魔法少女と悪の下っ端おじさん

おてんと

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第28話 魔法少女と笑顔

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 「説教だ、そこ座れ」


 「「「はーい!」」」


 「な、なんで嬉しそうなんだよ、気持ち悪い......」


 そんな素直な感想が、全身タイツ野郎の口から漏れる。


 平日の昼下がり。

 本日もこの平和な町のとある公園にて、善と悪の戦いが繰り広げられていたが、今は全身タイツ野郎による説教タイム。

 魔法少女たちは何が嬉しいのか、ニコニコとしている。

 なんだかこの説教タイムが久しぶりなようで。生活の一部なようで。そんな思いに駆られる少女たちであった。

 魔法少女たちが横一列に正座する。ニコニコ、ニコニコと気色の悪い笑みを浮かべていた。

 「ど、どうしたんすかね? あの子たち」

 「し、知らないんダナ」

 ちなみに本日の怪人サイドのメンツは怪人ブタ男爵、下っ端戦闘員の二名だ。後者のうち一名は、魔法少女たちの前で説教を始めようとしていた。

 こうなると小一時間は説教タイムが続く。それを知っている残りの怪人たちは、近くの空いているベンチへ腰掛けた。

 慣れたもんである。

 説教タイツ、説教ショータイムを開いた。

 まずはマジカルブルーに一つ、物申す。


 「さっきのはなんだ。ブタ男爵に向かって『豚野郎ッ』って。駄目だろう、魔法少女がそういうの言っちゃ」

 「はい! すみません!」

 「......。」


 続いて、マジカルイエロー。


 「お前もフェイント使うな。好んでフェイントばっかするんじゃないよ。魔法少女の戦い方として、フェイントはせめて一回にしとけって。色々と配慮にかけるよ」

 「さーせん!」

 「......。」


 最後にマジカルピンク。


 「最後にお前。名乗り口上の後に、『トンカツにしてあげる』はやめろ。豚肉食べられなくなるだろ」

 「ごめんなさい!」

 「......。」


 タイツ野郎、魔法少女たちの元気の良い返事を受けて困る。

 戦闘開始前から明るい表情を見せてきたもんだから、こいつらバトルジャンキーか、と錯覚してしまったタイツ野郎だ。


 居心地の悪さに耐えかねたタイツ野郎は、訳を問い質すことにした。


 「......なに?」

 「「「?」」」


 「いや、だからなんだよ。さっきからニヤけやがって」

 「だってなんだか今日は気分がいいもの」


 「ね。久しぶりに日常だな~って感じがして」

 「あ、勘違いしないでよ? 別に説教が好きになったわけじゃないから」

 「説教が好きになられて堪るか......」

 呆れてしまうタイツ野郎。

 しかしそんな中年を他所に、マジカルブルーが何か思い出したかのように口を開いた。

 「あとほら、アレやってもいいわよ?」

 「そうだった。おじさん、今日は痛くしても大丈夫です」

 「だからって、思いっきりするのはやめてね?」

 「おい、やめろ。いかがわしい内容に聞こえちゃうだろ。俺はただでさえ変質者みたいな格好してんだから」

 なんか魔法少女たちが挙って頭を差し出してきているので、タイツ野郎はとりあえずゲンコツを一発――お見舞いしなかった。


 代わりに三人の頭を優しく撫でる。


 「「「っ?!」」」


 自身の頭を撫でられたことに気付いた三人が、正座を崩して勢いよく仰け反る。


 三人の顔は真っ赤っ赤だ。


 「うひゃう?!」

 「にゃ、なに?!」

 「なんで頭撫でた?!」

 「え? あ、なに、違うの? 撫でてほしいのかと思った」


 中年が女子中学生の頭を撫でるなど事案以外のなにものでも無い。

 しかし中年タイツにも理由はあった。

 先の一件、<ギャンギース>から来た怪人二人組を相手に頑張ったことを褒めるべきだと思ったからだ。

 結果は魔法少女たちが惨敗。

 それでも格上相手に抗ったことを、中年タイツは素直に褒めたかった。それなのに意外な反応をされては、タイツ野郎の動悸が速くなるというもの。

 俺、通報されないよな? な? などと、不安に駆られた。


 「そこはゲンコツでしょ?!」

 「いつものドカッとするやつです!」

 「そうだよ! なんで撫でるの?!」

 「え、ええー」


 もう訳わかんない。なんで殴られたいのか、年頃の少女の気持ちを全く理解できなかった中年であった。

 タイツ野郎は訴えられても困るので、とりあえず事情を話した。

 「い、いや、お前ら、この前の件で頑張ったろ。褒めようかなって」

 「あ、ああ~」

 「な、なるほど」

 「だからって急に撫でるのは......」

 「「「「......。」」」」


 場に重たい沈黙が流れる。

 この沈黙を先に破ったのはタイツ野郎だ。


 「それで、もう身体の方は大丈夫なのか?」

 「うん。ばっちり」

 「今日は胃痛も無かったよ」

 「ね。もう胃痛は再発しないでほしいかな」

 「い、胃痛?」


 タイツ野郎は聞き返してしまう。

 そう、魔法少女たちの最近の悩みは胃痛だ。なんせ悪の組織と戦う度に説教タイムが入るんだから、胃痛持ちになるのも無理はない。


 が、今日は久しぶりに、<ギャンギース>の一件で世話になったタイツ野郎と話せるからか、魔法少女たちは朝から快調だった。

 ここだけの話、マジカルピンクに至っては、タイツ野郎から悪事を働くアポが入った時にガッツポーズをしてしまったくらいだ

 なので魔法少女たちは説教が終わり次第、タイツ野郎に言おうと思っていたことを口にする。

 三人は中年の前に立ち、まるで太陽のような笑みを浮かべて言った。


 「あの時は助けてくれてありがとう! 見直したよ!」


 「伊達に普段から偉そうにしてないわね! ありがと!」


 「おじさんって本当に強いんですね! これからもよろしくお願いします!」


 「......。」


 善意百パーセントの心からのお礼。タイツ野郎はそんな魔法少女たちに苦笑した。


 この物語は善と悪の壮絶なる戦いを描く物語。ただ今日は少しだけ長閑な雰囲気に包まれるのであった。

 続く。
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