにはそれなりに神経が詰まっていた。それを乱暴に引っこ抜くとか、悪魔の所業である。もはや拷問でしかない。


 「ま、マジか......。ごめん。今、ボンド持ってくるから」

 「くっ付くかぁ!!」


 「ま、また生えてくるって」

 「永久歯みたいなものだと言ってるだろう!!」

 「ごめんって......」


 平謝りするしかないタイツ野郎。

 斯くして、<ギャンギース>の一人、怪人肩パッドマンは戦闘不能になった。


 これは悪と悪の戦いを記す物語。その最中に永久歯を引っこ抜かれることもあるが、壮絶な戦いを記す物語であることを主張したい。

 続く。
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